子どもが10歳になる頃には、すでに自殺のリスクが2倍、場合によっては3倍に高まる道を歩み始めている可能性があります。
新たに「JAMA Network Open」に掲載された縦断研究は、スマホやビデオゲーム、ソーシャルメディアを強迫的に使用する若者は、思春期初期に自殺念慮(自殺を考えること)や感情的苦痛のリスクが著しく高まることを明らかにしました。
「最も重要なポイントは、青少年をリスクにさらすのはスクリーンタイムの長さではなく、どのようにスクリーンを使うかという点です」と、筆頭著者でワイル・コーネル医科大学助教授のユンユ・シャオ氏は エポックタイムズ へのメールで語りました。
スマホと離れると不安になったり、アプリの使用をやめられなかったり、気晴らしとしてスクリーンに頼ったりする子どもは、スクリーンを強迫的に使用する傾向が高く、その後のメンタルヘルス問題を予測できました。
「これにより、スクリーンにどれだけさらされるかという懸念から、依存的な使い方に焦点を当てた議論に移ることになります」とシャオ氏は述べています。
リスクと早期の警告サイン
この研究は、米国史上最大の長期的な脳発達研究とされる「思春期の脳認知発達研究」の一環として、4年以上にわたり4,200人以上の子どもを追跡しました。
これまでの研究がスクリーンタイムの総量を重視していたのに対し、今回の研究は「依存的使用のパターン」を分析しました。これは、時間の経過とともに強まる強迫性、感情的依存、スクリーンから離れにくくなる傾向を指し、このパターンがスクリーンタイムの長さよりも自殺リスクを予測する上で有効であることが分かりました。
研究では、子どもたちは「スマホが使えないと気分が悪くなる」「気分が落ち込むとき、ソーシャルメディアを使って気分を良くする」といった文に回答しました。
その回答に基づき、研究者たちは子どもたちを「低リスク」「リスク増加中」「高リスク」のパターンに分類し、スクリーン習慣やデバイスへの感情的依存の変化を追跡しました。
約半数が、10歳頃からすでに高い、または増加傾向にあるスクリーン依存の兆候を示していました。
14歳になるまでに、約3人に1人が強迫的なソーシャルメディア使用のパターンを示し、約4人に1人がスマホでも同様の行動を示しました。これらの子どもは、依存度が低い子どもに比べ、自殺念慮や自殺行動を報告する可能性が最大2.4倍高いことが分かりました。
思春期初期には、30%以上の子どもが低リスクから高リスクのパターンへ移行しており、その多くは深刻な結果を伴いました。
「驚いたのは、総スクリーンタイムと自殺やメンタルヘルスの結果との間に関連が見られなかったことです」とシャオ氏は述べました。「対照的に、強迫性の高い、あるいは増加する依存の軌跡は、自殺行動や自殺念慮のリスクを2〜3倍に高める関連がありました」
また、女の子は男の子よりもソーシャルメディアの問題行動を示しやすく、男の子は逆にビデオゲームに依存する傾向が強いことも分かりました。
自殺リスクにとどまらず、依存的使用は感情的・行動的症状とも関連していました。ソーシャルメディアの使用は不安やうつ、攻撃性やいら立ちと関連していました。ビデオゲーム依存は、悲しみや引きこもり、持続的な低気分との関連が強いことが示されました。
研究はこれらの関連の仕組みまでは調べていませんが、感情的に苦しむ子どもがスクリーンに頼る一方で、強迫的使用が健全な感情処理を妨げ、苦しみを悪化させる可能性があると示唆されています。
この研究に関与していない公認心理療法士トーマス・カースティング氏はエポックタイムズに、こうした症状は単なる気分のむら以上の形で家庭で現れることが多いと語りました。カースティング氏はデジタル依存の10代を支援しており、『ディスコネクテッド:デバイス依存の有害な影響から子どもを守る方法』の著者です。
「もし子どもがデバイスを取り上げられたときに攻撃的、あるいは爆発的になるなら、それは単なる態度の問題ではなく、禁断症状(依存の離脱症状)です」と彼は話します。「それは、スクリーンとの関係が感情的に不健康になりつつある最初期の警告サインの一つです」
すべてのスクリーンタイムが同じではない
この研究は、スクリーンの使用時間よりも、子どもがどのようにスクリーンと関わるかが重要であることを示しました。
とはいえ、スクリーンタイムが無害というわけではありません。使いすぎは、睡眠や運動、対面での交流といった重要な活動を奪う可能性があります。多くのプラットフォームは利用時間を最大化するよう設計されており、やめるのが難しい仕組みになっています。
児童精神科医のヴィクトリア・ダンクリー医師はエポックタイムズへのメールで、高いスクリーンタイムと強迫的な使用はしばしば併発し、どちらも感情的な脆弱性を高めると述べています。
「スクリーンに引き寄せられ、なかなかやめられない子どもはリスクが高いのです」とダンクリー氏は話します。「『普通の』使い方であっても、スクリーンに関連する気分や行動の問題はますます一般的になっています。そして、スクリーン使用を減らすと全体的に改善が見られます」
さらにダンクリー氏によれば、特にソーシャルメディアやビデオゲームのようなインタラクティブなスクリーンタイムは、報酬系を鈍感にし、体内時計を乱し、慢性的な闘争・逃走反応(ストレス反応)を引き起こして神経系を過剰に刺激し、不安定にする可能性があります。
「こうしたプラットフォームの多くは、発達上の弱点や人間の進化的本能につけ込むように作られています。ですから、アプリが脳をハイジャックするように設計されているのに、10代やさらに幼い子どもに『自分で使用をコントロールしなさい』と期待するのは理にかなっていません」とダンクリー氏は述べました。
親が注意すべきサイン
シャオ氏は、保護者に次のように問いかけることを勧めています。
- 子どもが現実の活動や人間関係から引きこもっていないか?
- デバイスから切り離されると苦しんでいないか?
- やめたい気持ちがあっても、やめるのに苦労していないか?
カースティング氏も、デバイス使用に伴う突然のいら立ちや感情の不安定さは警戒すべきだと強調します。
「普段は穏やかな子が、スマホやゲームを取り上げると突然ハルクのように怒り出すなら、それは赤信号です」と彼は言います。「私は、子どもが叫び、暴言を吐き、時には手を出すのも見てきました」
また、家族から距離を置き、悲しみや孤立の兆候を見せることもあります。そうしたパターンが現れたら、行動を起こすべき時です、とカースティング氏は話します。
「親として立ち上がり、ルールを設け、夜は寝室にデバイスを持ち込ませず、子どもを共用スペースに戻すべきです」と彼は述べています。
システムをリセットする
ダンクリー氏は、スクリーンの使いすぎは感情的問題を悪化させ、それを切り離して扱うことはできないと述べています。
「私の経験では、スクリーン習慣に取り組まずにメンタルヘルスの問題に対処するのは非常に難しいです」と彼女は言います。
また、親はスクリーンが神経系、特に気分・睡眠・注意にどのように影響するかを学ぶべきだと勧めています。深刻な場合は3〜4週間の「スクリーン断ち」を行い、感情調整や行動をリセットすることを提案しています。
「単に時間を減らすだけでは、依存している子どもには効果がないことが多いのです」とダンクリー氏は言います。
完全に休むことで神経系が再調整され、より創造的で社交的、活動的な遊びに戻れることが多いです。
専門家たちは、最終的な目標はスクリーンを排除することではなく、より健康的な習慣を築くことだという点で一致しています。
家族へのヒント
- 食事中や就寝前はスクリーンを使わない。
- 毎日オフラインの活動を促す。
- オンラインでの体験について定期的に話す。
- 大人自身がバランスや境界を示す。
「子どもがスマホをどれくらい使っているかだけに注目するのではなく、その使い方が子どもの健康、関係性、日常生活にどのような影響を与えているかに目を向けてください」とシャオ氏は話しています。
(翻訳編集 井田千景)
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