「万国来朝」 史上最大の万博、ついに開幕 中国大衆は離心

【大紀元日本5月1日】8年の準備期間を経て、4千億元の巨資を費やし、国連の192の加盟国ほぼ全てが揃った上海万博は、160年の万博史上最大規模。4月30日夜、盛大に打ち上げられた花火と眩しいレーザー光線で煌々と輝く上海の夜景のなか、上海万博がついに開幕した。

フランスのサルコジ大統領など20の国と地域の首脳らが列席、イタリアの国際的歌手、アンドレア・ボチェッリさんが熱唱、谷村新司さんが中国人によく知られる「昴(すばる)」を披露、世界各地からアーティストや歌手が揃って豪華な演出で飾り尽くされた。「国富民強の太平の世に多くの国が訪ねてくる、いわゆる万国来朝だ。我々の中国は今まさにその状況だ」。中国メディアが報道するこの「万国来朝」の様子を生き生きと伝える上海万博の開幕式。「万博外交」を通じて、中国共産党政権は国家の威信をアピールする狙いだ。

「国進民退」、ネット上で批判殺到

一方、会場外に広範囲に敷かれている軍部の厳しい警備によって、一般大衆の万博へのアクセスが遮断されており、万博開幕式の輝く夜景を、多くの人はネット上の写真を通して目にするしかなかった。彼らはその美しさに驚嘆するよりも、批判の声一辺的だ。

「万博に4千億を使ったのに、西南部大干ばつの救援金は1・6億」、「朱門酒肉臭、路有旱死骨(朱門には酒肉臭く、路には旱魃で死んだ骨あり)」(※)、「万国来朝って?腹さえいっぱいにならない我々庶民に、その面子(体面)プロジェクトはいらない」、……。昨日夜から、インターネット上の数々の掲示板に、万博を罵倒する声が溢れ、開幕式と同時進行してきた。

「国の管理者は、人にお金持ちだと自慢しているが、国民は住む家が買えないし、仕事も見つからないし、病気になっても病院に行けないし、子どもを学校に行かせるお金さえもない。華麗な服を着てお尻を出している。自分を騙してばかりだ!」、「そんなに富のある国に、どうして私のような貧乏人がいるのか?国進民退、世界の珍景だ」

また、「綺麗な建物だが、汚染された環境には合わない」、「あんな大量の花火は、たくさんの温室ガスを出したのではないか」と、華やかな開幕式は上海万博が主張する環境保護方針に合っていないという疑問も多く聞こえる。

4千億の万博面子プロジェクトが買ったのは、大国の威信より民衆の離心だ。

1万8千世帯の「万博難民」

528ヘクタールを占める上海万博会場は、史上最大の広さ。しかし、その会場の建設のために、1万8千世帯が住宅を強制収用され、史上最多の「万博難民」を生み出した。

タイムズオンラインの報道によると、万博開催前、上海市では6千人の直訴者が逮捕されたが、そのほとんどは万博会場の土地収用で家を失った人たち。

上海直訴者、沈ぺいランさんによると、上海市政府は、一般市民に万博の入場券と200元の交通費をプレゼントしたが、万博で家を失くした直訴者に対しては、万博会場に近づかないよう警告を出した。

「多くの直訴者は、拘束されないように、万博開催前に上海から逃げ出した」と沈さんは話す。

直訴者の代表の一人、沈婷さんは更に、上海万博の開催資格は「騙してとってきたもの」とはっきりと批判。「会場は市民から盗んだもの、テーマソングは他国から盗作したもの、万博のシンボルマークさえも人の真似をしたもの。この点で、まさに史上初の万博だ」と皮肉った。

直訴者の楊さんは、万博は、共産党が権利維持のために行う面子プロジェクトだが、民衆にとっては「災難だ」と指摘した。

報道規制:万博報道は大々的に、青海大地震報道は控えめに

開幕式の終りに、青海大地震の2人の孤児が登場し、出場者や会場の観客と一緒に「愛の心」を示す手振りのシーンがあった。上海万博を祝っている時にも、青海大地震の被災地にいる人たちのことを忘れてはならないというメッセージだ。

こんなメッセージを出した当局ではあるが、一方で、万博開催を前に、青海大地震の報道規制を国内各メディアに通達した。

RFI放送局(ラジオ・フランス・インターナショナル)中国駐在記者や、RFA放送局(ラジオ・フリー・アジア)の報道によると、中国共産党中央宣伝部が4月23日に中国メディアを対象に、万博のいくつかの注目パピリオンの報道は万博開始前には行わない、万博報道は新華社の報道に基づくことを規定したと伝えた。続いて25日に、青海大地震の報道を控えめにし、万博の報道を増やすよう通達したという。

青海大地震に関して、同報道によると、中央宣伝部は▼科学用語を使う▼国の地震予報機関を批判しない▼チベット族のラマ僧による救助活動の報道を控える▼中央テレビ局の救援募金番組の報道に力を入れるなどと指示したという。

一方、前日に隣の江蘇省で起きた32人の園児を殺傷した事件に見られるように、社会治安が悪化する中で、当局は面子を保つために万博の警備に大量な財政を費やしている、と批判する掲示板の発言も、ネット上から削除されている。

取材を禁止された香港メディア

中国政府の報道規制は指針的なものだけではない。香港紙「アップルデイリー」によると、北京当局は同メディアの万博取材を禁止した。

中国政治情勢評論家で、米中国語政治情報誌『中国事務』の伍凡編集長は、「中国政府は一貫して、『喜』を多いに報道し、『憂』を報道しない」と指摘した。「万博は政府にとっての『喜』で、青海大地震は都合の悪い『憂』である。特に、万博は中国共産党の政治や外交においての『晴れ舞台』で、中国は強くなって、世界中の人々を自国に招くことができるようになったとアピールするチャンスだからこそ、彼らは自分たちの面子を保つために、国内を厳しく規制し、『雑音』を打ち消す一方、対外的に自分たちは金持ちだと見栄を張っている」と分析した。

(※)杜甫の詩に「朱門酒肉臭,路有凍死骨」の一句がある。権力者の贅沢な暮らしと貧しい人々の惨めな暮らしぶりを嘆いたもので、ここでは「凍」を「旱」に変えてある。

(報道=日本語大紀元ウェブ報道編集チーム)
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