ビンラディン死亡、中国でも強い反響 米批判の政府系と大喜びの民衆
【大紀元日本5月3日】オバマ米大統領が発表したオサマ・ビンラディン容疑者殺害のニュースは中国人の間でも大きな関心を呼んでいる。国営新華社は2日、速報を流した後、夕方に「ビンラディンが死んでも、米国は反テロ戦争の悪循環から抜け出すことは難しい」とする論評を配信した。また、中国中央テレビの関係者から、ビンラディンを「アラブ世界で史上もっとも偉大な民族英雄」と高く評価する発言も見られた。
一方、政府の論調とは逆に、中国のネットユーザーの間では喜びの声が溢れ、「カダフィ一族は終わった。今ビンラディンも死んだ。その次は誰?7月1日(中国共産党政権設立記念日)に期待する」など、中国で共産党による独裁体制の崩壊を期待する声が相次いでいる。
政府系、米国批判の論調
ビンラディン容疑者殺害のニュースを速報などで流す一方、国営新華社は2日の論評で、「10年の反テロ戦争はテロを逆に活発化させた。テロという怪獣に栄養を与えたのはまさに、戦争政策と覇権主義が撒いた憎しみである」と指摘し、米国の対テロ作戦を暗に批判した。
また、中国外務省の姜瑜報道官は、ビンラディン容疑者の殺害は「国際テロを撲滅する上で重要な出来事で、積極的な進展だ」と評価する一方、反テロは「表本兼治(現象と本源を共に取り除く)」しなければならず、「テロ発生の土壌をなくす努力をすべきだ」とアメリカに注文を付けた。
国営メディアの報道以外に、中国中央テレビ(CCTV)の国防軍事チャンネルで総プロデューサーを務める張欣氏のミニブログでの発言が多くの注目を集めた。「億万長者としてのビンラディンは裕福な生活を捨て、強権政治に立ち向かい、野人の生活も惜しまなかった。彼は何のためにそうしたのか?彼こそアラブ世界で史上もっとも偉大な民族英雄なのだ」「ビンラディンが生きているのか死んでいるのかはもはや大事ではない。彼は一種の精神となり、一種の反米の思想体系になっているからだ」
ネットユーザーから喜びの声
CCTVの中枢にいる張欣氏のこういった発言にネット上が騒然となり、「ビンラディンの死に驚かなかったけど、彼の発言には驚いた」「彼こそCCTVの代弁者だ。カダフィーを声援する連日の報道を考えると、張欣プロデューサーの発言はCCTVの一貫した思考回路と教養に適合している」と批判の声が上がっている。
ポータルサイト・網易では、ビンラディン死亡を報じたニュースのコメント欄に数時間で読者から3千近くの発言が寄せられ、発言を支持したりフォローしたりする読者も含めて、2万人近くのフォローが寄せられている。中には、反米の感情的な発言も多数見られたが、「中国国民は祝賀する。次は誰でしょう」「今日は中国の糞青(左翼的な民族主義者)が悲しむ日だ。10年前の9・11が起きた日、あなたたちは大変興奮したが、今日は泣いているでしょう。ちょっと待ってよ。悪党(中国共産党を指す)が崩壊する日に泣いても遅くないよ」など、中国共産党政権の崩壊に期待を示す発言が多く見られた。
評論家:今後の米外交の中心は中共抑制
政治評論家の曹長青氏は、ビンラディンや先日のカダフィーの息子の死に、中国当局は実は危惧の念を抱いていると指摘した。その理由は、アメリカの対テロ作戦が一段落することで、今後の米国の外交の中心が中国の軍事拡張を阻止することに移るためだと分析した。
「近年、アメリカはすでに、軍事の重心をヨーロッパからアジアに移しているが、テロとの戦いのため、この『移行』は遅れざるをえなかった」と曹氏はコメント。ビンラディンの死で、アメリカにアジアでの軍力配置に力を入れる「余裕」ができ、中国の勢力拡張をさらに有効にけん制することができるとの見解を示した。
現在フランス在住の新華社元ベテラン記者・呉葆璋氏は本紙の取材に対し、「中国にとっていま、外在的にはアラブの春がその足音を響かせ、内在的には各種の社会問題がすでに国民の我慢の限界を超えている状況にあり、このような情勢の下で、米中ともこの対局の次の一手が見えている」と分析した。テロとの戦いで、アメリカの人権立国の理念がさらに実践された形となり、「オバマ大統領とクリントン長官は今後、中国への対応においてもその理念を貫くだろう」との見解を示した。