中国国防白書、軍備増強姿勢を鮮明に 米の地区安全問題介入に警戒
【大紀元日本4月6日】中国政府は3月31日、2年ぶりの国防白書「2010年中国の国防」を発表し、海洋権益の保護を目的とする軍備の強化・拡大姿勢を鮮明にした。アジア太平洋地区の安全情勢について、「複雑性と多変性がいっそう顕著になっている」とし、米国の軍事戦略への警戒感を示した。また、台湾独立を阻止することを白書で初めて軍の優先任務と定めた。
軍備増強姿勢を鮮明に
今回発表した白書で、「海洋権益の保護」を新たな戦略目標として打ち出し、海軍の能力や装備を増強していく姿勢を鮮明にした。中国が主張する「海洋権益」は、領有権を主張している尖閣諸島や南シナ海の離島に限らず、インド洋進出なども視野にいれている。
軍事費について、中国政府が2009年1月に発表した国防白書によれば、1978~87年度の国防費の伸び率は年平均3.5%だったが、88~97年度は14.5%と急増。98~07年度では15.9%に上った。また、10年度の国防費予算は7.5%増と22年ぶりに1桁の増加にとどまったが、今年度予算案の国防費は前年度比12.7%増と再び2桁となった。
一般武器の輸出について、「2009年にはナイジェリア、パキスタン、タンザニアとベネズエラにそれぞれ15基、11基、2基、6基の戦闘機を輸出した」と白書で記しており、2008年の計6機と比べ大幅に増えている。
一方では、国際社会が注目している航空母艦の建造問題や、次世代ステルス戦闘機「殲20」などについて白書は一切触れていない。戦力増強に邁進する中国人民解放軍の実態はなお不透明である。
米国の地区安全問題介入に警戒
白書の第1章は現在の安全情勢について、「アジア太平洋地区の戦略構図は大きな調整をはらんでいる。関連大国は戦略的投入を増やしており、米国はアジア太平洋地区での軍事同盟を強化し、同地区の安全問題への介入を強めている」と米国をけん制した。
朝鮮半島とアフガニスタンの情勢や、領土と海域をめぐる紛争、米国の介入などは、アジア太平洋地区の複雑多変な安全情勢をもたらしている、と白書は主張する。
また、中国自身が直面する国家安全への挑戦も「さらに多元的かつ複雑になっている」と記し、台湾の独立問題、東トルキスタン問題、チベット問題のほか、「国家領土の主権や海域権益を維持する圧力が強まっている」としている。「外部からの懸念、妨害およびけん制が強まっている。米国は両国間が交わした約束に違反して、台湾に引き続き武器を輸出しており、米中・中台関係を著しく損ねた」と白書は米国の対台湾武器売却についても非難した。
同日開かれた記者会見では、中国国防省(部)の耿雁生・報道官は、米国を東アジア地区での戦略的ライバルあるいは脅威と見なしているかとの記者の質問に答えなかった。一方、解放軍のトップ陳炳徳・総参謀長が5月に訪米することを明らかにした。
耿雁生・報道官は記者会見で「中米の軍事関係には依然いくつかの困難や試練が存在する」と述べ、米国に「相手国の核心的な利益と重大な関心事を尊重し、敏感な問題を適切に処理する」よう、従来の主張を繰り返した。
台湾独立阻止を優先任務に
今回発表された国防白書が、台湾に対して「統一」を示唆し、両岸の「実質的な政治交渉」を促した、とVOAが米シンクタンク「国際評価戦略センター(IASC)」の副総裁リック・フィッシャー氏の分析として伝えた。「北京が『統一』を求めているというシグナルを明確に出している」とフィッシャー氏は指摘し、「台湾独立派が中台の発展を妨げる障害と脅威だと白書は主張している上、はじめて、台湾独立勢力を食い止めることを、人民解放軍の優先目標と任務として白書が定めた」とフィッシャー氏は強調した。
フッシャー氏はさらに、中国政府が脅威と見なしている「台湾独立」は実は「民主」への恐れを表していると指摘した。「台湾には民主と選挙がある。政府は政権を取ることもできれば、失脚することもある。これらのことは中国の独裁政権がもっとも恐れていることだ」と分析した。