長時間じっと座っていることは、健康にとって大敵です。4つのシンプルな動作で経絡をスムーズにし、座りすぎによる疲労や痛みを軽減し、慢性病の予防にもつながります。
中医学では、経絡は体内のエネルギーが流れる通路であり、長時間動かないでいるとこの経絡が詰まりやすくなると考えられています。現代の科学研究でも、座りっぱなしは認知症、脂肪肝、性機能障害、首の痛みなど、さまざまな慢性疾患の原因になることがわかっています。
長時間座ることが多い学生や会社員、高齢者に向けて、中医師の呉建東氏は以下のいくつかの動作を勧めています。
両手で天を支える動作
この動作は、中国の健康体操「八段錦」に由来し、少なくとも800年の歴史があります。
やり方:両手のひらを上に向け、指先を向かい合わせにして、腹部から上へ持ち上げます。胸の前で手のひらを返し、頭の上まで伸ばし、腕をまっすぐにして「両手で天を支える」形にします。その後、両側からゆっくりと腕を下ろします。呼吸を合わせるのがポイントで、腹部から手を持ち上げるときに吸い、胸の前で手のひらを返すときに吐き、さらに上へ伸ばすときにもう一度吸い、最後に腕を下ろすときに吐きます。この動作により、上半身の緊張した胸や背中の筋肉がほぐれます。
足の内外をなでる動作
この動作は「五禽の戯」という運動法に由来し、1800年前に名医・華佗が考案したと伝えられています。
やり方:椅子に座り、両手で太ももから足の外側に沿って足裏までなで、今度は足の内側を通って太ももまで戻します。この動作は下半身の血行を促進し、長時間座る人に多いむくみや静脈瘤の予防に効果があります。
馬歩またはスクワット
下半身の血流を改善するには、馬歩やスクワットといった動作がおすすめです。
馬歩は武術の基本動作の一つで、筋力を鍛えるだけでなく、下半身の経絡、つまり肝経、脾経、腎経、胆経、胃経、膀胱経の流れを整える効果があります。
馬歩を行う際のポイント:
- 太ももが床とできるだけ平行になるようにする
- 膝がつま先より前に出ないようにする
- 膝とつま先の向きを一致させる
- 足の裏全体で地面をしっかり踏む。これを「地に三分入る」と言われています。足で地面を踏みしめるように意識すると、太ももやお尻の筋肉を使い、膝への負担が軽減されます。ただし、筋肉に力を入れすぎて硬くならないようにしてください。
馬歩のほかに、スクワットや中国古典舞踊の「大二位蹲」も同様に効果があり、行う際は同じ注意点を守るようにしましょう。
わき腹たたきで肝機能を強化する
中医学では、肝臓は体内のエネルギー循環にとって非常に重要な役割を担っていると考えられています。肝を養う最も効果的な方法は、夜11時から午前1時の間に熟睡することです。しかし、夜勤のある人でも、「五禽の戯」にある「わき腹たたき(拍脅強肝)」という動作で、肝臓周辺の気血の循環を改善することが可能です。
やり方:右手を上げて肋骨を軽く持ち上げるようにし、左手のひらを軽く開いて、肋骨の下あたり、肝臓と胆のうの位置をやさしくたたきます。力を入れすぎるとケガの原因になるので、あくまで軽くたたくのがポイントです。
経絡理論:なぜこれらの動作が効果的なのか?
経絡とは、古代中国の文献にも記されている「気血の通り道」です。呉建東氏によれば、経絡は主に筋肉と骨のすき間に存在し、体内で最も抵抗の少ない流路です。経絡がスムーズに通っていれば、内臓、皮膚、筋肉、骨までしっかり栄養が行き渡りますが、経絡が詰まってしまうと、痛み、しびれ、だるさなどが現れ、さらには病気の原因にもなります。
経絡の通りを良くするには、3つの条件が必要です:気血が十分にあること。経絡がふさがれていないこと。正しい姿勢を保つこと。猫背や圧迫などの誤った姿勢は、気血の流れを妨げる原因となります。
経絡の詰まりによる2つの初期サイン
中医学では、多くの慢性病の初期段階において、経絡の流れが滞っていることがあるとされています。早期にこの滞りに気づき、経絡の流れを整えることで、多くの病気を予防することができます。以下は、経絡の詰まりを示す代表的な2つの初期サインです。
身体の痛みやだるさ:
中医学には「通じなければ痛む(不通則痛)」という言葉があります。身体のだるさや痛みは、気血が老廃物を排出できず、栄養を運べていないことを示しています。
情緒の変化:
中医学では、さまざまな感情が各臓腑や経絡と関係していると考えます。経絡が滞ると感情にも悪影響を及ぼし、逆にストレスや憂うつなどの精神状態も経絡の流れを妨げます。たとえば、怒りっぽいのは肝経の気血が通っていない状態、恐れや不安が強いのは腎経の気血が不足している状態とされます。運動で気血の流れを良くすることで、情緒が安定し、気力も高まります。
経絡を整える方法
上述の動作以外にも、中医学では鍼灸、マッサージ、漢方薬などを用いて気血の巡りを改善します。漢方薬の中には、特定の経絡に作用して、対応する臓器の機能を強化するものがあります。また、クコの実などの食材も肝腎を補う効果があり、食事によるサポートも可能です。
セルフケアとしてのマッサージ:
呉建東氏は、手指や足指のマッサージやストレッチを日常的に行うことを勧めています。これらは経絡の始点にあたるため、刺激すると良いとされます。また彼は、効率が最もよいのは胴体の運動だと強調しています。広範囲の経絡を一度に動かすことができるからです。
年配の方には、五禽の戯などの伝統的な体操のような、緩やかな運動と栄養の補給がお勧めです。一方、若い人は「夜更かしを避ける」ことが重要です。というのも、経絡の理論では、夜11時~1時が胆経、1時~3時が肝経の最も活発な時間帯であり、この時間帯に睡眠をとることで肝胆が養われ、脳の修復にもつながるとされています。
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(翻訳編集 華山律)
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