米下院公聴会:中国の知的財産権侵害、WTO提訴再検討

【大紀元日本2月19日】ロイター通信によると、米通商代表部(USTR)のバティア次席代表は15日、米製品の模造が中国でまん延している問題について、米国は昨年中国に対策をとる猶予を与えたが、解決に至っていないとし、昨年見合わせた世界貿易機関(WTO)への提訴を再び検討していると米下院の公聴会で述べた。同次席代表は「われわれは昨年10月、中国に対して、(WTO提訴の)措置をとると通知した。しかし、中国がさらなる2国間交渉を要請したため、米産業の理解から、提訴は見合わせた」と説明。5カ月たった現在「解決には至っていない」と述べ「交渉が成功しないことが明白になれば、WTOでの紛争解決に進む」と述べた。公聴会では、業界の代表が中国の知的財産権侵害の実害を証言した。

*経済テロ

VOAの報道では、業界代表の証言を取り上げ、中国での知的財産権侵害の実態を紹介した。海外で商品を製造し販売している米企業・ABRO工業会社のピーター・バラネイ社長は、2月15日に米下院で開かれた中国との通商についての公聴会で、議員たちに同企業が中国で体験した驚愕の実例を証言した。

バラネイ社長は「我々の製品を模造した多くの例を挙げることはできる。その中でも、特に『湖南神力実業公司(以下、湖南神力社)』という会社は2001年よりABRO社の製品を模造するだけではなく、ABRO社のブランド名まで盗用し、ABRO社と自称するようになった。まさに知的財産権における経済テロであり、もっとも危険性の高い中国の会社なのだ」と訴えた。

*数千万米ドル(約数十億円)の損失

バラネイ社長は、湖南神力社が同社の製品を大量模造し、世界各地へ輸出されたことから、5年間で同社は数千万米ドル(約数十億円)の損失を被ったと訴えた。バラネイ総裁は、幸いに、同社は米通商代表部(USTR)および米特許局の協力の下で、湖南神力社との訴訟案件に勝訴し、湖南神力社が中国国内で「ABROブランド」の商標登録を制止したという。昨年12月、裁判所は湖南神力社に対して、6万4千米ドル(約770万円)の罰金を科した。

*中国政府幹部の言行は裏腹

バラネイ社長は、多くの米企業は中国の海賊版および模造品に被害を受けており、知的財産権の保護について、米企業は中国政府の緩慢な改善を待ってばかりいてはいけないとの見解を示した。バラネイ総裁は「中国政府高官は、知的財産権を尊重することは知っている。しかし、多くの面において、彼らの言行は裏腹であり一致しない」と指摘した。

*命を脅かす模造薬品

一般製品の模造は関連企業に対して経済損失をもたらすが、医薬品の模造品は人々の命を脅かすものと言える。米薬品研究製造業者協会国際事務担当のジェラリン・リタ副社長は、模造品、海賊版は中国では業界を問わず氾濫しており、製薬業界でも横行し、健康と生命を深刻に脅かしていると指摘した。

リタ副社長は「医薬品の模造は知的財産権保護において、非常に関心の強い問題である。最初から生命の安全問題に関わるからだ。どの種類においても危険であり、模造薬品には正当な薬品の成分を過量含有したり、不足したりすることは、共に深刻な問題を引き起こすものだ。一部の模造薬品は、まったく薬品成分が含まれず、ただの糖類の塊りである。勿論、もっとも危険な模造薬品は毒薬を含有するものだ」と指摘した。

偽薬を服用して死亡した報道は中国で頻発している。実際、昨年に安徽省の製薬工場で製造された抗生物質製品が、全国数千人に対して体の不具合をもたらし、少なくとも10人が死亡した事件があった。リタ副総裁は、中国政府はここ2年間において、偽薬の摘発に幾つかの措置を施したが、焼け石に水に過ぎず、模造品の迅速なまん延を阻止するものにはならないとし、中国は依然として、偽薬の源であり、世界トップであると指摘した。

*中国の法律を改定すべき

リタ副総裁は、中国の法律には偽薬の製造行為に対する刑事処罰もあるが、刑罰の内容はもたらされた損害程度と比例することに定めていることに対して、薬品の場合は、関連する損害の証拠を入手することは比較的困難であるため、多く薬品を模造した容疑者らは懲罰を逃れることができると明らかにした。リタ副総裁は、中国当局は薬品を模造した企業または個人に対して、模造行為が損害をもたらしたかどうかに関わらず、刑事処罰を与えるべきだとの見解を示した。

*中国政府管理システムの欠陥

リタ副総裁は「中国政府は薬品模造の取り締まりにおいて、かなめとなる部分が欠けている。

中国の化工企業は薬品を生産するための化学原料の販売および輸送に対する監督はまったくないと言えよう。この問題は一部の国家にも存在している。この部分は非常に重要であり、模造するメーカーがこれらのルートを通じて関連原料を入手し、偽物を作っている。原料の入手ルートの監督を強化せずに、下流だけの禁止では問題解決にならない」と指摘した。

*米政府は中国に対して、WTOへの提訴を検討

米通商代表部のバティア次席代表は公聴会で、「中国における知的財産権の侵害行為および模造した製品の合法的な販売は、米企業に10億米ドル(約1210億円)の損失をもたらした」と指摘し、中国側との交渉が成功しないことが明白になれば、WTO提訴の再検討を明らかにした。

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