中国株式市場にバブル化の兆候=専門家が再び警告
【大紀元日本10月30日】中国株式市場株価はこのほど再び急上昇を見せた。代表的株価指数の上海総合指数は10月において6000ポイント台を突破した。これに対して、証券投資アナリストらは再び、中国株式市場における株価の急上昇はこれから継続していく可能性が非常に低く、株式市場の基準指数にはバブル化の兆候 が現れていると指摘する。
個人投資家による強気相場が株市場のバブル化を招いた
日増しに株価指数が上昇し史上最高値を突破し続けてくるにつれ、ますます多くの人々が長年大事に貯えてきた貯金を投資資金とし、全てを株式取引に持ち込んだ。今年中国株式市場における取引高は世界一となり、上海総合株価指数は去年同期比で倍以上に上昇し、巨額の資金が市場に流入した。
ウォールストリートジャーナル紙アジア版は今月16日の報道の中で、機関投資家を主とする欧米株式市場と違い、中国株式市場では個人投資家が大半数を占めていると指摘する。同紙の記事では、上海に居住している27歳の個人投資家を例として上げ、中国株式市場に潜む大きなリスクを示唆された。このエンジニアとして勤めている27歳の個人投資家は株売買で得た利益総額がすでに本職の年収を超えた。しかも、彼は自分だけではなく、友人の代わりに株取引を行っている。友人の中に、一部の人が借金までして株投資を行っているという。この若い個人投資家すら、万が一株式市場相場が崩れ始め、暴落が止まらなければ、自分だけではなくて、友人の分まで巨額の損失が出るに違いないと話している。今現在、中国株式市場において約5千万人の個人投資家が市場の70%の取引高を占めているという。
近年、中国個人投資家の間には外国有名投資家による高額な投資セミナーへの参加が流行っているという。例えば、米国著名投資家のジム・ロジャース(Jim Rogers)氏が中国杭州で開催した投資セミナーの参加費は一人800米ドル(約9万1200円)と高額にもかかわらず、それでも当日約2000人が参加したという。さらに、ある投資家は5万3000米ドル(約604万2000円)を出して、ロジャースと共にディナーをし株式市場の動向や投資チャンスについて論議したいという。中国人証券アナリストが不人気の中国市場では、個人投資家にとって、ジム・ロジャース氏はすでに著名投資家のジョージ・ソロス氏(George Soros)とウォーレン・バフェット氏 (Warren Buffett)と並んで、伝説的な存在となった。
過熱化した投資行動は過去米国、日本そして台湾で起きた株式市場危機を招く恐れがある。中国にとって最大の問題は、株式市場のバルブ崩壊が中国経済にどのような影響を与えるかとのことだ。中国の胡錦涛国家主席がこれまで市場近代化を促してきたにもかかわらず、企業による設備投資や不動産市場から、今現在にも続いている株市場株価まで、過熱化してきた中国経済には少しの沈静化も見られない。多くの中国人投資家は、中国政府当局は2008年8月北京五輪の開催までに市場過熱化の継続を容認するのではないかとの見方をしている。ロイター通信社によると、中国金融当局がこれまで行ってきた5回の利上げと8回の預金準備率の引き上げの目的は資産価格ではなく、インフレを抑制するためにある、と指摘する。
バルブ経済の構成要素を有する中国経済の現状
1929年10月24日、ニューヨーク株式市場で株価が歴史的な大暴落し、所謂「大恐慌」が発生した。これは米国に限らず、当時の世界経済に大きなダメージを与えた。日本のバブル経済崩壊やアジア金融危機を予言し、逆張り投資家として知られているマーク・ファーバー博士(Dr. Marc Faber)は、現在中国の経済・金融市場の状況は1929年当時の米国と非常によく似ていると示した。ファーバー博士は、現在中国投資家が中国の経済に対して非常に自信を持っていると同様に、例えばワイヤレス技術の発明など、「大恐慌」の前に米国経済は科学技術の変革と進歩、また消費者層の拡大によって繁栄した。「大恐慌」は米国史上で最も深刻な景気後退で、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(Dow Jones Industrial Average – DJIA)指数は1950年代になってはじめて回復した。
1980年の日本及び台湾は世界経済及び金融市場で最も熱気を見せた地域だった。トムソン・フィナンシャル(Thomson Financial)社の統計資料によれば、1986年日本は一時、米国に代わって世界最大の金融市場になったという。当時の世界トップ10の銀行の中で6社が日本の銀行だった。しかし、1990年に、日経平均指数は5回目に史上最高値を更新した後に暴落し始め、13年ぶりの最低値まで下落し、日本経済も長期的な景気後退期に入った。また同年に台湾株式市場株価も79%の下落率を見せた。日本及び台湾のバルブ経済の前に株価の急上昇によってもたらした土地価格の上昇、企業利益の拡大、通貨価値の上昇、及び低金利、高貯蓄率と投資選択への制限、さらに世界トップ25社の中に中国企業が6社を占めていることから、現在中国経済にはバブル化崩壊の要素が一つも欠けていないという。
P/E比率(P/Eとは株価を1株当たりの利益で割った値のことで、株価収益率のこと)で見ると、去年中国企業が発表した資料に基づいた試算では、上海株式におけるP/E比率は約69倍となっていたことが分かった。しかし、現在S&P500株価指数。(「S&P 500とは、1923年から算出されている米国の主要企業500社銘柄の時価総額を対象として算出される株価指数で、米国の資産運用・金融において最も利用されている指標)のP/E比率でも18倍しかない。さらに、1929年大恐慌前の米国株式市場の平均P/E比率としても28倍だった。一方、バブル経済崩壊前の日本株式市場における平均P/E比率は約71倍で、同じ時期の台湾株式市場におけるP/E比率は約100倍だったという。これは、中国の現在の株価指数はすでにバブル崩壊前の最高点に達したのを表している。
実質収益の低い中国上場企業
不良債権に苦しんでいる銀行を含む中国政府が直接管轄している大手国営企業の資金調達の源となった中国株式市場について、シカゴ大学のロバート・アリバー(Robert Aliber)経営大学院教授は、株価高騰によって莫大な利益を得た中国企業のその実質企業収益に疑問を抱いているという。
市場調査・ビジネスコンサルタント専門企業の上海万得資訊科技術有限公司の調査データによると、中国上場企業は今年上半期における増益約74%に達したが、しかし、その純利益のうち約38%は株価上昇による利益で、実際の企業業績と関係ないという。