人民元切り上げ  中国国内で不協和音

【大紀元日本3月31日】4月15日、米国財政部が中国を「為替操作国」と認定するか否かが注目されている中で、中国の中央銀行である中国人民銀行と貿易担当の商務部が、人民元切り上げに関して、異なる意見を持つ事実が浮き彫りにされてきた。また、温家宝総理は人民元の過小評価を否定しているものの、中国国有企業の管理職トップは米国の立場に同調し、人民元切り上げ支持の言論を相次ぎ発表しており、国有企業として初めての言動として注目されている。

切り上げ支持の声

「ブルームバーグ」の最近の報道によると、北京のレノボ社(連想集団)のCEO楊元慶氏が、人民元の切り上げは消費者の購買力向上につながるという見解を示した。また、中国招商銀行(China Merchants Bank)の秦晓代表取締役は、20か月も続いた人民元のドルペッグに終止符を打つことで、市場化された金利を貸し手に設定できると語っている。湖南省冷水江鉄鋼集団の陳代富・代表取締役は、人民元の切り上げは輸入コストの削減につながるため、利益上昇がもたらされると、切り上げを支持している。

これらの国有企業の管理職トップは、人民元切り上げを公に支持する言論を出すことで、人民元切り上げの実行は米国のプレッシャーによるものではないこととし、北京当局の顔が立つようにしたのだと米中関係の専門家ダニエル・ミカエリ(Daniel Michaeli)氏は指摘している。

また、26日付の米紙「ニューヨークタイムズ」は、中国人民銀行の周小川・総裁が、人民元の変動がドルに連動しているのは、今回の世界金融危機に対応した「特別な措置」であることを今月初めに強調している事実は、人民元切り上げの可能性を暗示していると伝えている。

絶対反対の商務部

しかし、その一方で、16日、中国商務部では、民族主義を持ち出し「中国は米国による人民元の切り上げ要求を拒否する」という声明を出している。

米紙「ニューヨークタイムズ」によると、訪米中の商務省の鐘山・副部長が24日、記者会見の席で、中国側は米国の人民元切り上げ要請を「受け入れられない」とし、「人民元の切り上げを強要すれば逆効果を招く」と述べたことを報道している。さらに「4月15日」が近付くにつれて、商務部の官員は相次いで、公の場で「圧力に屈して人民元を切り上げることは理性のない行動だ」との見方を示している。

同部の陳徳銘・部長は21日、「為替問題は一つの国家主権に関わる問題ではなく、二国間で協議されるものではない」と述べた。

米紙「ニューヨークタイムズ」によると、商務省は記者会見の際、8名の中国科学院 中米貿易関係学者の携帯電話番号を、海外メディアに渡し、これらの学者の論点から人民元切り上げをけん制しようという異例な行動に出た。人民元切り上げに対抗する商務省の姿勢が充分に伝わったと同紙は皮肉っている。

昨年、世界金融危機を受けて、中国の貿易黒字は2008年の2974億米ドルから大幅に減少し、1981億ドルとなった。人民元が上昇すれば、中国の貿易黒字がさらに大幅に下落すると見込まれている。

中国経済学者で「現代中国研究」誌の編集長でもある程暁農氏は、中国の95%の輸出企業は、収益の少ない中小企業で、もし人民元の対ドル基準レートが3%から5%切り上げられると、これらの企業は生産停止、もしくは破産の窮地に追い込まれるだろうと指摘する。また、一部の専門家は人民元が切り上げられれば、中国では約一億人が失業するだろうと見解している。そのため、商務省では全国のインターネットや国内メディアを通じて、中国国民に米国と全面的に抗争していくよう呼びかけている。

金融政策に切り上げは必要

一方、人民元切り上げを賛同する中国人民銀行にとっては、現在徐々に表れてきているインフレに対処する上で、政策金利の引き上げだけでは、限界がある。人民元の切り上げばかり阻止することは、金融政策の効果が充分に発揮できないという視点に立つ。

通貨価値の安定は、中央銀行である中国人民銀行の主要任務の一つだ。米国の連邦準備制度理事会(FRB)と大きく違い、金融政策に関する独立かつ絶対的権限はない。同行は中国共産党政権の行政機関の一つに過ぎないと米紙「ニューヨークタイムズ」は指摘する。

過去20年間に行われた米中双方間の貿易交渉に関して、中国政府の各関係部署の意見が大体一致しているのに対して、米国政府内部では意見が分かれるケースがよくあった。しかし、今現在は一転して、人民元切り上げに関して米国政府内部では意見が一致しているのが、中国政府内部では不協和音が響いている。4月15日はどのような結果をもたらすのだろうか。

(翻訳編集・張哲)
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