(大紀元)

横浜市議会 不正な臓器取引防止を求める陳情を採択

横浜市議会は令和7年9月25日、臓器移植をめぐる不正取引や移植目的の渡航防止を求める陳情は「趣旨に沿う」と採択した。

陳情書は「臓器移植に関わる不正な臓器取引や移植目的の渡航等を防止し、国民が知らずに犯罪に巻き込まれることを防ぐための環境整備等を求める意見書提出の陳情」は一般社団法人「中国における臓器移植を考える会」(代表・丸山治章)が同年5月30日に横浜市で提出した。これに対し9月25日市議会本会議において、「趣旨に沿う」として採択された。

意見書(案)には以下のように記された。

現在、日本には渡航移植を制限する法律が存在せず、臓器提供の透明性を確保する登録制度も未整備である。これにより、移植ツーリズムを防止する環境整備や適切な臓器移植の啓発活動の強化が急務となっている。よって横浜市議会は、国会及び政府に対し、臓器移植に関わる不正な臓器取引、移植目的の渡航等を防止し、国民が知らずに犯罪に巻き込まれることを防ぐため、環境整備に早急に取り組むことを強く求める。

 

現在、世界では移植用臓器の不足を背景に、不正な臓器取引や移植目的の渡航が深刻化しており、人権侵害や医療倫理の危機に直面している。

この歴史をみても類を見ない邪悪な犯罪「強制生体臓器収奪」はもともと2006年、カナダの弁護士デービッド・マタス氏とカナダの元国務長官デービッド・キルガー氏が、中国共産党政府が法輪功学習者に対して強制的に臓器を収奪し、売買しているとの報告書が出されて、明るみに出た。

臓器を収奪された人は殺害され、闇に葬られるため、その人数は不明だ。しかしデービッド・マタス氏らは、法輪功の弾圧が始まってから、臓器移植数は異常な伸びを見せ、中国国内での臓器移植業界の活況からその人数は膨大な数に上ると指摘している。

こうした状況に国際社会は反応し、2008年に、「人の臓器の取引や臓器摘出のための人身取引は禁止され、犯罪とされるべきである」「各国政府や医療従事者は自国住民の移植ツーリズムへの関与を予防、阻止する方策を実行すべきである」等とする「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言」の声明を発表。

それを受け、2008 年のイスラエルを筆頭に、スペイン、イタリア、台湾、カナダ、ベルギー、イギリス、オーストラリが臓器移植に関する法律の制定や法改正を行った。

国際社会は、不正な臓器取引や移植目的の渡航について、深刻な人道問題及び医療倫理上の問題として、国民の生命の問題として認識し、その問題解決に向けて具体的な行動を強めている。

しかしこれほどの非人道的な犯罪でありながら、現状、日本では未だ多くの日本人が対岸の出来事としてとらえている。しかし気づかないうちに、日本人は中国共産党の国家ぐるみの犯罪に巻き込まれている。

公益社団法人日本臓器移植ネットワークによると、現在、日本国内では約 1万6500 人もの人が移植を希望し登録しているが、臓器提供は年間で約 100 件程度であり、圧倒的なドナー不足が大きな課題となっている。

移植臓器は、移植者に適合する臓器でなければ使用できず、多くは適合しやすい近親者による生体臓器移植が多い。心臓などはドナーが脳死にならなければ移植できないため、非常に入手困難な状況となっており、適合臓器が発見される前に死亡するケースも少なくない。

今回だされた陳情書によると、海外での臓器移植を求め渡航する人は後を絶たず、2023 年に発表された厚生労働省の調査では、海外での臓器移植手術後、国内の医療機関に通院している患者は、2023 年 3 月末時点で 543人だった。そのうち中国への渡航移植者は175人である。

こうした日本国内での慢性的な移植臓器不足につけこんで、臓器提供元のはっきりしない斡旋を行っている事業者がある。実際、海外での臓器移植を希望する患者に対し、国の許可を受けずに臓器提供を斡旋したとして、2023年11月NPO 法人の理事が実刑判決を受けた。

また斡旋団体へ何千万円もの渡航移植費用を支払ったにも関わらず、海外の稚拙な医療施設での手術の後、間もなく死亡したケースも複数報告されている。その他、海外で臓器移植手術を受けて患者が帰国しても、「臓器売買や移植ツーリズムに関与しない」として、診療を拒否した病院が損害賠償を求め提訴されるなど、医療関係者がいきなり訴訟されるリスクを背負うこともある。

日本移植学会、日本臨床腎移植学会、日本内科学会、日本腎臓学会、日本透析医学会が、2022 年 4 月に、「移植の恩恵は、非倫理的行為や搾取的な行為に依存することなく」「必要とする人々に分配されなければならない」等とする「イスタンブール宣言 2018 5 学会共同声明」を表明しているが、それに対応する環境整備は不十分で、国際的な潮流に後れをとっている。

今回の横浜市議会の採択は、日本の違法な海外渡航臓器移植の犯罪に日本人が巻き込まれない施策として大きな一歩となっている。

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