中国で原発論争 米メディア「日本の原発危機は中国での事故への警報」

【大紀元日本3月23日】福島第一原発の事故を受け、中国では原発推進派と慎重派の論戦が繰り広げられている。一方、国外メディアは中国の原発大躍進に懸念を示し、日本の原発危機は、今後中国で起こりうるより深刻な原発事故への警報だとの見解を示している。

中国で繰り広げられる原発論争

東日本大震災後、中国政府の当局者は12日と13日に、クリーンエネルギーとしての原子力発電のメリットを国内メディアにアピールし、「原子力発電を発展させるという決断と計画に変更はない」と原発促進の意志を重ねて表明した。それに加え、「中国の新型原発では冷却をめぐる問題は生じない」と原発専門家の話を引用し、自国の原発の安全性を強調した。

さらに15日に、中国で原子力発電を手掛ける中国広東核電集団は、「中国の原発建設地でマグニチュード8以上の地震が起きる確率は1万年に1度」と訴え、国民の間に広がる原発への不安の打ち消しに躍起となった。16日には、中国科学院院士の原子力専門家・陳達教授は中新社に対し、「建設中の発電所も含め、中国の27カ所の原子力発電所の建設地には活断層が通っていない」と原発の立地の安全性をアピールした。

しかし、これらの原発推進派の発言は国民の不安を解消するに至らなかった。深せん市の大亜湾原子力発電所は3つの活断層と隣接している、と深せん市地震局は発表している。また、昨年10月には、同発電所では、冷却水用の鋼管の亀裂により放射能が漏れる事故が発生しており、その公表が3週間遅れたことに、多くの非難の声が上がっていた。ネットユーザーの間でも、「日本の先進的な技術でも事故が起きた。中国の技術がどうして信用できるのか」と心配する声が飛び交う。

国民の間に広がる不安に対応を迫られた中国政府は16日、温家宝首相が主宰する国務院常務会議で、「新たな原発計画の審査・承認を一時中止する」と方針転換の姿勢を見せ、稼働中の全原発に対しても緊急安全検査を実施するなど、今までの「続行論」と違う「慎重論」を繰り広げた。

しかし、「慎重論」が発表された翌日、推進派の専門家らは、中国の原子力発電は福島原発より技術が進んでいる上、建屋の耐震強度も福島原発より高く、津波被害の可能性も低いと主張し、政府の「一時中止」の決定は「因噎廃食(間違いを恐れ、やるべき仕事まで放棄してしまう)」であり、「理性的ではない」と批判した。

「日本の原発危機は、中国の原発事故への警報」

中国の急ピッチな原発建設について、16日付ワシントン・タイムズ紙は、社説面のブレット・デッカー編集長の記事でその危険性を警告した。

デッカー氏は、中国が新たに原子力発電所の建設地に選んだ重慶市西南部は、2008年に起きた四川大地震の震源地から480キロしか離れていないことを引き合いに、中国各地で大増設している原子力発電所は地震の脅威にさらされていると指摘した。

また、中国が今後5年以内に原子炉27基を建設する予定など「大躍進」している原発事業について、「スピードを求めすぎて手抜きが生じかねない」と懸念を示した。「原発どころか、炭鉱事故でも手を焼く中国政府は、急増するエネルギー需要と貧弱な安全・品質管理との間のギャップを埋める手立てがない」と、デッカー氏は米国会の中国問題研究委員会の発起人、ランディ・フォーブス共和党議員の話を引用して指摘した。

デッカー氏は最後に、中国の共産党政権は世界にとって二重の脅威となっていると主張。その1つは、台頭する中国の軍国主義と根深い民族主義が、中共政権の勢力を世界中に拡大させること。もう1つは、冷酷に経済成長を追求する中国政府の姿勢。その姿勢は世界にとって時限爆弾のようなもので、原発はその一環として、「今回の日本の原発危機は、今後、中国で起こりうる原発事故への警報だ」と結んだ。

(翻訳編集・張凛音)
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