「片頭痛は神経の異常によるもので、神経の炎症が原因です」とニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学で医学および神経学の助教授を務めるフレッド・コーエン博士は、エポックタイムズの取材で語りました。
片頭痛を引き起こす要因は人によって異なり、外的要因によって誘発されることもあります。ある程度の共通パターンは見られるものの、実際の症状やきっかけは個々に異なると、コーエン博士は述べています。
彼は、詳細な頭痛の記録を取っていたある患者のことを思い出しました。その患者の片頭痛はいつも朝に発症していたそうです。興味を持った博士が朝食について尋ねたところ、彼女は「卵」と答えました。「卵?」と驚いた彼は、卵が引き金になることはこれまで聞いたことがなく、それ以降も稀なケースだったと語ります。「片頭痛の引き金は、驚くほど個人差があります」とコーエン博士は強調しています。
そして、一部の人々にとってもう一つの潜在的な引き金となるのが、グルタミン酸ナトリウム(MSG)です。
グルタミン酸ナトリウムの健康への影響に対する懸念は、1968年に『New England Journal of Medicine』に寄せられた一通の手紙から始まりました。それ以来、グルタミン酸ナトリウムと片頭痛の関連を調べた臨床試験では一貫した結果が出ていないものの、専門家の間では「グルタミン酸ナトリウムがすべての人にとって安全とは限らない」という見解が一般的になっています。
グルタミン酸ナトリウムと片頭痛の関連
グルタミン酸ナトリウムは、スープ、スナック、テイクアウト食品などによく使われる風味増強剤であり、一部の人々にとって片頭痛の引き金となる可能性が長年にわたって指摘されています。この関係の中心には、体内で自然に生成されるアミノ酸「グルタミン酸」があります。
「グルタミン酸は、本質的にニューロン(神経細胞)の燃料です」と語るのは、フレッド・コーエン博士。彼は、脳が大量のグルタミン酸を使用しており、摂取されるとさまざまな神経経路を活性化する可能性があると説明します。
このような神経の活性化は、片頭痛のある人にとって特に重要な意味を持ちます。なぜなら、脳幹や脊髄といった、片頭痛の痛みの処理に関わる主要な領域には、多数のグルタミン酸レセプターが存在するからです。研究によると、片頭痛を持つ人は、片頭痛がない人や他のタイプの頭痛を持つ人に比べて、血液中のグルタミン酸レベルが高い傾向があることがわかっています。片頭痛発作中には、そのレベルがさらに上昇します。
グルタミン酸ナトリウムは、グルタミン酸に敏感な脳の領域を過剰に刺激することで片頭痛を誘発し、頭部の神経を痛みに対してより敏感にする可能性があると考えられています。実際、片頭痛を持たない人でも、グルタミン酸ナトリウムを摂取すると、頭痛、顔の圧迫感、吐き気などの症状を経験することがあります。
それでも、ほとんどの人はグルタミン酸ナトリウムを問題なく摂取できます。
「これは本当に個人の体質によります」と、公衆衛生学の博士号を持つ登録栄養士ウェズリー・マクウォーター氏はエポックタイムズの取材で語っています。
彼は、グルタミン酸ナトリウムについて考える際は、食事全体のバランスと個人の感受性を総合的に見ることが大切だと強調しています。
グルタミン酸ナトリウムが潜む場所
グルタミン酸ナトリウムと聞くと、多くの人はテイクアウトの中華料理、ポテトチップス、または高度に加工された食品を思い浮かべるかもしれません。そして、そのイメージは正しいと言えます。グルタミン酸ナトリウムは、加工食品やレストランの料理、特に風味の強い料理において、風味を高める添加物として広く使用されています。
しかし、グルタミン酸ナトリウムは添加物に限ったものではありません。グルタミン酸、つまりグルタミン酸ナトリウムの成分は、自然な形で日常的に食べられている多くの食品にも含まれています。
「グルタミン酸は、トマト、パルメザンチーズやチェダーチーズ、アンチョビ、イワシ、海藻、昆布などに自然に存在しています」と、フレッド・コーエン博士は説明します。
「人によって感受性の閾値は異なります。たとえば、トマトやチーズなどの自然由来のグルタミン酸には問題なく対応できる人でも、より濃度の高い加工食品には反応してしまうことがあります」と彼は続けました。
リスクを減らすための戦略
グルタミン酸ナトリウムの影響を完全に打ち消す食品はありませんが、バランスのとれた食事、特に米やジャガイモなどの炭水化物と一緒に摂ることで、副作用のリスクを軽減できる可能性があります。
「グルタミン酸ナトリウムのネガティブな影響は、他の食品と一緒に摂取すると弱まることがあります」とバーミンガム大学の神経科学教授ズバイル・アーメド氏は述べています。
登録栄養士のウェズリー・マクウォーター氏は、片頭痛のリスクを下げるための一般的な戦略として次の点を挙げています:
- 水分をしっかりとる:脱水は片頭痛のよく知られた引き金です。十分な水分補給は神経の安定に役立ちます。
- 食事を抜かない:不規則な食事は血糖値の低下を引き起こし、食品添加物や他の刺激に対する感受性を高める可能性があります。
- マグネシウムを多く含む食品を摂る:葉物野菜、ナッツ、種子、全粒穀物などは、一部の人で片頭痛の頻度を減らす効果が報告されています。
- 引き金の重なりを避ける:グルタミン酸ナトリウムをアルコール、熟成チーズ、睡眠不足といった他の片頭痛の引き金と組み合わせると、発作のリスクが高まる可能性があります。
「累積的なリスク要因に注意を払うことが重要です」とマクウォーター氏は述べています。
ターゲットを絞った除去を試みる
グルタミン酸ナトリウムが片頭痛に関係しているかもしれないと感じた場合、短期間の「除去ダイエット」を試してみることで、その関係を見極めることができると、フレッド・コーエン博士は述べています。以下がその方法です:
- 2週間、グルタミン酸ナトリウムを完全に除去する。
- 成分表示をしっかり確認し、隠れたグルタミン酸ナトリウムの摂取を防ぐ。
- 片頭痛の頻度、強さ、発生する時間帯などの症状を記録する。
- 2週間後にグルタミン酸ナトリウムを再び摂取し、体の変化や反応を注意深く観察する。
「除去ダイエットで最も大切なのは、一貫して実行することです」とコーエン博士は強調します。
2週間試しても変化がなければ、その人にとってグルタミン酸ナトリウムは片頭痛の引き金ではない可能性が高いと判断してよいでしょう。
この段階で、「グルタミン酸ナトリウムを完全に避けるためには、食材選びに十分注意を払うことが必要です」と、神経科学者ズバイル・アーメド氏も助言しています。実際、知らないうちにグルタミン酸ナトリウムを含む食品や添加物は意外と多く存在します。
グルタミン酸ナトリウムなしで風味を高める方法
もしグルタミン酸ナトリウムがあなたの片頭痛の引き金であると分かったとしても、食事の楽しみを諦める必要はありません。
「グルタミン酸ナトリウムを使わなくても、深くて満足感のある風味を作る方法はたくさんあります」とアーメド氏は語ります。
彼は、うま味の豊富な食材を使うことで、自然に風味豊かな料理が作れると提案しています。具体的には以下のような食材です:
- シイタケなどのキノコ類
- パルメザンチーズなどの熟成チーズ(※耐えられる場合)
- サンドライドトマト
- ニンニクとタマネギ
- ガーリックパウダー、クミン、スモークパプリカ、ターメリックなどの香辛料やスパイスミックス
- キャラメリゼしたタマネギやローストしたキノコ類
「大切なのは、グルタミン酸ナトリウムが本質的に悪いものではないという理解です」と栄養士のウェズリー・マクウォーター氏は述べています。
ただし、「片頭痛を持つ人にとっては、対応の仕方を個別に調整することが非常に重要です」と彼は続けます。
「片頭痛の患者は、それぞれ異なる神経プロファイルを持っています。そして、すべての人に当てはまる万能な解決策は存在しません」
(翻訳編集 日比野真吾)
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