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世界のコーヒー文化を比較──ちょっと違うアメリカ

世界中で愛されているコーヒーですが、その淹れ方や飲み方は国や地域によってさまざまです。たとえば、アメリカではドリップ式のコーヒーをテイクアウトして持ち歩く人が多いですが、ヨーロッパの一部ではこのようなスタイルはあまり見られません。

米メディア「ハフィントン・ポスト」によると、たまに持ち帰る人もいるものの、多くの人にとってコーヒーは「カフェで飲むもの」です。一人で座っていても、友人と一緒にいても、あるいはバーカウンターで立っていても、コーヒーはカフェの中で楽しむものとされています。仕事中に突然コーヒーが飲みたくなったときも、カフェへ行くべきなのです。

イギリスのカフェ運営責任者で共同オーナーのジャック・フォスター氏は、「コーヒー文化は、その土地の生活スタイルによるものです。たとえばイタリアでは、人々は店のバーカウンターでサッとエスプレッソを飲むのが一般的です。スピーディーで社交的かつ経済的なこのスタイルが、イタリア文化に根付いています」と話しました。

また「オーストリアやフランスなど他のヨーロッパ諸国では、ゆっくり座ってケーキなどとともにコーヒーを楽しむことが多いです。これもまた、その都市や地域コミュニティのライフスタイルが反映された選択なのです」と彼は補足しました。

アメリカのテイクアウトコーヒー文化について、複数のコーヒー専門家が次のように見解を述べ、テイクアウト文化がまだ根付いていない他の国々との違いについても説明しています。

スターバックスのテイクアウトコーヒー(Naomi Baker/Getty Images)

 

ヨーロッパ

アメリカのコーヒーブランドのマネージャーを務めるアレクサ・リンジー氏は、「ヨーロッパとアメリカのコーヒー文化は大きく異なりますが、それぞれに目的や役割があります。ヨーロッパでは、会話や交流の場として、ゆったりとした雰囲気でコーヒーが楽しまれます。一方、アメリカではスピードと効率が重視される場面でよくコーヒーが飲まれます。異なるコーヒー文化は生活習慣に左右されています」と述べました。

全米バリスタ選手権で優勝した経験を持ち、現在はコーヒー業界のコンサルタントを務めるライラ・ガンバリ氏は、「イタリアでは、カプチーノは約180〜240ml、エスプレッソは60〜120mlと、小さなサイズが主流で、カフェで陶器のカップに注がれて数分で飲み切れるものです。しかしアメリカでは、スターバックスなどの大手チェーンで480ml・590ml・710ml以上のサイズが提供され、短時間で飲み切るのは難しい。また、多くの人が車で通勤しているため、ドライブスルーでテイクアウトコーヒーを購入し、車内で飲むのが一般的です」と説明しました。

調査会社ScrapeHeroのデータによると、2024年7月1日時点で、アメリカ全土には16,621店舗のスターバックスがあり、そのうちカリフォルニア州には3,133店舗が集中しており、全体の約19%を占めています。

ガンバリ氏は「アメリカでは、食事に集中するために時間を取る習慣があまりありません。パソコンや作業をしながら食事をとる『ながら食事』スタイルが多いです。しかしスペインでは、ランチの時間に仕事から離れてリフレッシュするのが一般的で、スウェーデンの会社では、コーヒーとお菓子を楽しむための休憩時間を設けるのが普通です」と紹介しました。

また、彼女がアメリカ人にカフェでコーヒーを飲むことを勧めている理由は、「リラックスできるから」だけでなく、「環境面での無駄を減らすため」でもあります。テイクアウト文化によって、大量のごみが生み出されているのです。

ハンガリー・ブダペストの名店「ニューヨーク・カフェ」の様子(Shutterstock)

中南米

ブラジル出身で、現在アメリカのコーヒー輸入会社の管理者を務めるパウロ・ペレス氏は、「ブラジルでは、カフェでゆっくり会話をしながらコーヒーを楽しむのが一般的です。これは社会的な常識になっているため、紙コップでコーヒーを持ち歩くような光景はあまり見られません」と述べました。

また、ブラジルとイタリアの二重国籍を持ち、イギリスでカフェを経営しているブルーナ・コスタ氏も「イタリアやブラジルでは、どんなに忙しくても一度立ち止まって、きちんとしたカップでコーヒーを飲むのが普通です。味よりも「スタイル」が大切なのです」と紹介しました。

グアテマラ出身で、現在はシカゴのカフェでヘッドバリスタを務めるグレンディ・アレハンドロ氏は、「グアテマラでは、いつでも陶器のカップでコーヒーを飲み、ミルクは入れません。アメリカに来て、アイスラテやホットラテが主流で、しかもすべてが「持ち歩き用」のカップで提供されていることに驚きました」と語り、1995年にアメリカへ移住した当初、コーヒー文化のスピード感に違和感を覚えた経験を振り返りました。
 

フィリピン

フィリピンに12年間住んだ経験を持つコーヒー専門家のマーク・モーフィュー氏によると、フィリピンのコーヒー文化はもっとゆったりとしており、カフェは高温多湿の環境から離れて涼むための社交空間のような存在だといいます。

彼は「アメリカでは、多くの人が「目を覚ますためのカフェイン」を求めてコーヒーを飲んでいるようですが、東南アジア諸国ではコーヒーは「生活習慣」の一部です。フィリピンでは、家族や友人とともにカフェで午後をまるごと過ごすことも珍しくありません。エアコンと無料Wi-Fiがある場所としてもとても魅力的です」と述べました。

みんなで一緒にコーヒーを楽しむ(Shutterstock)

 

インド

アメリカでインド風味のコーヒーを提供するカフェを経営するショナリ・ポール氏によると、アメリカのテイクアウトコーヒー文化は、彼女がインドで経験してきたものとは大きく異なるといいます。

「インドでは、仕事の合間に「休憩」としてお茶やコーヒーを飲むのがごく普通のことです。会社の外には屋台のようなコーヒースタンドがたくさんあり、職場を離れて、同僚と話しながら立ったままコーヒーを飲むのがよく見られる光景です」

さらに彼女は、「インド文化では、飲食の時間は「社交の場」の一部です。家族と一緒に、あるいは職場で同僚と、仕事終わりには友人と一緒に食事や飲み物を楽しむのが当たり前です。車の中や通勤途中に一人で何かを口にするという感覚はあまりありません。飲食は単にお腹を満たすものではなく、心を楽しませるものでもあります」と説明しました。

(翻訳編集 正道勇)

陳俊村