「いいえ 死者は259人です」 報道規制を破ったつぶやき 中国の宣伝部を激怒させる

【大紀元日本8月5日】ちょっとしたつぶやきで仲間関係を広げていく。仲間だから秘密を打ち明けることができる。お互いに顔が分からないから淡々と本音を吐くことができる。時間が少なく、人間関係が希薄な現代人にとって、ツイッターは魅力的だ。

しかし、ミニブログとも呼ばれるツイッターは、中国という環境に置かれたらその持つ意味が変わってくる。7月28日に南京市の住宅密集地で発生したガス爆発事件は、周辺2キロの範囲に及び、南京市全域で震動が感じられるほどの規模だったが、当局は現場を封鎖してメディアの取材を禁じ、死者は10人であると報じた。それを転覆させたのは、「死者は259人」というツイッターのつぶやきだ。

南京市の現地5大主要紙は、翌日になってもこの重大事故についてトップ一面で扱うことはなかった。一方、爆発後すぐ現場に駆けつけた南京市テレビ局の記者が、生中継中の取材を現場にいる幹部に止められ、「誰が報道していいって言った!」という場面が視聴者の目に映り、報道規制を行う当局への嫌悪を感じさせた。

真実を知りたがる市民を納得させたのは、ミニブロガーの黄秩愚(フアン・イユウ)がつぶやいた一言だった。「死者は259人だ。機密機関から入手した情報であり、間違いなく確実だ」

このつぶやきは速やかにネット利用者らに転載され、ネット上で広まり、海外メディアが同事件の真相を掘り下げる手がかりにもなっている。この情報をつぶやいた黄秩愚さんはその後、南京市公安局により拘束された。

一言で当局の報道規制の壁を壊したミニブログ。中国の記者にとって重要な情報源としての役割を果たしているようだ。

今年6月に香港で開かれた中国メディア業者のフォーラムで、突発事件におけるツイッターの役割が話題となった。ほとんどの記者は、ツイッターを利用して突発事件の情報を探した経験があるという。一部の記者は、通信社や政府系メディアが発表した情報よりもツイッターのほうが早く、独占取材のネタとして頼りにしていると話した。

この会議で話題となったツイッターが、その後即、中国で閉鎖されてしまった。

ツイッターの人気に圧倒され、中国の四大ポータルサイトは相次いで中国語版のツイッターと呼ばれるミニブログのサービスを提供し始めた。中国国内の関連報告によると、現在中国のミニブログ利用者はすでに8千万人を超えているという。

ミニブログは更新スピードが速いため、中国当局がネットで行っている発言監視や削除などの監視は難しくなっている。最近中国のIT業界第一人者の学歴偽造事件がネット上で摘発されたのをきっかけに、ミニブログ上で習近平国家副主席を含む共産党高層幹部の学歴偽造問題が熱い話題となっている。

最近の深セン市の富士康連続自殺事件、賃上げストライキの動員や情報流布、福建省の農民人権擁護闘争への支援などもミニブログを通して広まった。

140字以内でネットやショットメールのつぶやきを通して、たくさんの仲間と情報交換やコミュニケーションができる。そのようなミニブログの言論影響力に中国の言論規制の親元である共産党中央宣伝部が激怒したようだ。7月中旬から、四大ポータルサイトのミニブログに関し、正式サービスの提供停止や使用範囲縮小などの動きが相次いで出され、ミニブログに対する当局の規制の姿勢を、利用者は懸念している。

そんな中、ポータルサイト「捜狐(Sohu)」のミニブログが最近閉鎖される運びとなっている。香港メディアの報道によると、「捜狐」のミニブログが、「六四天安門」などの敏感なことばに対して検閲を行っていないことが原因であるという。

ポータルサイト「網易」の高層管理者が海外メディアに話した情報によると、中央宣伝部は、ミニブログは共産党と政府の「代弁者」にならなければいけないと通達し、エンターテイメントニュースなどは許されるが、政治問題や社会問題は禁じられることになったという。

今回の南京市のガス爆発事件で、当局の死者10人という発表を転覆させたのは、ミニブログからのつぶやきだった。死者259人と発言した黄秩愚は、2日後の7月30日、「デマ流布」の罪で公安局に逮捕され、15日間拘束されることになったようだが、その発言の真実さもミニブログを通して検証される。

黄秩愚の名前をネット上で検索すると、こんなミニブログでのつぶやきにたどり着く。7月31日に書かれたもので、「黄秩愚は上海同済大学のロボット専門の学科の卒業」、「黄秩愚が話した機密機関から得た259人という情報は、実はそのガールフレンドから入手した情報。ガールフレンドは公安局に勤務する幹部で、ガールフレンドの親も政府内部の高層幹部である」、「ガールフレンドと親の影響力で、15日間拘束されることはないでしょう。2日後にはすぐ釈放される」など。

これらのミニブログを通して、黄秩愚のツイッターにたどり着くことができた。8月1日、本人の名前でつぎのつぶやきが書かれている。「無事に家に帰った。心配してくれて、ありがとう。特の私のガールフレンドと彼女の親に感謝。彼らの助けがなかったら、こんなに早く出てくることはなかった。彼らの安全のために、ほかのことはもう討論しないでください」

(執筆・趙莫迦Zhao Mojia)
関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。