米国投資家:深刻な経済不況に遭遇する中国

【大紀元日本1月4日】米国投資家ジム・ロジャーズは、次のように述べている。「かつての英国や米国と同様、中国は、やがて深刻な経済不況に遭遇し、この不況を経験して初めて、中国は偉大な国家となることができる」。経済が上昇の一途を辿るということはない。19世紀の米国は、15回の経済危機と1度の内戦を経験した。また、1907年の米国経済はほぼ破産した状態にあった。しかし、現在の米国は、やはり最も強大である。日本はもう一つの成功例であるが、これもまた、成長の中での衰退を回避することはできなかった。1966年に日本の金融体制は崩壊したが、それでも、日本が世界で最も豊かな国になることを阻止しなかった。経済学者クルーグマンは、著書《The return of depression economics》において、アジア国家のほぼ全てが壊滅的な崩壊を経験したが、中国は次に崩壊する神話となるではないかとの懸念を示した。

国内の多くの者もこうした懸念を持っており、市場経済を運営する中で、経済不況を経験せざるを得ないと考えている。遠くない将来、誰も具体的な時間を予測できないのは当然のことであるが、おそらく、人々が最も良好であると感じたとき、中国において経済不況が出現するだろう。長期的に、これは中国経済にとって必ずしも悪いことではない。中国経済は、面倒なことを経験して初めて、経済の良好な発展に有利なメカニズムを生み出すことができるのであり、長期的に見て、これは、中国経済の健全な発展のために必然的に経験することである。

現在の問題は、経済不況が発生するか否かを論じている段階には既になく、何時発生するのかという段階である。経済危機が具体的に何時発生するのかを正確に予測するのは、神にしかできない。しかし、我々は、地震が発生する前の一定の前兆と同様に、懸念すべき一部の現象を観察することができる。これは、我々が判断する上で有益であろうし、我々が準備を進める手助けともなろう。一般に、投資、輸出、消費が、経済成長を牽引する“三頭の馬車”である。観察を進めることによって、我々は、多くの現象から、この“三頭の馬車”に、現在懸念すべき問題が出現していることを発見することとなるであろう。

一.投資

投資には減速のシグナルが現れている。様々な兆候から明らかなように、中国におけるマクロ調整によって、国内投資が減速するとともに、外資の中国投資に対する興味もまた冷め始めており、多くの外国投資家は、中国経済が既に過熱状態にあるのではないかと懸念し始めている。本年のこの8か月間(2005年5月~同12月)における、直接投資を行う外資企業による設備輸入は12%近く減少しており、輸入の伸びの減少は、投資が減速することを意味し、再び、当時ほどの量が輸入されることはない。一部の外国投資家は、中国を捨ててインドに向かっているが、彼らは、インド経済は離陸の段階にあって、中国に比べて安全であると考えている。外資の動向は非常に微妙であり、こうした人民元資産の資金が、一度群れをなして撤退すれば、中国経済は巨大な影響を被ることとなる。

国内の不動産業への投資は、既に明らかに減速しており、不動産のホットマネーが利益を確定する情勢が鮮明になっている。この数年間、不動産業は、社会固定資産投資の高成長の主力であり、住宅価格の高騰は、投資の猛烈な増加を刺激し、関連産業を先導し、経済成長を牽引するとともに、地方税収の急速な増加をもたらした。長江デルタ各地における不動産業の投資は、全社会固定資産投資の20%以上を占めている。しかし、不動産に対する過度の投資は、同時に、多くの悪しき結果をももたらした。現在、国内市場の多くの産業における生産能力の過剰は、主として、鉄鋼、建材、アルミニウムなどの製品における価格調整のように、不動産業のマクロ調整実施後における、関連産業における需給関係の変化に現れてきている。また、不動産が経済成長の主軸であった局面に変化が発生した後、中国経済の将来の成長の牽引役は何になるのであろうか?

この2年間で形成された生産能力はいま稼動期に入りつつあるが、需要が供給の速度に追いつかないことから、企業の利潤率の伸びとPPIが下落を始めている。節制のない投資、盲目的な拡大再生産は、既に中国を生産過剰の危機に直面させている。国家情報センター経済予測部の産業展望報告によると、2006年における産業の発展をめぐる国内外のマクロ環境は逼迫しており、多くの産業における利潤は、以前の高成長から緩やかな成長に転じ、最近数年間の投資で形成された生産能力が、徐々に生産期に入っていくに伴い、生産能力及び総供給が更に拡大する。他方、総需要、とりわけ外需の伸びが不確実な情況のもとで、一部の産業は、生産能力の過剰や有効需要の不足による制約に直面する。

しかし、かなり多くの人が、いわゆる投資減速のシグナルを認めようとしない。彼らは、第11次5ヵ年計画の実施に伴い、新たなサイクルの大規模投資が始まると考えている。フランス・パリ銀行駐北京エコノミストである陳興動の見解は次のとおりである:“2008年に中国でオリンピックが開催され、同年に党の第17次全国代表大会も開催される:2009年は政府の新任期である:2010年には上海で世界博覧会が開催される。中国は策を講じて経済成長の速度を調整し、2006年において成長のテンポを緩和させるが、2007年下半期において回復が始まり、2008年には繁栄の様相とともに世界各地の人々を迎える”。多くの人々がこの考え方を受け入れることを望む。彼らは、現在から2008年にかけて、投資が一時的に下落する可能性があるが、政府がこの下落が行き過ぎであり、マクロ経済が不景気であると認識すれば、政府は直ちに公共投資を増加させ、新たなサイクルのインフラ投資を開始し、経済を改めて加速させるであろうと考えている。

政府が公共投資を増加させ、新たなサイクルのインフラ投資を開始してよいのは当然のことである。しかし、政府による大規模な投資の効果は、決して人々が望むようなものではない。過去において、我々は既に痛い教訓を得ている。それは、政府の投資が低レベルの重複投資と化し、大量の資金の浪費をもたらし、最終的に大量の不良債権を形成した。アジア金融危機に対処するため、1998年を皮切りに、政府は大量の公共投資を行って中国経済を再起させようとした。このため、中央政府の財政赤字は、1997年の560億元から2002年の3000億元余りへと急増した。2005年における中国人民銀行、銀監会の報告によると、2004年12月末時点における国有四大銀行の不良債権の累計額は3兆2654億元であった。中国人民銀行が2000年5月から2004年11月にかけ、7回に渡って2兆2250億元の資本注入を行っており、その不良債権額は、貯蓄額の24.8%を占めた。

権力及び権力資本が、監督及び制約を受けることが難しい体制の下で、大量の負債をもって支えた公共プロジェクトは次のことを意味していた:権力を擁する少数の腐敗官僚が、全国民の将来(貯蓄、国債、株式等)を前借りして使い込んでいる。社会では、既に次のような呼び声が上がっている:改革開放で、億万の下層民衆が二十余年間努力し、創造して蓄積した資産は、全て政府の国庫の中で、官僚特権階級が見境なく呑み込んでいった。腐敗のもたらした結果、すなわち、こうした政府の投資は、最終的に、如何にして消化されるのであろうか?それはエコノミストである謝国忠が警告したとおりである:こうした投資は、最終的には輸出を通じてのみ消化しうる。しかし、輸出においては、既に問題が山積している。

世界経済の予測グループである“Experian”の主任グローバル・エコノミストであるダッタ博士は次のように述べている:“中国の壮観な経済変革は、一部の深刻かつ潜在的な欠陥及び政策的苦境を隠蔽するリスクを冒している。中国における投資ブームの冷却について、これを大きく救ういかなる可能性も存在しない。経済の減速による財政システムの表面的な弱点、及び人民元の大幅な切り上げが避け難いこと、あるいはインフレを通じて切り上げを迫られることによって、このリスクを消去するための満足な選択肢は非常に少ない”。

二.輸出

輸出は、中国経済の重要な支柱である。政府の数字によると、現在の中国の貿易依存度は既に約70%に達しているが、輸出市場もまた問題に直面している。2005年の貿易黒字は1000億ドル~1200億ドルになると推計されているが、04年の貿易黒字はわずか320億ドルであった。世界第一の鉄鋼輸入国であった中国は、04年において1500万トンの純輸入であったが、05年の推計は、約500万トン~800万トンの純輸出であった。機械・電気、紡績製品やエネルギー高消耗型の製品においても同様の情況が発生している。05年1月から同年8月にかけて、機械・電気の輸出は、前年同期比で33%増加したが、輸入の増加はわずか10.8%であった。貿易黒字の激増が意味していることは、中国の経済成長が、過去数年間のいかなる時期に比べても外需に依存しているということである。

先に述べた無節制な投資、盲目的な拡大再生産は、既に中国を生産過剰の危機に直面させている。コークス、アルミニウム、ガラス、鉄鋼、自動車、携帯電話、一部の紡績製品、化学製品等においては、供給過剰の情況が鮮明になっており、石炭、電力等の産業においては、これが既に顕在化し始めている。供給過剰が、その過剰生産能力を国際市場に移転するのは必然的で、これによって貿易黒字の大幅な増加がもたらされることとなる。今年(05年)上半期における貿易黒字は、GDPの4.9%を占め、改革開廟xun_ネ来の最高水準となった。国内で大量の過剰となった様々な製品が海外にあふれ出て市場を求めたこと、これが貿易黒字の激増をもたらした主要な原因である。

企業は現在、生産能力の過剰、コストの上昇、利潤の減少、競争の激化及び貿易障壁といった多重の圧力に直面している。米国、EU及び南米の貿易障壁が、中国企業に損失をもたらしている。世界の石油価格及び原材料の上昇は、輸出企業の生産コストを更に引き上げ、人民元の切り上げは、輸出企業が利潤を上げる余地を更に狭くしている。郎咸平教授によると、中国製造業の利潤率は、平均で5%しかないことから、人民元を5%切り上げるだけで、輸出関連企業の利潤が全て失われ、5%切り下げられた場合、輸入関連企業の利潤が全て失われる。ノーベル経済学賞受賞者は、人民元の切り上げは次の効果をもたらすと指摘している:外国直接投資の減少、経済成長率の大幅な下落、銀行の不良債権問題の深刻化、失業率の上昇、農村におけるインフレ圧力の大幅な増加などである。

輸出企業の競争優位は弱まりつつある。低廉な労働力を無限に供給することが中国輸出企業の主要な競争優位であった。しかし、一部の国家(例えば、インド)はこれによって利益を得ている。一部の国々は、中国と発展レベルが同じインドを援助しているが、その意図は、中国の労働力の低廉性の優位を発揮させないことである。また、中国の労働力には、構造的な不足が発生している。中国東南沿海の発展地区の“民工荒(労働力不足の意)”は、既に内地に蔓延し始めており、内地で多くの労働力を輸出していた一部の省においても、局部的に“民工荒”が出現し始めている。労働力不足は、中国の農村において現在発生している重大な変化である。国務院発展研究センター農村部の韓俊部長は、彼が実施した調査研究において、全国20%の農村においては余剰労働力が全くなく、中部地区の多くの村では、16~25歳の青壮年がますます減少していると述べている。

我々の輸出製品の大部分は低付加価値の製品であり、核心的な競争力に欠けている。中国社会科学院の研究によると、1978年から1998年にかけて、中国が20年間持続させてきた高成長において、資本の貢献率は28%、技術進歩及び効率の向上による貢献率は3%で、その他は全て労働力による貢献であった。中国経済の競争力の核心は、人口が多いこと、潜在的な巨大消費力及び低廉な労働力であった。技術面において、我々は真に核心となる競争力を全く形成していない。一部の低付加価値製品を除いて、“中国製造(Made in China)”の大部分は、組立加工業に留まっている。自動車、PC、携帯電話の核心技術は、全て外国人の手中にある。中国製造業の科学技術の水準は、多くの分野において世界との格差は全く縮小しておらず、特に、情報産業、精密機器、バイオテクノロジー等の重要な分野では格差が拡大しており、産業価値の約90%が、中国の外で実現している。

我々の第一の輸出先である米国経済もまた問題に直面している。20年前、米国はまだ債権国であったが、現在は、他国に対して2.5兆ドルの債務を負っている。米国人は、稼ぐより多くのお金を遣い、貯蓄するより多くのお金を投資し、生産するより多くの消費を行う。一方、世界の他の国家はこれとは正反対であり、余剰製品を米国に輸出するとともに、余剰資金を米国に投資している。中国はまさにこのように行動している。こうした局面に潜在するリスクは、米国経済に問題が起こった場合に中国はどうするのかということである。米国経済が減速し、外国製品及び貯蓄に対する需要が弱くなった時、中国に、自己の製品を更に消費する能力はあるのだろうか?中国に、自己の貯蓄を更に消化する能力はあるのだろうか?輸出に依存した我々の成長モデルを持続することができるのだろうか?とりわけ、国際金融市場における為替レートの不確実性が増し、貿易摩擦が政治化し、知的財産権をめぐるトラブルが後を絶たない時、将来における貿易が、中国経済の持続的成長を保証することができるのだろうか?

三.消費

消費の制約要因は非常に多い。このうち、最も重要なのは、社会保障、住民の収入及び資産の水準である。我が国の社会保障体系は整っておらず、住居、医療及び子供の教育サービスは、住民に深刻な負担をもたらしている。個人消費者は、必ず年金、病気、子供の教育問題に直面し、水、電気、暖房等の公益事業及びサービスの価格が上昇する可能性を受け入れなければならない。このため、消費者のマインドは高貯蓄、低消費となり、住民の貯蓄率は高止まりしており、現在既に46%にまで上昇している。一方、世界の先進7カ国の平均貯蓄率はわずか6.4%である。

経済学において、一国の貯蓄は、生産物のうち、当期において消費されなかった部分である。誰にも明らかなように、消費を拡大し、内需を更に刺激しようとする場合、その長期の計は、政府投資で経済を牽引する成長モデルを変更するのと同時に、財政政策の方向を変更し、“建設財政”ではなく、“公共財政”をもって消費を刺激することである。先ず整った社会保障体系を構築し、構造的な問題を解決することができなければ、住民の“謹慎型”貯蓄は変わらず、消費を刺激することは難しいからである。しかし、現実として、我が国の労働者80%以上に基本養老年金保険がなく、都市・農村の住民の85%以上に医療保険がない。

数字によると、05年9月末における我が国の住民貯蓄は、前年同期比で約20%増加した。2005年8月中下旬、中国人民銀行は、全国50の大、中、小都市で都市預金者のアンケート調査を実施した。その結果、都市住民の貯蓄意欲が強まっており、消費意欲が下落していることが分かった。“更に多く貯蓄する”が最も合理的であるとした住民は37.9%で、前年同期に比べて4.5%増加した。住民の貯蓄が高い伸びを示していることの深層にある原因は、予想支出と予想収入の不確実性であり、これが住民の予備的貯蓄動機を強化している。

国内において、分譲住宅や家庭用品は住民消費の中でほぼ最大の部分を占める。しかし、住宅に係る消費は、住民の消費能力を超過している。住宅を購入した人の大部分は、ディベロッパーと銀行の“苦力”となり、彼の世代、ひいては次の世代のお金は、分譲住宅に呑み込まれてしまう。中国の住宅は、世界で最も安い労働力によって建設したものであり、建材も、相対的に安いものを使用している。しかし、中国における分譲住宅の価格は、米国のような先進国と比べても、決して低いとはいえない。高価格と巨額の返済圧力のために、住民はその他の消費支出を減額せざるを得ない。しかし、更に不安なことに、消費の支柱であった住宅消費に対する需要も下落を始めており、不動産の購入に対する需要、居住条件を改善するための需要、引っ越し・建て替えの需要、資産価値の保持及びリスクに備えるための需要、中長期的な投資需要の全てが下落を始めている。将来の住宅需要が、社会における巨大な生産を吸収できないことから、かりに、05年において不動産に抑制が見られなくとも、06年、07年)においても供給超過の局面が出現し、深刻な過剰供給によって、住宅価格は、不可逆的に下落を続けることとなる。

住民収入の格差の拡大は、住民消費に力がないこと、内需が不振であることのもう一つの重要な原因である。資産が少数者の手中に集中することは、内需の拡大に全く有利ではない。貧富の格差が更に拡大し、収入の伸びが緩慢であるという前提の下で、大多数の民衆の消費の向上を実現することは容易ではない。現在、大多数の民衆の収入レベルは低く、支出能力は十分ではないが、最大の問題は、国内の資産配分の二極分化にある。こういた資産の二極分化は、市場経済がもたらしたものでは決してなく、経済制度の転換における欠陥がもたらした結果である。一国の少数者が。現行制度の欠陥を通じて社会の大量、あるいは絶対多数の資産を占有するとき、社会全体の内需拡大は非常に困難なものとなる。需要を持つ絶対多数の者に、需要に見合った支出能力がないことから、潜在的な需要を実現することはできない。他方、支出能力のある者は、かえって需要が過剰であり、この個人の潜在的な消費を再拡大することはできない。機会の平等がない社会にあっては、社会の公平性ばかりか、個人の収入レベルを向上させる公平性もまた存在しない。こうした情況の下では、社会における資産は、おそらく少数者に集中し、絶対多数の者の消費を拡大することはできない。

以上の分析から見えてくるのは、投資、輸出、消費の全てに懸念すべき問題が存在するということである。我々は次の教訓を記憶しておかなければならない。90年代中旬のアジア金融危機は、15年の長きに渡る高成長の後に発生したものであり、経済の強靭な成長が、潜在的な問題を隠し続けてきたのである。更に高い待遇の要求、更に高い技術の要求、更に多くの貿易障壁、更に多くの為替問題、更に高いエネルギー消費、更に大きな貧富の格差、更に大きな不動産に係るコスト及び汚染された環境・・・では、更に大きな成長能力の源泉は何処にあるというのだろうか?

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