新下郷運動 背景に学生の就職難

【大紀元日本2月10日】中国国務院は先月、卒業生の就職問題を解決することが、現在の活動の重点であると発表した。世界金融危機の影響や中国経済構造の不健全性、内需不足の影響を受け、中国では、150万人余りの大学卒業生が、失業の苦境に直面している。当局の統計によると、最近の大学卒業生の失業率は12%で、去年の3倍、5年来の最高値となっている。中共当局は、消費刺激策を採り、彼らの就業を支援しているが、その施策の一つに、これらの卒業生を農村で就職させようというものが含まれている。

先月、上海市長の韓正は、ある就業支援策を発表した。それは、21万3000人の就職を支援するため、職業訓練を施し、実習生制度を構築して仕事が見つからない人を受け入れるというものである。北京市政府は、今年、農村で仕事を行う卒業生の募集を3000人増員すると発表した。広東省政府は、政府での就職を希望する卒業生に対し、先ず農村で仕事、あるいは訓練することを求めている。

中共による今回の措置の背景には、次の要因が潜在している:今年の6月は、“天安門事件”の第20周年であり、当時、数千人の大学生が民主を求めて抗議したが、軍隊に鎮圧、殺害され、死傷者の数は今に至るも謎である。今年6月に積年の恨みが再発することを避けるため、中共は、その防止に努めざるをえない。

2006年に開始された、卒業生を農村で就業させる計画は、依然として継続されており、これまでに、7万8000人が、3年間の契約にサインしている。今年においては、更に多くの失業卒業生が参加する。中国教育部は、すでに新たな募集計画を発表しており、農村に出る卒業生に対する貸出の額を拡大するとしている。

ワシントンポストの報道によると、中共にはもう一つの意図があるという。卒業生の失業問題への対応のほか、党地方組織の強化、党の統制力の強化が意図されているという。インターネットを熟知した若者が農村に行くことで、行政機関の質を上げることができるという。また、官員とディベロッパーによる違法な略奪によって土地を失った農民の不満感情が蓄積しているが、こうした卒業生の清純なイメージによって、農民の不満を抑え、地方の不安定要素を緩和できるという。

以前の学生は、強制的に農村に送られ、再教育された。他方、現在の学生が農村に行く目的は、自己の利益である。多くの学生は、仕事やメリットを享受するために、慌ただしく共産党への加入を申請する。他に選択肢のない人が農村に行く目的は、公務員試験での加点、他の手当、近郊の都市に居住する資格を得ることなどである。

就職機会の減少により、最近において、農村での仕事を求める卒業生が増加している。国営メディアの報道によると、重慶市で、農村での仕事を申請した人数と就業枠の比率は、2008年の6:1から、16:1に上昇している。

多くの学生は、農村での仕事を嫌い、面白味を感じていない。なぜなら、彼らが受ける訓練は、農村での仕事のためではなく、農村の指導者もまた、彼らを信用していないからである。

これら卒業生は、実務経験に欠けることから、村民の多くは、彼らの意見を信じない。また、農村幹部は非常に傲慢であり、改善すべき点は何もないと考えている。ある学生は、次のように語っている:“当初、私は、村の指導者に提案してもよいと考えていた。しかし、実際は、私にそのような権限はなかった。決定権は党委書記にあり、私たちは奴隷のようであり、権限が全くない。”

しかし、貧しい僻地において、農村の幹部は、卒業生を比較的歓迎しているようだ。山西省のある村長は、卒業生に一定の決定権を与えている。彼は次のように語っている:“卒業生は、情報収集のルートが比較的多く、私たちの考え方を変えるのに役立つことができる。”別の村長は、“農民は、村の指導者を通じて政策を理解することしかできないが、学生は、ネット上で私たちの製品を宣伝することができる。”また、彼は、卒業生は、農村や党委員会で正式な職に就くべきであると考えている。その理由は、彼らは、若く、学問があって活力に富む一方、村の党幹部は高齢に過ぎるからである。

(大紀元記者曾去執翻訳・編集)

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