中国地方政府負債規模 統計バージョン様々 GDPの8割を占める見通しも

【大紀元日本7月12日】中国地方政府の負債の急増問題が最近、多くの専門家や金融調査機関から注目を浴びている。2010年上半期、地方政府系の融資プラットホームの負債が急速に拡大しているが、正確な負債規模に関して、中国の各政府機関や海外金融機関の統計が異なっている。そんな中、すでに23~27兆元(約299兆円~351兆円)に達し、対国内総生産(GDP)比70~80%となっている、との驚きの主張を出した海外金融機関も現れた。

2010年第1回地方政府債券を発行

中国財政部は6月18日から、新疆ウイグル自治区や青海省を含む9の省と市で、財政部が代行する地方政府債券の2010年第1回入札募集を開始した。発行総額は438億元(約5694億円)で、うち286億元が3年物で、152億元が5年物となっている。同日から国内の銀行間債券市場及び証券取引所債券市場で取引を開始した。

各地方の発行額は、湖南省が89億元で最も多く、江西省65億元、新疆ウイグル自治区60億元、甘粛省と広西省が55億元、重慶市49億元、青海省33億元、湖北省26億元、厦門が最も少なく6億元となっている。

「中国債券情報網」の統計によると、09年に発行された地方政府債券の総規模が2000億元(約2兆6000億円)で、2005年から2008年まで4年間の合計1585億元(約2兆605億円)を上回ったという。

国家審計署:09年地方政府の負債残高2兆7900億元

国家審計署は6月23日、国内18の省と16の市及び36の県に対して行った調査では、これらの地方政府の09年の債務総額が2兆7900億元(約36兆2700億円)に達していると発表した。その内、各地方政府系融資プラットホームの負債総額は1兆4500億元。

財政収入に占める負債総額の比率でみると、その中7の省、10の市と14の県がすでに100%を超えている。さらに財政収入に占める負債総額の比率が364.77%に達した地方政府も現れた。

また、債務返済の資金元をみると、調査対象となったこれらの地方政府は09年に、新たな起債や融資で負債を返済したことがわかった。元利返済総額が2745億4600万元だが、負債全体の約48%にとどまり、財政資金の返済能力の低さが示された。

銀行業管理監督委員会の発表:7兆3800億元

一方、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、4月20日に開催した「2010年第2四半期経済金融情勢分析報告会」において、09年末時点の地方政府系融資プラットホームの負債総額は7兆3800億元(約96兆円)に達し、前年同期比で70.4%と急増したと示した。09年中国の全国年間歳入の6兆8500億元(約89兆円)の約1.08倍で、また同年の地方政府総財政収入3兆2600億元(約42兆3800億円)の約2・26倍だった。

その上に中央政府の約6兆元(約78兆円)の国債及び約4000億ドルの外債を加えれば、中国の負債総規模が歳入及びGDPに占める割合はすでに国際警戒ラインを超えている。

海外金融機関及び国内エコノミストの予測

5月にゴールドマン・サックスが発表した研究レポートによると、2009年末時点の地方政府負債総額は7兆8000億元に達し、GDPの23%を占めている。

5月20日付の「中国新聞網」によると、米金融大手のシティグループ(北京)のチーフエコノミスト沈明高氏は、2011年末までに地方政府系プラットホームの負債が12兆元に、地方政府の負債総額が15兆元まで拡大するだろうとの見通しを示したという。

また、中国社会科学院・中国経済評価センターの劉煜輝・主任は3月に、自身のブログにおいて、「統計に入れていない隠れた負債を加えれば、真の負債水準は先進国と比べても低くなく、すでにGDPの70~80%を占めている」と示した。すなわち23兆~27兆元に達しているのではと推測されている。

「4兆元景気刺激策」が禍の元か?

国内の報道によると、復旦大学世界経済研究所の華民・所長は、審計署の調査には中国のすべての地方政府が含まれているわけではなく、また地方政府が単独で債券を発行することを許されておらず、地方政府の負債の多くは銀行からの融資であるため、銀監会の統計指標より正確であるだろうと示した。また同氏は地方政府の財政統計が不透明で、予算案や歳入歳出決算についての判断がし難く、負債総規模に関しても正確な統計指標がないため、リスクの高低の結論を得難いと述べたという。

上海財経大学の現代金融研究センターの奚君羊・副主任は、各機関の統計方法が不一致なのが原因で、地方政府の負債総規模について大きな食い違いが生じたと示した。そのほかに、地方政府の名義ではなく、その地方政府系列の企業の名義で融資するなどの方法があることも、本当の負債総規模を把握できない一因であるとあげられた。

09年地方政府負債が急増した理由について、奚副主任は世界金融危機後に実施された景気刺激政策で、中央政府が地方政府の融資プラットホームへの管理監督を緩めたのが主因だと指摘した。

また、地方政府はその「4兆元景気刺激政策」に応え、地方政府の名義でより多くのプロジェクトに投資しようと考えたが、地方政府の財政収入ですべてを賄うことができなく、投資資金は融資や起債に頼らざるを得ないこととなった。さらに、各地の経済発展は不均衡で、財政収入の差も大きく、一部の発展が遅れている地方政府が景気刺激策に応えるために正常な運営ができなくなったのも、負債が急増した理由だ、と奚氏は言う。

(翻訳編集・張哲)
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