曾香港行政長官、文革評価で非難集中

 【大紀元日本10月15日】香港特別行政区の曾蔭権(ドナルド・ツァン)長官は先日、中共当局が1960年代に中国全土で知識人や学者などを粛清した大規模な権力闘争の「文化大革命」を評価するような発言をしたことで、香港の各界およびメディアから多くの非難を浴びた。

 曾長官は12日、香港ラジオ局英語放送の番組で、「人民が極端に走った場合、文化大革命のような運動が出現する(中略)。人民がすべてを掌握したとき、その地域の管理は困難になる」と発言した。番組司会者は、「文化大革命」は極端な民主である事例ではないと訂正したのに対し、同長官は、まさしく極端な民主の定義にはまっていると堅持した。

 香港の各新聞紙は翌日、同長官のこの言論を大々的に報道、各界の反応などを伝えた。

 香港紙「苹果日報」は、「文化大革命」中、毛沢東に扇動され教師に死ぬまで暴力を振るった「紅衛兵」姿に着飾られた同長官の風刺画を掲載した。同紙は、長官は文化大革命を引いて、民主制度を踏み躙っていると非難し、香港政府支持派の自由党と北京当局支持派の民建連も、曾長官の言論とは「線を引く」と報道した。

 親中共の「大公報」と香港誌「文匯報」はこの発言を報道したが、コメントはしなかった。親中共派の関係者は、コメントを避けている。中国全国政治協商常務委員・陳永棋や、劉衡強などは、詳しいことを知らないとしている。

 「東方日報」と「太陽報」も、中国の著名な文学者である老舎の息子・舒乙氏のコメントを引用し、「彼(曾蔭権)は文化大革命の激しさを実体験しなかったため、このことを完全に理解していない。この判断は極めて間違っている」と報道し、「香港人の良識を侮辱した曾氏は行政長官に就任する資格はない」と批判した。

 中国当局の機関紙「中国青年報」の元責任編集長で、政権に異論を持つ報道方針のため解任された李大同氏は、文化大革命を実体験した1人として、以下のように語った。「文革は、独裁者が起こした狂気の運動である(中略)。曾蔭権の文革に対する認識はまだまだ不十分だ」。

 一方、香港中文大学の政治学者・蔡子強氏はメディアに対し、曾長官の言論は、香港保安局の元局長・葉淑儀の発言「ヒトラーは民主選挙によって選ばれた」と同様に、最悪な社会影響をもたらす、と指摘した。

  社会各界から非難を浴びる同長官は10月13日、陳謝を行い、発言の撤回を示した。

 これまでに、香港の民主派は度々、同長官の親中共派姿勢を非難してきた。「一国二制度」という中国当局による香港の民主体制を維持する約束は、名ばかりの存在と指摘されている。 

 

(翻訳/編集・叶子)
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