【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

最新レビュー うつに効果が期待できる市販サプリ5種

ステイシー・スティーブンス(Stacey Stevens)さんは長年にわたり、「皮膚からジッパーを開けたい」と表現するほどの閉塞感――この世に存在したくないほどの深い絶望――に苦しめられてきました。彼女のうつ状態を改善したのは、精神科の診察室や処方薬ではなく、プロバイオティクスというサプリメントでした。

「ここにいたくなかった。どこにも行きたくなかったし、誰とも話したくなかった」と彼女はエポックタイムズに当時の心境を語りました。「絶望に包まれて、真っ暗で、自分自身が本当に嫌いでした。とてもつらい状態でした」

スティーブンスさんの体験は、決して特別なものではありません。多くの人が、うつ症状に対して身近な方法を求めており、それには正当な理由があります。

2万5000件以上の研究を分析した結果、研究者たちは、アメリカの成人約2100万人に影響を与えている、最も一般的なメンタルヘルスの問題のひとつに対し、処方薬と同等の効果が期待できる5つの市販製品を特定しました。
 

自然なうつ病治療の背後にある科学

『Frontiers in Pharmacology』に掲載された系統的レビューでは、64種類の製品に関する臨床的証拠を分析・分類し、そのうち5つは非常に効果的であり、他にも有望な製品が多数あると結論づけられました。研究者は、2万5000件以上の文献の中から、18~60歳の成人が1週間以上にわたって製品を摂取し、うつ症状に対する効果を検証した209件の臨床試験に焦点を当てました。

このレビューの目的は、特にソーシャルメディア上で、一部の研究成果が誇張されて拡散されやすい現状の中で、ハーブ療法に関する「事実」と「誤情報」を消費者が見分けやすくすることにあります。筆頭著者であるリバプール・ジョン・ムーア大学の主任講師、レイチェル・フロスト(Rachael Frost)氏は、次のように述べています。

「どの製品に科学的な裏付けがあるのか、どれにある程度の信頼を置けるのか、そして今後の研究が注力すべき領域はどこなのか――それらを明確にし、市場に出回っている製品の全体像を整理することが目標でした」と彼女はエポックタイムズに語りました。
 

製品の全体像

科学的に実質的な証拠があるとされた製品は、オメガ3、セントジョンズワート、プロバイオティクス、サフラン、ビタミンDの5つです。セントジョンズワートとサフランはプラセボを上回り、処方抗うつ薬と同等の効果を示しました。プロバイオティクスとビタミンDも、プラセボより抑うつ症状を軽減する可能性が高いとされました。

1. セントジョンズワート

最も一般的に研究されているハーブ製品であるセントジョンズワートは、うつ病と診断された人々に使用され、また診断のない人に対しては単独療法として使用されました。

26件の試験でプラセボと比較され、10件の試験では抗うつ薬と比較、1件では低用量のセントジョンズワートと比較されました。結果として、セントジョンズワートは抗うつ薬と同等、あるいはそれ以上の効果を示しました。

ただし、セントジョンズワートは経口避妊薬、がん治療薬、スタチン剤、一部の免疫抑制薬などの効果を低下させる可能性があります。また、抗うつ薬と併用すると、体内でセロトニンが過剰に蓄積され、危険な状態になる恐れがあります。

2. サフラン

14件の試験ではうつ病と診断された人を対象とし、4件の試験では抑うつ症状を持つ人を対象としました。サフラン製品は主にプラセボとの比較で評価され、単独療法として使用されました。

さまざまな抽出物が用いられ、試験対象には心血管疾患、産後、更年期、2型糖尿病などの併存疾患を持つ人が含まれていました。8件の試験でプラセボよりも良好な結果が得られ、6件の試験ではサフランが処方薬よりも優れた効果を示しました。

3. プロバイオティクス

プロバイオティクスに関する16件の試験のうち、13件は複数の菌株を対象としました。すべての試験はプラセボとの比較で実施されました。8件はうつ病と診断された人、8件は抑うつ症状のある人を対象としています。

5件の研究では併存疾患を持つ人が対象で、6件では抗うつ療法の補助としてプロバイオティクスが使用されました。

4. ビタミンD

ビタミンDに関する14件の試験のうち、8件は処方薬や認知行動療法との併用で行われました。9件の試験でプラセボと比較され、そのうち6件でビタミンDの有効性が支持されました。他の試験では結果にばらつきが見られました。

ビタミンDの投与量は毎日から毎週まで、1000 IUから10万 IUまでさまざまでした。9件の試験はうつ病と診断された人、6件の試験は抑うつ症状を経験している人を対象に実施されました。

5. オメガ3

オメガ3に関する39件の試験のうち、37件はプラセボとの比較でした。26件の試験はうつ病と診断された人、12件は抑うつ症状のある人を対象とし、1件は対象の詳細が不明でした。

11件の研究では妊娠中や産後を含む併存疾患を持つ人が対象となり、16件の研究ではオメガ3が抗うつ治療と併用されていました。
 

サプリメントの仕組み

一部の市販サプリメントは、神経伝達物質やホルモンの生成に関与する視床下部-下垂体-副腎軸を調整することで効果を発揮します。

また、別の製品は抗炎症作用、抗酸化作用、あるいは神経保護作用を通じて症状の改善に寄与します。多くのサプリメントは腸に良い影響をもたらし、腸の健康が脳の機能に与える重要な役割を裏付けています。

プロバイオティクスは腸内に有益な微生物を補うことで、腸の健康を促進し、健全な腸内マイクロバイオームの確立と、有害な微生物の排除に寄与するとされています。
 

将来的に期待される治療法

研究では、葉酸、ラベンダー、亜鉛、トリプトファン、ロディオラ、レモンバームなど、うつ病症状に対する有効性を示す新たな証拠を持つ18種類の追加サプリメントも特定されました。ビターオレンジ、ペルシャラベンダー、カモミールティーは、それぞれ2件の試験で肯定的な効果を示しています。

一方で、メラトニン、マグネシウム、クルクミンなど、うつ病への効果が期待される人気のある製品では、複数の臨床試験において結果が一貫していないことがわかりました。なお、41種類の製品については、試験が1件しか実施されていません。

「この分野にさらに多くの可能性が見えてきたのは心強いことです。予想以上にこの新しいカテゴリーに多くの製品が存在していました」と、筆頭著者のフロスト氏は述べました。

著者らは、今後の研究においては、すでに効果が確立された製品よりも、まだ試験数が少ない製品に注目すべきであると提案しています。
 

専門家の推奨と現実での応用

ハーバリストでABĒCA Naturalsのオーナー、アシュリー・マーフィー(Ashley Murphy)氏は、今回の研究結果に驚きはなかったと話します。

「セントジョンズワートは私のお気に入りの一つですが、禁忌があるため、愛憎半ばする存在です。非常に強力で、研究でもその効果がきちんと示されていました」と、彼女はエポックタイムズに語りました。

マーフィー氏によると、彼女のクライアントのうち、セントジョンズワートを単独で摂取している人は全体の約10%にすぎません。多くのクライアントは複数の健康問題を抱えており、そのため彼女は単一のハーブやサプリメントではなく、複数の製品を組み合わせることを勧めるケースが多いといいます。うつ病のある人が疲労感を訴えたり、ビタミンDやマグネシウム、あるいは他の微量栄養素が不足していたり、別の診断を受けていることは珍しくありません。

「うつ病を脳だけの問題として扱うのはやめるべきです」とマーフィー氏は強調します。「人々が全身的にサポートされているかどうかを確認する必要があります。プロバイオティクスがうつ病治療の有力な方法として挙げられたことにとても興奮しました。これは当然のことで、なぜなら食事の消化や栄養の吸収といった多くの要素が、メンタルヘルスに影響を及ぼすからです」
 

安全性の考慮

レビューでは、各サプリメントは単独で使用した場合も、抗うつ薬と併用した場合も、軽度の副作用のみで安全性に大きな問題は見られなかったとされています。ただし、新しい市販の治療法を始める際には、医療提供者に相談するのが最善です。

「少し慎重になって、少なくとも自分が何を摂取しているかを医療者に伝えてください」とフロスト氏は述べています。「効果が出るまで少し時間をかけて様子を見ますが、効果が感じられない場合は必ず連絡してください。特に重度のうつ症状を抱えている場合は、まず医療提供者に相談するべきです」

製品を試す際には、信頼できる供給元から購入することが重要だと彼女は述べています。

「さまざまな投与量や製品の調整方法が試されており、どれが最適かを判断するのは容易ではありません」とフロスト氏は補足し、市販製品は臨床監督なしで使用されることが多いため、報告されている以上の副作用が存在する可能性もあると指摘しました。

ハーブ療法の一般的な形式であるお茶に関しては、摂取量を正確に測定することが難しいという特有の課題があります。実際、うつ病に用いられるハーブティーの研究は少なく、これはプラセボとの比較が難しいためかもしれません。ただし、フロスト氏は、お茶や新鮮なハーブが効果がないというわけではないと述べています。

また、うつ病の第一選択治療である心理療法と、これらの製品を併用した際の効果を評価する研究が不足している点も、フロスト氏は課題として挙げています。
 

製品を超えて

スティーブンスさんとマーフィー氏は、メンタルヘルスの問題に対処するには、単なるサプリメントの摂取を超えた、全体的なアプローチが必要であることを強調しています。

「健康というものは、不安やうつ病といった複雑な問題に向き合う際、非常に多面的なものです」とスティーブンスさんは述べました。「もし『栄養だけで全て解決できる』と言ったら、それは自分に嘘をついていることになります。確かに役立ちますが、私たち人間は、精神的、感情的、身体的、そして霊的な面を持った存在です」

毎日うつ病に悩まされていたスティーブンスさんが、今では月に数日だけ症状を感じるまでに回復した過程は、癒しとは多くの要素が連携して作用するものであることを示しています。

「神様は、私にとって最善の選択ができるよう知恵を与えてくれました。そして、プロバイオティクスが私にとっては効果的でした」とスティーブンスさんは語ります。「私はただ感謝しています。私の信仰は、人間の経験の一部として苦しみを受け入れる力を与えてくれました」

(翻訳編集 日比野真吾)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。