米中人権対話再開、疑問視される「非公開」の効果

【大紀元日本5月14日】米中両国は13日、2年ぶりの人権対話を行った 。オバマ大統領就任以来、初の両国間人権対話となる。一方、非公開のこの対話は、実効果を得るのが難しいと多くの米国議員はみており、人権擁護者も、非公開協議で実際に建設的な結果がもたらされるのか疑問視している。

ポスナー国務次官補(民主主義・人権・労働担当)が、中国代表の陳旭外務省国際局長の率いるチームを歓迎。議題は、宗教上の権利、ネットの自由、 司法の公正、法の支配などに関して、2日間にわたる非公開協議が行われる。

両国は昨年11月の首脳会談で、人権対話を今年2月末までに設けることで合意していたが、米国による 台湾への武器売却決定やオバマ大統領のダライラマ会見などに対して中国側が不服を示す意味でキャンセルされていた。

対話の具体的な内容は、発表されていない。クローリー国務次官補は、「特定の事例を取り扱うが、哲学的な性質となる」と10日、中国に関する会合の席で語った。21世紀における法の支配を中国に示唆するつもりだとする。同氏は、人権の問題や中国が今後改善をはかる上での短所を理解・認識する助けとなるだろうと要約した。

また、クローリー国務次官補は、人権は米中関係の核心の部分であり、経済対話の一環でもある、と述べ、5月23日に北京で行う米中戦略・経済対話でも、引き続き人権問題を議論すると示した。

非公開協議の効果に疑問視

一方、米中人権対話について、下院外交委員会のコネリ議員を中心に多くの議員は、ただ対話に止まるだけではなく、中国人権状況の確実な改善に繋がるべきとの共同認識を示した。

ロラバッカー(Rohrabacher)下院議員(共和党−カリフォルニア代表)は、「中国のような非民主主義国家に対しては、民主主義国家のアプローチでは効き目がない。対話ではなく、強硬な姿勢が求められる」と単刀直入に今回の非公開協議を批判、中国などの独裁政権に対して、関税の増加などの貿易手段で国内人権状況の改善を迫るべきだと同議員は提案した。

米国国際宗教自由委員会のスコット・フィリプス主任は、「対話の成果が、継続的対話の協議に達するだけなら、行う価値がない」とし、5月下旬の米中戦略・経済対話で人権問題を提起するのは、実効があるとの見解を示した。

中国問題の専門家、ワシントン在住の時事評論家・石蔵山氏は、「非公開ではいけない。米国側が提起した問題点と、それに対する中国当局の回答と約束、それらのすべての内容を公開すべき」と指摘。同氏によると、1989年に武力弾圧された学生民主運動「天安門事件」後、中国当局は欧米の民主国家政府に、人権状況を非難してもいいが、公ではなく水面下で行うことを提案をした。以来、多くの民主国家政府は中国当局と一種の暗黙の了解に達したという。

同氏は、中国当局に弾圧されている法輪功の実例を取り上げて、次のように説明した。「実際には、欧米の多くの政府は、中国当局に法輪功弾圧の問題を指摘している。しかし、外部がまったくそれを知らない。国際社会の各種の世論の圧力がない状況下で、法輪功への弾圧が恣意的に続けられてきた。外部はその弾圧の残虐性をまったく知らない。ひいては、一部の政府は自国メディアの関連報道を自粛させている」

宗教の自由と法の支配

宗教の自由や司法の公正というメインの議題について、ラントス人権委員会のベテラン議員スミス氏は、中国で深刻化し続けている宗教弾圧を問題提起し、法輪功や、キリスト教地下教会、チベット、ウイグルへの弾圧に特に注目していると述べた。

この意味で、労働教養所を取り上げることで、宗教の自由と法の支配の2点に言及できる。米国務省のレポートによると、中国共産党政権下では、法的な審議なしで、労働教養委員会が、国民を3年間労働教養所またはその他の拘置所に留置するよう判決が下せる。同委員会はさらに1年、判決を延長させる権力をもつ。 判決に対して訴えることができるはずだが、これらの事例はほとんど成功していない。

宗教信仰が理由で中国で迫害される人々を救援する組織「対華救助協会」(ChinaAid Association)の創設者、傅希秋氏(Bob Fu)は、キリスト教への信仰のために迫害され、1996年に国外に逃亡。傅氏は、2005年河南省で7年間拘留の判決を受けた、ハウスチャーチ(家庭教会)のリーダーとして重要なZhang Rongliang牧師の事例が米側高官により提起されることを望んでいる。

また、ウイグルのキリスト教信者であるアリムジアン・イミティ(Alimjiang Yimiti)さんは、昨年11月、新疆で自分の信仰についてアメリカのビジネスマンと会話しただけで、懲役15年間の判決が言い渡されたことにも傅氏は言及。さらに山西省のハウスチャーチグループの10人のうち4人が、労働教養所に2年から7年送り込まれていることも指摘する。

米国務省による2009年の人権報告書では、公式に記録されている労働教養所での25万人のうち、少なくとも半数は法輪功の学習者だと、国外の監視者が推測している。

1999年以来、中国共産党政府による撲滅の意図での法輪功学習者への迫害は、犠牲者の数では抜きんでている。

1992年から中国当局により弾圧されている法輪功団体の海外広報センター、「ファールン・インフォセンター」のレヴィ・ブラウデ事務長は、何千人もの人々を死にいたらしめ、何千万人もの人々を不法に拘置する法輪功への迫害は、現代社会で起こってはならないことで、中国の高官に明確に伝えるべきだと語っている。

(翻訳編集・叶子/鶴田)
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