新疆の統治を各省に「領地分封」 中南海の「漢民族化新政策」、災いの種

【大紀元日本7月13日】北京に和田市を、上海、広東省にカシュガル地区を。中共中央政権は最近、新彊各地に対して内陸19省・市が支援にあたるという名目の「一対一支援」制度を加速させている。

この「領地分封」は、胡錦濤政権が5年間にわたり続けてきた「新疆を漢民族化する政策」の実践で、中共政権が最も不安視する西部地区での政治の安定をはかる狙い。しかし、新疆をさらに不安な地に陥らせる危険性を秘める。香港の中国政情誌「争鳴」が解説する。

解説記事を以下に要約する。

19の省・市が新疆を分割 漢民族化の加速

新疆ウィグル自治区のトップにいた共産党書記は更迭された。現職の王泉氏は退き、湖南省元トップの張春賢氏が就任することになった。それを受け、4月、次期総書記候補の習近平氏は、メディアを管轄する中央宣伝部の部長・李源潮氏と共に、自ら新疆ウィグル自治区のウルムチ市を訪れ、声援を送った。一方、北京市トップの劉淇氏と広東省トップの汪洋氏という中央政治局の2人の主要メンバーも現地に駆けつけて、新疆支援の新政策の実施に取り掛かった。それにより、胡錦濤政権が5年間続けてきた「新疆を漢民族化する政策」はクライマックスを迎え、19の省・市が新疆の統治権を分割するという基本的な構想が練り上げられた。

この新政策は実質上、全国19の省・市が新疆の12の地区の82の市、「生産建設兵団」の12の師の統治権を分割した。北京、上海、広東、深せん、天津との5大省・市は主に、和田、カシュガル地区を「支援」する。これらすべての地区は、国境沿いの戦略要地である。中国政府の主な関心は、中東諸国と隣接する南部地区の国境線沿いにあるのことは、一目瞭然だ。

分封政策で政治安定を保つ

中央政府が新疆を統制する歴史を振り返ってみよう。毛沢東政権は新疆を漢民族化させるため、大量な漢族の軍人と若者を新疆に進駐させた。_deng_小平政権は、一部のこれらの漢族を故郷に返し、「緩やかな統治」を試行した。

江沢民政権になると、1997年から再び、新疆の漢民族化の強化が始まる。「5ヵ年の新疆全力支援」との戦略を実施した。その具体的な内容は、8つの省・市から共産党幹部を新疆に進駐させるほか、最高指導部が直接新疆に経済的な支援を行うことだった。

胡錦濤政権の下で、共産党幹部の進駐はさらに強化された。2005年、新疆支援政策は大幅に調整された。「幹部支援を主導とし、さらに、経済、科学技術、文化など全分野において支援する」との政策を打ち出した。

2010年からは、四川大地震の復興建設をモデルとして新疆全域に導入するため、支援プロジェクトと(国への)利益還元を直結させた。互いに利益をもたらすものとして、内陸部の各省・市が新疆の統治・運営に対する積極性と主導性を引き出そうとしている。その具体的な政策内容として、19の省・市が長期的(10年間)に新疆の各地区とそれぞれペアを組み、支援を行うことが挙げられる。実質上、新疆という中共政権にとって敏感な地区を分割して19の省・市に統治させる。

一部のメディアは、胡錦濤政権による同政策の進展具合を表すデーターについて、すでに報道している。「新疆日報」の2005年7月14日の報道によると、江沢民政権は、「5年間の新疆支援」の政策を通して、北京、天津、上海、山東、江蘇、浙江、江西、河南の8つの省・市から、4回にわたり、計1900人の幹部を新疆に進駐させた。一方、胡錦濤政権が2003年に発足してからの2年間、内陸部では合計2190回にわたり、延べ1.8万人余りの幹部が新疆に入り、視察などを行った。そのうち、省級の責任者が率いるチームは20以上に達している。同時に、新疆からも850回ほど、延べ7900人余りの幹部は内陸部を視察した。

2005年に発足した「幹部と経済による支援を結びつける」政策により、内陸部から新疆に渡った幹部は3749人に達し、江沢民政権時より97.3%増加した。そのほか、様々な人材延べ40万人を育成。各省・市と新疆の協力プロジェクトは1200個余りに上り、総額250億元に達している。最近のメディア報道によれば、2010年末までに、新疆に進駐する幹部の人数は1万人を突破する。その他の人材育成や協力プロジェクトも数倍に拡大している。

このように19の省・市が対象地区を定めて長期的にその統治権を握る「支援構図」は、新疆の漢族化を加速し、持続的な安定を得られると胡錦濤政権は確信しているようだ。 広東省の共産党書記・汪洋氏は、4月下旬、新疆を視察する際に、統治権を得る喜びを次のように語った。「新疆での任務は、党と国家の事業発展の全局において、特殊かつ重要な戦略地位にある。中央の要求に沿って、この新たな支援任務の期限は、2011年から2020年まで、過去の支援と比べると、質的な変化がある」。いわゆる質的な変化とは、新疆の資源を占領させて経済利益を得ることで、内陸部の各省・市に新疆の統治権への意欲を引き出すことにある。

現在、新疆の総人口は1925万人。その内訳は、漢族以外の少数民族1096万9600人、そのうち、ウイグル族は834万5600人で、新疆の総人口の43.35%を占める。漢族の人口は828万400人で、新疆全人口の43.02%を占める。一方、19の省・市が新疆の統治権を分割する新政策を執行して一年後、新疆の漢族人口は大幅にウイグル族を超し、新疆最大の民族となる見込みだ。

「周」の皇帝に倣った政策か

胡錦濤政権が新疆の統治権を分割する思案は中国古代「周朝」の皇帝に由来する、と専門家は指摘する。中国古代では、周朝から宗法の原則で統治権の分割制度をはじめた。皇帝は血縁関係のある子弟や功績のある大臣に各地の統治権を与え、諸侯(しょこう、日本の大名諸侯にあたる)となった。すなわち、主君である皇帝の権威の範囲内で一定の領域を支配することを許される。このような方策で当時の政治秩序の安定を保った。

今日、胡錦濤政権は新疆の12の地区の統治権を内陸部の19の省・市に与え、「互いに利益をもたらす」という経営権を寄与する政策は、周朝の宗法制の原則に非常に似ている。同原則のキーポイントは血縁関係を非常に重視し、血を分けた長男にしか継承権がない。今日の胡錦濤・総書記にとっては、中国共産党の高官は統治権を与えられる「血を分けた長男」であり、漢民族は信頼できる「血を分けた長男」であろう。非中共系の幹部、少数民族の幹部には皆、統治権を握らせてはならない。

短期的にみると、19の省・市が新疆の統治権を分割するのは、確かに漢族化を加速することができ、一時的に新疆の安定を得られる。しかし、長い目でみると、必然的に一層激化する民族と衝突を引き起こすことになる。政策から、新疆の少数民族の幹部と庶民が全く信頼されていないことが明らかになった。少数民族の強い反発は避けられない。新疆はさらなる危険な境地へと陥っていく。

(編集・趙MJ 翻訳・叶子)
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