北朝鮮の食糧難 疑われる信憑性 中国には「政治カード」か=米専門家

【大紀元日本5月14日】国連の世界食糧計画(WFP)が3月末に、各国に北朝鮮への食糧支援を呼びかけて以来、米国内で議論が繰り広げられた。11日、米保守系シンクタンクのヘリテージ財団がワシントンD.C.で、北朝鮮への食糧支援の必要性をめぐる討論会を開き、北朝鮮の食糧難情報の信憑性や中国の役割について議論を行った。12日、米VOAが伝えた。

専門家は、北朝鮮は対外的に情報を閉鎖しているため、食糧難の実情は伝わっていないと指摘。また、北朝鮮の盟友の中国は、北朝鮮の食糧問題を政治カードとして利用しているだけで、本腰を入れて助けようとしていない姿勢も討論会で批判の的となった。

食糧難の信憑性

新アメリカ安全保障センター(CNAS)のパトリック・クローニン上級研究員は、韓国からの情報として、北朝鮮の食糧難はまだ深刻な危機に発展するような状況ではないと伝えた。また、食糧難が起きた場合に想定される中国への難民流入について、中国は「心配していない」という状況から、食糧難情報の信憑性が疑われると氏は分析する。「中国にとって北朝鮮の食糧を支援することはお安いご用だ。その気があればの話だが。彼らが南太平洋地区や東南アジア、南アジア、アフリカでの巨額の投資を見ればその事実が分かる。中国は、北朝鮮からの難民流入を本気で心配していたら、とっくに手を打っているはず」

さらに、先月21日に中国国務院報道弁公室が発表した『中国の対外援助』白書では、中国の北朝鮮に対する援助は主に工業・農業といった生産領域やインフラ建設に集中しており、農作業条件の改善に力を貸しているとしているが、北朝鮮に対する食糧支援については言及していないという。

中国の狙いは

会議参加者の1人、ヘリテージ財団のアジア研究センターに務めるブルース・クリンガー上級研究員は、北朝鮮が核実験とミサイル発射実験を繰り返していることは、国連安保理第1718号と1874号決議を無視した行為であり、容認できないと批判した。北朝鮮は、それ以外にも、米国や日本、韓国に対して挑発行為を重ねてきた。

そんな北朝鮮への食糧支援をアメリカが拒否すると、中国は「人道的理由」を持ち出して米国を非難するだろう、とクリンガー氏は分析する。閉幕したばかりの第3回「米中戦略・経済対話」で米国は中国の人権問題を厳しく非難したばかりで、中国にとっては北朝鮮への支援問題は手中にある対米批判の「仕返し」カードの1つとされる。

クリンガー氏は、そのような非難に対し、アメリカはこう答えるべきだとアドバイスする。「あなたたち(中国)の盟友のしていることが、われわれに助ける意欲をなくさせたのだ」。さらにクリンガー氏は、北京はまるで北朝鮮の弁護人のように振る舞っていると批判する。北朝鮮の度重なる挑発行為をかばう一方、正義の代弁者であるかのように北朝鮮の食糧問題の解決を国際社会に求めている。「国際社会の支援を鈍らせたのは経済面における考慮ではなく、北朝鮮自身の行為だ」と指摘するクリンガー氏は、北朝鮮の金持ち盟友である中国こそ、いま、北朝鮮の食糧支援を行うべきだ、と主張した。

中国が絶えず北朝鮮の食糧問題を持ち出す狙いについて、CNASのクローニン研究員は、中国政府はアメリカの政策を操りたいと考えているからだと指摘する。「六カ国協議の席では、中国は北朝鮮の体制安定をもっとも重要視しており、核兵器の放棄をもっとも瑣末なこととして扱ってきた。米政府にも同調してほしいようだが、これは米国の利害とは一致しない」と指摘し、北朝鮮の食糧問題において、アメリカは中国政府のシナリオに合わせてはならないと示唆した。

(翻訳編集・張凛音)
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