運動がパーキンソン病の進行を遅らせる可能性

徐さんは最近、歩行時のふらつきや、動作に「ガクガク」とした違和感を感じるようになりました。その後、パーキンソン病と診断されました。医師が少量の薬を処方したところ症状は改善しましたが、動作にはまだある程度の違和感が残っていました。

医師は、薬の用量を増やす方法もあるものの、パーキンソン病では長期的な服薬が必要で、一度増やすと減らすのが非常に難しいと説明しました。代替案として筋力トレーニングを提案したところ、徐さんは後者を選びました。3か月間、定期的に運動、特に安定性を高めるコアトレーニングを続け、食事調整も組み合わせた結果、薬の用量を増やさずに症状が改善しました。

フォローアップの診察で、彼は「今は全く問題なく歩けます」と語りました。

台中長安病院神経内科主任の陳慧萱医師は、新唐人の番組「健康 1+1」でこの症例を紹介しました。これは、薬物療法に加えて、運動や栄養などの非薬物的な調整が、パーキンソン病治療において同じように重要であることを示しています。
 

運動が神経機能を改善する

パーキンソン病は、脳内のドーパミン産生ニューロンの変性によって引き起こされ、運動機能、協調性、バランスが徐々に損なわれます。しかし、運動が残存する神経回路をより効率的に活用する助けになるという証拠が増えています。

このため、特に筋力トレーニングが重要です。2020年の臨床試験では、軽度から中等度のパーキンソン病患者が週2回の漸進的レジスタンストレーニングを9週間行った結果、動作緩慢――同疾患の特徴的な症状の一つ――が有意に改善し、歩行速度、移動能力、椅子からの立ち上がり動作も向上しました。研究者たちは、筋力の測定値はほとんど変わらなかったにもかかわらず改善が見られたことから、運動は筋力だけでなく、運動制御と神経効率も向上させる可能性があると指摘しています。

動作緩慢はパーキンソン病で最も障害となる特徴の一つで、歩行、方向転換、椅子からの立ち上がり、手の使用など、あらゆる動作に影響します。これらの機能を改善することで、自立した生活がしやすくなり、転倒リスクの低下にもつながります。

さらに別の研究では、運動が脳のレベルでより深く疾患に影響を与える可能性が示唆されています。陳医師が引用した2024年の研究では、早期パーキンソン病患者が6か月間の高強度インターバルトレーニングを行った結果、運動機能の低下を防ぐだけでなく、軽度の改善も見られ、運動がドーパミン関連機能の維持を助ける兆候が認められました。

これらの結果を総合すると、運動は日常動作を改善するだけでなく、残存するドーパミン産生ニューロンの機能維持を助けるなど、パーキンソン病患者に複数の利益をもたらす可能性があることが示唆されます。

陳医師は「運動は個人に合わせ、安全を最優先に」と強調します。患者は激しい運動をする必要はありません。速歩や有酸素運動から始め、徐々にコアトレーニングを加えていくような、段階的で多様なアプローチでも効果が期待できます。

陳医師は、もう一つの症例も紹介しました。中期パーキンソン病の林さんは長年病と向き合い、さまざまな薬を試しましたが、疲労感が頻繁にありました。疲労はパーキンソン病患者によく見られ、薬だけでは緩和しにくい症状です。

林さんは高齢者治療を専門とするフィットネスコーチと理学療法士に相談し、段階的な筋力トレーニングプログラムを受けました。また、消化・吸収が悪かったため、経口栄養補給に加えて点滴による栄養補給も行いました。運動と栄養調整の結果、筋力と移動能力の両方が向上しました。
 

運動以外にできること

運動はパーキンソン病ケアにおける最も強力な手段の一つですが、それだけではありません。陳医師によると、運動に加えて、栄養や生活習慣のサポートを組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。

栄養面での一つの目標は、ドーパミンの産生を支えることです。陳医師は、ドーパミンの前駆物質であるチロシンが、鶏肉、魚、卵、乳製品に多く含まれていると指摘します。菜食主義者は、かぼちゃやごまなどの種実類、豆類、キヌア、オート麦から摂取できます。

また、ビタミンC、ビタミンB群、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのビタミンやミネラルを補うことで、ドーパミンの分泌や伝達をサポートできる可能性があります。

パーキンソン病患者にとって、食事は非常に重要です。研究では、腸の健康とパーキンソン病の関連が指摘されています。腸は迷走神経、免疫シグナル、微生物代謝物を通じて中枢神経系に影響を与えます。腸に慢性炎症や透過性亢進が生じると、全身性の炎症反応が引き起こされ、脳内の神経炎症や損傷を促進する可能性があります。

陳医師は、腸と脳の間に「腸脳軸」と呼ばれる密接な双方向のコミュニケーションシステムがあると説明します。腸が炎症を起こすと腸の透過性が変化し、毒素が血流に入りやすくなり、全身を巡りやすくなります。

腸は異常タンパク質を産生し、それが迷走神経を通じて脳に直接運ばれる可能性もあります。迷走神経は腸と脳を高速道路のように結んでいます。そのため、脳と腸の両方で同じ異常タンパク質の蓄積が見られることがあります。

腸と脳の炎症を防ぐため、陳医師はブルーベリー、野菜、クルクミン、オメガ3などの抗炎症性の食品を増やし、高脂肪食品や精製デンプンなどの炎症を促進しやすい食品を避けることを推奨しています。

また、体内の「発電所」であるミトコンドリアの機能異常も、パーキンソン病を引き起こす可能性があると陳医師は指摘します。ミトコンドリアを守るためには、有害物質への曝露を避け、慢性疾患を管理し、不必要な薬を減らし、健康的な食事、生活習慣、精神的なウェルビーイングを維持することが重要です。

陳医師はさらに、良好な人間関係と社会活動を維持することを勧めています。これらは社会的つながりを強め、前向きな気分を促します。また、規則正しい生活習慣と十分な睡眠も重要です。こうした前向きな要因は脳の健康と安定を促し、急速な脳の退化を防ぎ、患者の生活の質を維持する助けになります。
 

症状が出たらすぐに受診を

陳医師は、パーキンソン病の症状に注意し、何らかの異常を感じたらすぐに医療機関を受診するよう呼びかけています。

パーキンソン病の主な兆候と症状は以下の通りです。

・動作緩慢:手先の器用さが低下する、字が徐々に小さくなる、歩行が遅くなり小刻みになる。

・筋強剛:手足のこわばりや可動域の減少を感じる。

・じっとしているときの震え:通常、手足、特に手や指から始まるリズミカルな震え。

・姿勢不安定:バランスが悪くなり、病気の進行とともに転倒リスクが高まる。

薬剤性、血管性、脳病変による二次性パーキンソン病の場合は、早期治療で良好な結果が得られ、症状が改善したり逆転したりすることもあります。一方、一次性パーキンソン病は完治しませんが、進行速度を遅らせることは可能です。

(翻訳編集 日比野真吾)

Ben Lam
英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。