中国の台頭に不安 アジア地区、新たな力関係形成

【大紀元日本11月2日】尖閣諸島沖で日本巡視船と衝突、レアアース禁輸で日中関係をけん制、南シナ海で東南アジア諸国と領土争い……。経済成長で勢いがついた中国によるアジア各地での勢力拡張に対して、周辺諸国は警戒感を示している。アジアでの影響力の拡大を狙う米国の動きもあいまって、今新たな力関係が形を見せつつある。


経済が急成長し「スーパー大国」に成り上がった中国は、日本からインドに及ぶ地域で様々な外交問題を引き起こしている。そのため、米はアジアでの主導権を新たに手にする機会を得た。米ニューヨークタイムズが最近掲載した評論記事で指摘している。

オバマ政権、アジア外交に親疎の変化

同記事によると、11月5日からアジアを歴訪するオバマ米大統領はインド、インドネシア、韓国、日本を訪問するが、訪中の予定はない。訪問に際して、インドへ58億ドル相当の軍用輸送機の輸出を中心とする大口の取引がまとめられる予定だ。米国としては経済面・軍事面で成長著しいインドとの関係を、対中国戦略上の要所として強化していきたい思惑がある。

また、日本とインドも急接近しており、10月25日に訪日したインド首相が出席した会合では、安倍元首相が対中国を念頭に点xun_ヨ係について「同盟に近い関係だ」と述べ、安全保障や天然資源の確保などでインドとの連携を深める必要があるとの考えを強調した。一方のベトナムもかつての宿敵である米国と軍事協力を強化するなど、南シナ海の領有権問題で対立する中国を意識した行動に出ている。

領土主権問題で強い姿勢を見せた中国の態度によって、日本などの隣国は再びアメリカとの関係を強化する動きを活発化させ、米中関係に顕著な変化をもたらしている。

10月28日、ASEAN関連会議中、クリントン米国務長官は前原外務大臣とハワイで会談した。日中関係の緊張をもたらした尖閣諸島問題について、クリントン米国務長官は「尖閣諸島は、日米安保条約第五条の範囲に属する。我々は日本国民を守る義務を重視している」と述べた。

クリントン国務長官の談話から、米国がこれまで衰えを見せてきたアジア太平洋地区での指導力を、全面的に強化させる意向が示されたと、中国現代関係国際研究院の研究者・高祖貴氏は分析している。「米中両国の同地区での競争は激しくなり、両国間の揺れと摩擦がさらに顕著になるだろう」との見解を、米国VOAの取材に応えて、示した。

これまで懸命に中国を丸め込もうとしてきたオバマ政権は今、中国の隣国と、貿易パートナーの連盟を結成しようとしている。ニューヨークタイムズ紙が報じた。人民元の為替問題や、南シナ海問題などの煩わしい問題、尖閣諸島の問題などを用いて、中国の最高指導者に圧力を講じようとしているという。

香港中文大学の研究員で時事評論家の林和立氏は米国VOAに対し、オバマ政権はブッシュ政権に比べ、中国政府に対して異なる外交政策を取っていることは明らかであると指摘し、米国が自分たちへの包囲網を構築していることに、中国政府は危惧していると語った。

「オバマ政権は明らかに、その軍事と経済の重点をアジア太平洋地区に置こうとしている。そのため、オバマ大統領とクリントン国務長官は同地区をより重要視している。これまでの同盟国の支持のほか、東南アジア諸国、すなわち、ベトナム、フィリピンなど中国と主権に関わる紛争がある国々の支持をも確保したいところだろう」と林氏は述べている。

再び冷戦の局面:共産強権と自由民主の対抗 

中国を意識した最近の周辺国の一連の動きについて、香港の雑誌「開放」の蔡咏梅編集長は米VOAの取材に対して、「GDPが日本を超えて経済大国となった中国が独裁政権によって支配されている事実は、周辺国に恐怖感を与えているのではないか」と指摘した。

同編集長は「歴史上すでに教訓があった」と話し、「経済力のついた独裁国家は、周辺諸国と国際秩序にとって大きな脅威となる。かつて、ナチスドイツ、共産主義の旧ソ連、軍国主義の日本の台頭があった。これらの国は当時強い経済力を備えていた。今の中国はまさに当時のこれらの国々と同じ状況にある」と共産党独裁政権である中国の危険性を指摘した。

中国の内部事情に詳しいオーストラリア在住の作家・袁紅冰氏は、先日東京で行われた講演で、「巨大な経済力を身につけた中国は、世界的規模で政治拡張をはかっている」と指摘する。共産党独裁政権の中国の台頭とそれに伴う世界支配の野心により、世界の自由民主秩序は、冷戦前よりも深刻な脅威に直面している、と警鐘を鳴らした。

(翻訳編集=高遠、叶子)
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