長江渇水、水運に深刻な影響 専門家「三峡ダム貯水で悪化」

【大紀元日本5月19日】三峡ダム建設時に期待された洪水抑制や水運改善などの効果が次々と裏切られているようだ。昨年の長江流域の記録的な洪水に続き、今年早くも干ばつの影響で、川幅が狭まり水位が下がり、水運に深刻な影響が出ている。専門家らは、干ばつの影響を拡大させたのは、まさに水運改善の効果が期待された三峡ダムであり、ダムの貯水を保障するために、下流の水量が大幅に減少したと指摘する。

海からの乗り入れも見合わせ

12日付の英テレグラフ紙によると、5月始め、長江中部流域にある大都市・武漢市付近で2隻の船舶が座礁した。長江の水運を管理する長江航道局に務める専門家・張氏は本紙取材に対し、座礁した船の積載量は、水位が低下した航路を安全に通過できる量を超過しており、「管理局は航路の実際状況に基づいて通行証を発行しないと、今後も座礁する船が増える」と指摘した。武漢から225キロメートル上流は現在、大型船舶の航行が禁止されている。

さらに、毎年5~11月に開通される、海から上海港を通って直接長江に乗り入れる航路が、今年は水量不足で開通を見合わせている。「いつ開通となるか未定だ」という。

テレグラフ紙は長江管理局の幹部・呉赫平氏の話として、今年の状況は「過去半世紀で初めて見る」ほどの深刻さで、「2003年に三峡ダムが運行開始以来、長江が記録したもっとも低い水位だ」と伝えた。さらに、長江の多くの区域では水位が低下しているだけでなく、川幅も狭くなり、いくつかの主要区域では昨年同期より50メートルも減少している。今後は降水が見込まれるが、呉氏は「それにより大幅に改善されることはない」と見ている。

専門家「三峡ダム貯水で悪化」

長江流域の四川、湖北、湖南、江西などの省では今年に入ってからまとまった雨が降らず、長江の流量は例年と比べ、最大70%減少した。下流にある大通観測所の観測データでは、流量が11年ぶりに最低値を更新した。

一方、流量の低下は少雨だけによるものではないと専門家は見ている。航道局の張氏は、「例年この時期は水量が充足しており、6月あたりからは洪水の来襲を警戒しなければならないほどだが、今年の長江は涸れている」と今年の異常事態に言及したうえで、「三峡ダム貯水区より上流の区域での降水が少ないにもかかわらず、電気供給を保障するため、貯水水位を保たなければならない。そのため、下流への放水が制限され、中下流の渇水が深刻になる」と分析した。「長江の中下流はかつてのように上流の雪解けや天候に左右される状況ではなくなっている。三峡ダムの影響で、上流に水があっても三峡にせき止められる。中下流の流量を左右するのは今や三峡になっている」

17日の三峡ダムの水位は155.32メートル。発電のために上流のダムが貯水している限り、水位の低下も川幅の減少も改善が望めないと張氏は語った。「これは長江の第一線にいる人ならみな知っている事実だ」

長江水利委員会の王井泉所長も中国英字紙・チャイナデイリーに、三峡ダムの建設が下流へ流れる水をせき止めたため、長江の水不足を深刻化させたと述べている。また、テレグラフ紙の報道では、ダム建設が長江流域の地下水位を変化させたことも状況を深刻化させていると報じた。

今後の影響

長江の貨物輸送量は昨年15億トンと、内陸河川としては6年連続で世界一を達成した。「世界でもっとも繁忙な水上航路」と誇る長江は同時に、北京などの北方地域の水不足解消の大任も背負っている。現在進行中の「南水北調」プロジェクトは、通常は水量豊かな長江流域から、水不足の華北に水路を通す大工事であるが、長江自身の水不足でこれらのつとめにも影を落としている。今後、中国全土で水不足に陥る危険性が懸念されている。

(記者・方暁/翻訳編集・張凛音)
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