有毒粉ミルク事件、浮上する報道規制問題=李大同
【大紀元日本10月5日】有毒粉ミルク事件の波及は中国から全世界に拡大し、事件の真相が明るみに出るに従い、別の話題も徐々に浮上し始めている。この別の話題とは地方政府と企業の隠ぺいによる情報公表の遅延と、これによるメディアに対する報道規制である。中国「氷点週刊」元編集長・李大同氏はドイツ・メディアの取材で、「もしこの事情が甘粛省で発生していなければ、あるいは、もし甘粛省の児童が死亡したという話でなければ、このような事情は基本的に隠ぺいされ続けただろう」と伝えている。
ドイツ国際ラジオ放送「ドイチェ・ベレ」によると、中国で三鹿などの乳児用粉ミルクからメラミンが発見されて以来、世界中の関連企業がこの事件に巻き込まれた。多くの国際的知名度が高い企業が、中国で生産された牛乳成分を含む商品の回収を発表し、さらに一部の企業は二度と中国の牛乳を生産原料に使用しないとまで発表しているという。中国乳製品業界、ひいては中国生産品の全体の品質には深刻な信頼性の危機が発生している。
この背景下で、中国共産党最高指導層も次々と対応策を作り出している。胡錦涛国家主席は安徽省視察の際、食品安全は民衆の健康に関連しているため、三鹿の有毒粉ミルク事件からの教訓を吸収する必要があると述べた。さらに国務院総理である温家宝氏も、第63回国連総会に出席のためニューヨークを訪れている時にこの事件に対する意見を述べている。
石家庄市政府の王建国氏は国営新華社の取材で、同市は遅くとも8月初めには毒粉ミルクの状況を把握しており、三鹿グループが市政府に対して提出した援助要請には「市政府がメディアの管理制限と共同歩調を強化し、企業による問題製品の回収に良い環境を作り出すことを要請する」としている。これはいわゆる、「メディアに対する管理制限と共同歩調」であり、行き着いた結果は河北省及び石家庄の現地メディアが有毒粉ミルク事件について全体で声を挙げることとなった。これにより甘粛省の関連報道はやっと全ての事件を最終的に明るみに出すことが出来たのだ。
李氏によると、「この事情がもし甘粛省で発生していなければ、あるいはもし甘粛省の児童が死んだという話でなければ、この事情は基本的に隠ぺいされ続けただろう。ただ甘粛省メディアが当時これらの報道を行った際、『異地監督報道(地域を跨いで行う監督報道)』ではなく、地元のニュースとして処理されたから外部に伝わったのであり、もしこのような偶然がなければ完全に隠ぺいされていたにはずだ」という。
『南方週末』の傳剣鋒と名乗る編集者が先日ネットブログ上に掲載した文章「三鹿有毒粉ミルク調査の報道編集メモ」(新浪ブログ上に載せられていたが、文章はすでに削除されている)によると、報道した記者は、7月には既に関連する手がかりを発見し、調査を行っていたという。しかし最終的には上層部である宣伝部門から圧力を受け、掲載できなかったというのだ。
李氏は、ニュースメディアはかつて盛んだった「異地監督」の報道方式も宣伝部門の圧力に遭うと考えており、「規則の中には既に実際にはっきりと異郷監督を許可しないと規定されており、最近では財経時報が停刊処分されるという事件が3月に起きている。この中で処分された第一の理由として「異地監督」のニュース規定に違反したことが挙げられている。実は異地監督の取り消しとはすなわち報道活動の停止ということなのだ。なぜなら、中国のこの体制では、地元メディアは当地の職員に直接管理されているのだから」と述べている。