中国:個人投資家9000万人突破、バブルで深刻な社会問題懸念

【大紀元日本5月12日】2006年から始まった中国株式市場の暴騰は今年2月末に9%と急落し、世界同時株安を引き起こした後、国内主要株式市場株価が再び上昇基調を見せ、次々と歴史的高値を更新した。5月の労働節連休前の4月30日、中国株式市場の主要指数である上海総合指数(SSEC)終値は前日比で81・40ポイント高の3841・27ポイントで引き、上げ幅は2・17%だった。これは4月23日に更新したばかりの歴史的高値の3625・761ポイントをさらに上回った。中国株価の急騰に対して、一部の専門家は中国株投資家の盲目的で、非合理的な投資行動によって深刻な社会問題が引き起こされるだろうと警告している。

空前の株投資ブーム、個人株投資家に大学生も

中国当局関連政府機関が発表した統計データによると、今年第1四半期では中国国内において株取引の新規口座開設人数は500万人を上回り、昨年一年間に新規口座を開設した総人数を超えたという。また、第1四半期における取引出来高も昨年一年間の取引出来高の総計を超えたという。4月下旬までに、中国個人株式投資家は9200万人を上回った。言い換えれば、国民14人のうち1人が株取引を行っているとのことになる。

米VOAの報道によると、株取引ブームは一般の人々だけではなく、多くの大学生にも及んでいるという。広東省にある深セン大学メディア放送学院の馬春輝副教授によると、在校生に対して行った調査で、大学1年生の1割、また大学4年生の8割の学生が株取引を行っているのが分かった。調査では、株取引を行っている学生は授業後、直ちに学生寮に戻り、個人あるいはグループで、ネット上で株取引を行い、株売買に夢中になり、結果的にそうした学生の多くは宿題や学業を怠けていると示した。馬副教授は「今(全国民が行っているのは)株投資ではなく、実に一種の投機活動に変わってしまった」と指摘する。

国内の報道によると、空前の株取引ブームで、今インターネット上だけではなく、職場、学校、銀行、タクシー、住宅街などあちこちで人々が株式市場や相場に関して会話し、あるいは情報を交換していることを耳にすることができる。人々が街で出会うときに、挨拶の代わりに「あなたの買った株は今日どのぐらい上がったか」との会話を交わしている場面すらよく見かけるようになった。また、情報によると、5月1日労働節連休前に各地では、新規口座開設のために数多くの人々が証券会社の前で長い行列をつくり、行列に並ぶための整理券さえ100元(約1550円)まで競売されたという。

リスク管理意識が欠けている中国個人株投資家

米国エール大学の陳志武・金融経済学教授は、中国企業で進んでいるコーポレート・ガバナンスの改革(株主利益の最大化)、株式市場に上場する企業についての透明度の高まり、さらに2007年マクロ経済的に堅調な成長を示した経済指標の発表のおかげで、個人株投資家の相場に対する強気姿勢がさらに強まったと示したが、一方、同教授は1990年代末期に中国で現れた株投資ブームと変わりがなく、個人株投資家は依然としてリスク管理の意識が非常に低いと指摘する。多くの人々は投資目的ではなく、一晩で莫大な富を手に入れたいというギャンブル的な感覚で、貯蓄を資金に取引口座を開設した。このような投資家はほとんど基本的な投資知識を持たず、金融市場あるいは取引仕組み自体を理解しておらず、株価が上昇しているのを見て、先を争って株を買う。このため、株価がさらに高騰し、株式市場はバブル化を呈することになる。

この異常とも言える現象に、多くの証券アナリストやエコノミストが懸念している。陳教授も「私は非常に心配している。多くの人は定年後の老後生活に備えた貯蓄を使ってまで株を買ってしまった。もし、株価が暴落すれば、お金を失った彼らの老後の生活はどうなるだろうか。老後の生活のためのお金はどこから調達できるのか」と過熱化する個人投資ブームに警鐘を鳴らす。

株式市場への政府当局の介入は社会的混乱をもたらす

陳教授は株式市場をめぐる個人投資家と政府との間の関係について、「アメリカでは、個人投資家の投資行動は個人の意思で行っている。投資リスクに関して個人で責任を持つ。さらに、個人投資家による株売買の過程において、政府は一切干渉、あるいは介入しない。しかし、中国の株式市場は少し違う」と述べ、米国株式市場との違いは中国に社会問題をもたらすと示した。

陳教授は「数年前、中国政府のいくつかの政府機関は直接に、あるいは間接に証監会(中国国家証券監督管理委員会)を通じて、株式市場に介入し、株価を上昇させた。もし、今回株式市場が大暴落すれば、間違いなく中国政府がその責任をとることは不可避となる。莫大な損失を負った人々による抗議活動、あるいは暴動が発生する可能性が十分考えられる。また、そうした個人投資家たちに政府はどのように補償するのかがまだはっきりしていない」と言った。

山高ければ、谷深し

個人投資家の盲目的な株売買が、中国株式市場株価が急騰する主な原因だと中国株式市場ウォッチャーが言う。これは、ある意味で中国の資本市場は投資目的から投機目的に変化したことを示している。

中国社会科学院金融研究所の尹中立・主任(金融市場研究室)は、中国の報道機関を通して「マーケットでは民衆から熱狂的な購入行動(バブル)が現れるとき、株式市場がすでに危険な状態に陥っているということは西側諸国の歴史の中で証明されている」と警告した。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁も、5月6日スイスのバーゼルで開催された国際決済銀行(BIS)定例中央銀行総裁会議において、中国株式市場のバブルについて懸念を述べた。

エール大学の陳志武教授は、中国の銀行の預金利率がインフレ率を下回り、不動産市場も沈静化を見せており、また個人投資家の海外金融市場への投資活動が依然禁止されている中、「中国国民の株式市場への熱狂的な投資行動は沈静化できない」と自身の見解を述べた。

陳教授は、「中国の個人株投資家は『山高ければ、谷深し』(株価が短期間で急騰した後には大きな下げが待っているとのこと) という相場の格言を忘れてはいけない」とし、「株も一種の資産である。資産の価格とその価値との間に大きなずれが生じるとしても、最終的に価格は必ずその価値相応のレベルに戻る。これは、最後に株式市場に入って高値で株を買った人は株価調整の過程に莫大な損失を被ることを意味している」と述べた。

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