中共官僚とメディア、中国民衆の三階層からみた「2005年十大ニュース」

 【大紀元日本2月24日】香港誌「動向」がこのほど、中共の官僚メディア(もちろん共産党のメディア)、そして民衆の3つの階層毎の「2005年十大ニュース」を発表した。立場が変われば見方も変わるとはよく言われることだが、意見がここまで違うと、中国共産党が人民の代表ではないことが改めて認識される。重複分も含めて3つの階層の延べ30個の「十大ニュース」の項目から改めて10項目を選び、考察してみよう。

 1.農業税

 中央政府は2006年1月から全ての農業税を廃止する。しかし、2000年に安徽省の農民に対して農業税を免除した際、地方政府による教育や農業灌漑などの社会資本への投資が抑えられ、結局農民の負担増となった。このことから民衆は「どうせ役人は他の名目で今まで以上に税を取り立てるつもりだから、負担軽減にはならない。」と冷ややかな見方が一般的。

 2.反分裂国家法

 西側諸国にあるような「法」が共産党支配下の中国にあるかどうかの議論はとりあえず横に置いて、反分裂国家法は台湾を武力制圧するための「法的」根拠であるとともに、その成立は「台湾の独立は認めない」という中国共産党政権の意志表明でもある。その自分勝手な内容ゆえに中国内外で大きな話題となったことは確かだが、はたして民衆は本当に台湾の武力制圧を望んでいるのであろうか。アナリストの中には、共産党政権の内政が行き詰った時、国民の目をそらすために「台湾武力制圧」が持ち出されることを憂慮する者もいる。

 3.炭鉱事故

 2005年も炭鉱事故が多発。対策として中央政府は「安全基準を満たさない炭鉱など5000余りを閉山させた」と発表するも、民衆は「役人と業者が癒着して労働力を搾取し、危険防止のための投資をおろそかにするのが悪い」と怒りが収まらない。しかしメディアは「なぜ事故が多発するのか」と成り行きと理由だけを報道し、民衆の怒りを無視し続けている。

 4.日中関係悪化

 日中国交正常化以来最悪の状態。中共政権は「小泉首相の対中戦略のせい」と小泉首相を非難する。それを受けてメディアも中国内で反日感情がエスカレートしていることを伝えている。しかし、民衆は日本への反感よりも、反日感情の表れである反日デモやネットへの意見の掲載を抑制する中共当局への不満の方が大きいという。

 5.監査

 共産党政治部門、国家事業団などに監査のメスが入り。メディアによると4000億元もの不正蓄財が行われた。官僚の発表ではこの監査活動が民衆の支持を得たと言っているが、民衆はこのような不正を糾弾するばかりで、役人による監査活動をほめている様子はない。人々は「まだまだ氷山の一角」と思っている。

 6.汕尾

 汕尾市で2005年7月から繰り広げられてきた、地元官僚に土地を接収されたにもかかわらず十分な補償を受けられなかった東州鎮の村民の抗議行動は、5ヶ月後の12月6日、武装警官による掃射によって村民側に死傷者30余名を出す惨事となった。全国の民衆が村民を支持しており、この地元官僚側の暴挙はとうてい許すことができないと怒り心頭である。しかし官僚側を見ると、中央政府はいまだにこの事件の認定を行っておらず、それゆえ中央政府の態度表明が未だに出されず、関係した地元官僚の処分もままならない状態である。中央政府はこの事件が全国各地で頻出する抗議行動に与える影響を測りかねているのか、あるいは地元官僚との力関係で手を出せないでいるのか、いずれにせよ中央政権の指導力の低下が垣間見える。

 7.住宅事情

 「都市部の住宅価格が急騰し、合計7.5億平方メートル、率にして45%が空き部屋。」とメディアが伝えた。民衆の間では、「価格高騰は官僚と不動産業者との癒着が原因」との見方が一般的で、「たった4%の人しか住宅を買えなくなったなんて!」と土地・家屋等の不動産価格高騰を嘆く。

 8.証券市場

 決算などの経営数値が後で続々と訂正され、企業情報が一切信用できないと言われる中国企業の株式を買うことは、限りなく賭博に近い行為である。その中国市場が昨年に6年来の最安値を更新し、民衆は95%の投資家が損をしたと嘆いている。このような現状に目をつぶり「成長著しい中国」などのキャッチフレーズで中国株式市場への投資を呼びかけ、結果として中共の政権維持に加担しようとしている日本の証券会社は本当に日本の投資家のことを考えているのだろうか。

 9.改革の挫折

 官僚は医療改革、教育改革が失敗に終わったことを認めた。医療も教育もカネを生むビジネスの場と化してしまった結果、都市部の75%、農村部の98%の人が医療費を負担できず、大学生の40%が学費を払えなくなってしまった。このような現状を改善できなければ、今年も中国全土で抗議行動が繰り広げられるに違いない。

 10.抗議行動

 昨年は群集によるデモ、行進、直訴などの抗争事件がエスカレート。2005年4月の反日行動で中共当局は自分に都合の良いデモだけを繰り広げようと目論んだが、後で反共産党政権へ変質することを恐れて急遽反日行動を抑え込んだ。汕尾では抗議する民衆に掃射まで行われた。何かをきっかけに大規模な共産党政権への反対行動に発展するのを恐れる共産党政権は今後も、抗議者皆殺しなどの悲惨な結末をもたらす行動に出ることが十分予想される。それは共産党が持つ本質的な邪悪さから生じるものであり、共産党が滅ばない限り、抗争事件は限りなくエスカレートし続けるのである。

 

(記者・微好)
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