子どもが理由もなく問題行動を起こすことはありません。時には、その行動が父親のうつ病との闘いの影響である場合もあります。
最近の研究では、子どもの幼稚園時代に父親がうつ病を抱えていると、4年生になる頃には教師がその影響を目にすることが分かりました。子どもは授業で破壊的な行動を取ったり、集中力に欠けたり、社会的に引きこもったりする傾向が見られます。
これらの結果は、父親のメンタルヘルスが子どもの発達に長期的な影響を与える可能性を強調しています。対処しなければ、その影響は家族内で世代を超えて広がるかもしれません。幸い、両親のメンタルウェルビーイングを育む方法はあり、それが安定した養育環境の促進につながります。
うつ病の父親、問題を抱える子ども
『American Journal of Preventive Medicine』に掲載された研究では、アメリカの20の主要都市から1,422家族を追跡しました。データ収集は1998~2000年に始まり、現在も進行中です。研究者は、家族構成、父親が同居しているか、両親の関係状況、母親のうつ病歴などの要因を考慮しました。
研究は、子どもの誕生直後に病院で実施されたインタビューから始まりました。その後、子どもが1歳、3歳、5歳、9歳、15歳、22歳になるタイミングで家族を追跡。父親と子どものペアに焦点を当てた分析では、子どもが5歳になるまでに父親の約4分の3は子どもと半分未満の時間しか同居しておらず、9%がうつ病の陽性と判定されました。
子どもの否定的な行動は、多動性、集中困難、議論などの反抗的行動で評価され、さらに社会的適応や感情面の課題も測定されました。
その結果、父親がうつ病と診断された子どもは、そうでない子どもより行動問題を抱える可能性が高く、議論や規則違反、落ち着きのなさが約3分の1多く見られました。また、ADHDの兆候を示す可能性も約25%高かったのです。
これらの子どもは、協力や自己制御などの社会的スキルに苦労する傾向があり、深刻な行動問題を抱える可能性はほぼ2倍に達していました。
研究主任のクリスティン・シュミッツ(Kristine Schmitz)氏は、こうした結果の背景にはいくつかのメカニズムがあると説明します。例えば、父親のうつ病は子どもへの感情的サポートを減らし、家庭内の対立やストレスを増加させ、子育てに影響を与えることがあります。これが子どもの行動問題と関連している可能性があります。
また、親のうつ病は、より厳しいまたは過干渉な子育て、あるいは家庭からの不在につながる場合もあります。今回の研究はこれらのメカニズムを直接検証してはいませんが、理解を深めることで効果的な介入策の開発につながると研究者は述べています。
以前の研究でも、母親・父親双方のうつ病が子どものメンタルヘルスに大きな影響を与えることが確認されています。特に、ジェンダーの期待から見過ごされがちな父親の感情的ウェルビーイングを軽視することは、長期的に子どもの行動や発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
波及効果は直近の家族を超える
さらに、うつ病の発症には遺伝が関与しており、家族内でよく見られます。重度うつ病の人は、親や兄弟などの一等親がうつ病を経験する可能性が2〜3倍高いことが分かっています。
「うつ病遺伝子」という単一のものは存在せず、むしろ複数の遺伝的要因が組み合わさることで、うつ病のリスクが高まると考えられています。世代間の遺伝には、生物学的な要素だけでなく環境的要因も含まれます。うつ病の親の子どもは、感情的サポートの不足、高いストレス、不安定な家庭環境にさらされる可能性があり、これらが子どものメンタルヘルスの課題のリスクを高めます。
遺伝的傾向と実際の経験が組み合わさることで、うつ病が家族内で複数世代にわたって影響を及ぼす理由を説明できます。
サイクルを打破する:介入の重要性
「母親だけでなく、父親を含む両親のうつ病を考慮する必要があります」と、シュミッツ氏は述べています。「うつ病は治療可能であり、家族全体をサポートするために、小児科医は父親とその問題について話し始め、父親のニーズに応える介入を開発するべきです」
臨床心理学者のニベディタ・ナヤク(Nivedita Nayak)氏は、父親のうつ病とその子どもへの影響を軽減するために、マインドフルな子育ての実践を提案しています。
彼女が担当したケースでは、父親の未治療のうつ病が長年イライラや怒りに隠され、認識されないまま、子育ての不備として誤解されていました。息子は成長するにつれて、感情的苦痛や反抗的な態度、社会的な困難を示すようになりました。
父親がメンタルヘルスのために療法を受け始めた後、よりマインドフルで感情的に関与する子育てスタイルを採用しました。「マインドフルな子育ては、子どもと完全に向き合い、一緒に遊んだり、本を読んだり、オープンな会話をすることなどの活動を含みます」とナヤク氏は説明しています。
この変化によって、父と子の絆は深まり、息子の行動や感情的発達が改善され、父親自身のメンタルヘルスも向上しました。
さらに、早期発見と診断は、メンタルヘルスの課題が長期化するのを防ぐために不可欠です。臨床ソーシャルワーカーでトラウマセラピストのエステファナ・ジョンソン(Estefana Johnson)氏は、男性が女性の半分の割合しかメンタルヘルス支援を求めない理由について、スティグマや「男らしさ」に関する文化的見方、そして男性のうつ病の現れ方への誤解が影響していると述べています。男性のうつ病は、典型的な「悲しみ」ではなく、怒りや引きこもり、イライラとして現れることが多いそうです。
また、セラピストのレベッカ・パーカー(Rebecka Parker)氏は、父親の定期的なメンタルヘルススクリーニングを提唱しています。父親を小児科や産前訪問に含めることで、うつ病の兆候を早期かつ容易に発見できるとしています。
家族全体を対象とした包括的なヘルスケアや、有給の父親休暇を支援する政策は、父親が子どもと絆を築くための時間と空間を確保し、ストレスを軽減し、メンタルヘルスの問題が深刻化する前に防ぐ助けになります。
家族において両親と子どもを支援することは、より健全な家庭環境を促し、世代を超えて続くメンタルヘルスの課題の連鎖を断ち切ることにつながります。
(翻訳編集 日比野真吾)
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