北朝鮮難民救援基金・野口孝之氏「脱北者救済の鍵は、中国当局にあり」
【大紀元日本6月7日】日本NPO法人組織「北朝鮮難民救援基金」の日本人活動家、野口孝行氏(34)は5日、大紀元時報のインタビューに応じ、中国東北部の脱北者の苦境、中国公安当局の非人道的な北送、日本をとりまく国際環境、北京五輪など広範囲な視点で静かな口調ながら熱く語った。野口氏は、これまでの朝鮮人との出会いから日朝のこれからの未来を構築する活動に興味を持ち、2002年から同基金で活動を開始、中国東北部での救援活動においては2003年に現地で公安当局に拘束され8ヶ月間拘置された。
―中国東北部での脱北者の苦境はどのようなものか?
「(脱北者は)中国公安当局から不法滞在、不法移民として見られているので苦しいことは間違いない。潜伏者も20万~30万人になると、幸運な人と不運な人が出てくる。特に深刻なのは若い女性脱北者の人身売買で、東北部では嫁の来手がないところがあり、特に身体障害を持つ中国人男性の元に売られていく。また北朝鮮から来たことで差別され、DVに遭うのも深刻だ。夫婦で潜伏している場合は、奥さんがカラオケ店で働き、風俗営業で中国人男性を相手にして日銭を稼いでいるが、摘発されると北送が待っているのでそのプレッシャーは計り知れない」。
―中国公安当局の脱北者に対する基本的なスタンスはどのようなものか?
「当局は、脱北者を難民と捉えておらず、不法移民として定期的に難民狩りを行い、摘発し、北送し続けている。とにかく(当局にとって)中国領内には居てはいけない邪魔な存在」。
―基金は日本に所縁のある朝鮮人を優先的に救出しているのか?
「特に、その点では差別していない。公平に救出している」。
―中国公安に拘束された当時の状況は?
「2003年12月に、広西チワン族自治区領内の南寧(中越国境付近の大都市)で拘束された。当時、脱北者2人を日本人に装い連れていたが、公安当局は分かっていたようだ。日本からの経路、日本での基金の仲間、これからの行き先など、根掘り葉掘り聞かれた」。
―拘置されたのは何日間か?
「全部で8ヶ月間。拘束されて1ヵ月半で逮捕状が発令され、2~3ヶ月で起訴され、5ヶ月で裁判に掛けられ、6ヶ月半で拘置8ヶ月の判決を受け、刑期8ヶ月満了で解放された」。
―2002年5月に瀋陽で日本総領事館に脱北者の駆け込み事件があったが、どう思うか?
「起こるべくして起こった事件、脱北者は一様に焦っている。彼らにとって日本総領事館の壁の向こうは自由で安全な世界」。
―北朝鮮人権法が日本でも韓国でも論議されてきたが、西洋の米国でいち早く可決され、脱北者6人が米国に亡命したが、これについてどう思うか?
「米国で可決されたのは象徴的。多分に政治的色彩が強く、中国を牽制する意味もあり、極東の安全保障を考慮したにせよ、脱北者にとっては心強く評価されるべき」「日本も可決すべきだが、自民党案は拉致に対する経済制裁、民主党案は拉致と脱北者保護であり、意味としては後者の方が人権法案に近い…日朝の歴史認識の差異は、過去の経緯もあり埋めがたい。しかしながら、この法案を通して救済活動をすれば、100年後の極東の歴史に偉大な価値があることに気がつくだろう」。
―韓国では、拉致被害者と朝鮮戦争捕虜を合わせ被害者が数百人いるが、「太陽政策」によって親北路線がとられ、ソウルのNGO団体からは「弱腰外交」と批判されているがどう思うか?
「個人的な感情としては許せないが、(理性的に考えると)韓国は民主国家であり、選挙により選出された大統領が打ち出した政策なので日本人である私が口出しする問題ではない。しかしながら、次期大統領がどのような政策を執るかは注目している」。
―2006年は中国の文化大革命から40年の節目に当たるが、中国の民主化が脱北者あるいは平壌政権に与える影響はどのようなものか?
「拉致の問題でも、脱北者の問題でも一番のキープレイヤーは中国。中国の憲法には、国際法が国内法に優先するという条文があるはずで、中国は国連難民条約に署名しているにもかかわらず、脱北者を無慈悲に北送し続けている。私は調書の間も、この点を強調し、国際法違反であると主張したが受け入れられなかった…一方、平壌は自国民を餓死させ、外国人を拉致しこちらも国際法違反…国際社会から見たら、兄貴分の中国と弟分の北朝鮮はならず者の兄弟に見えているはず」。
―日本人の救済活動家として特に訴えたいことは?
「中国当局が北京五輪を成功させることができるか疑問。基金は、開催地を変えるよう要求している。当局は、五輪開催に向け脱北者の摘発を強化しているが、総ての脱北者を取り締まることは不可能…マラソンレース中に一位の選手の前に脱北者が飛び出してきて救援を求める。あるいは他の種目競技中に脱北者が飛び出し救援を求め、それが全世界にTV中継される。また中国は恥をさらすのであろうか?…脱北者の中で考えている人はいるだろう」。
―在日朝鮮人は現在60万人、南を支持する民団が22万人、北を支持する総連系が8万人、どちらにも属さない人が30万人だと言われているが、この現状についてどう思うか?
「時代を経れば、北も南もない朝鮮系日本人という風に変わってゆき、より軋轢の少ない日本社会になってゆくだろう」。