春から初夏へ 気の流れを調える大切な時期
穀雨を迎えるこの半月間は、春の最後の節気であり、湿気と熱気が増してくる季節です。同時に、春から夏へと移り変わる時期でもあり、私たちの体も自然界と同じように、エネルギー(気)の流れが切り替わる重要な局面にあります。
この時期、多くの人が情緒不安定になったり、口の渇き、食欲不振、便秘といった不調を感じやすくなります。
そんなときの食養生のポイントは、肝の気を整え、肺を潤して火を鎮め、脾胃を健やかにし、腸の通りをよくすることです。
今回は、梅干しと大根の豚バラ煮をご紹介します。気の巡りをなめらかにし、内臓のバランスを整え、腸の通りもスムーズにしてくれる、春夏の切り替わりにぴったりの一品です。
体内の「通気三兄弟」──肺・胃・大腸
中医学では、肺・胃・大腸は、上から下へとエネルギーと排泄をつかさどる、ひとつながりのシステムを形成していると考えます。まるで人体という小さな宇宙の中で、気の流れを司る「通気三兄弟」のような存在です。
- 肺:空に浮かぶ雲のように、気を発散し、降ろす働きを担い、全身の気流を調整します。
- 胃:大地にある蒸気炉のように、栄養を受け入れて蒸し上げ、清らかなものを上昇させ、不要なものを下に降ろす中心的な役割を果たします。
- 大腸:老廃物を体外に排出する道筋をつくり、肺や胃の気の流れがスムーズであれば順調に働きますが、滞ると便秘を招きます。
もしも肝の気が滞ってしまうと、ちょうど嵐が雲をかき乱すように、肺の下降作用が妨げられ、大腸の働きも鈍り、便秘になりやすくなります。さらに胃の気も上に逆流し、胃の膨満感や食欲不振を引き起こすのです。
そんなときにぴったりなのが、今回ご紹介する梅干しと大根の豚バラ煮。滞った気の流れをやさしく整え、肺・胃・大腸それぞれの連携をスムーズにしてくれる養生料理です。
梅干しと大根の豚バラ煮【レシピ】

材料(2人分)
- 梅干し(種を取る) 1個
- 大根(乱切り) 200g
- 豚バラ肉(薄切り) 150g
- 生姜スライス 2枚
- 昆布だし 300ml
- 醤油 小さじ1
- みりん 小さじ1
- 酒 大さじ1
作り方
- 大根を3分ほど下茹でしてアクを抜く。
- 鍋にだし汁、梅干し、生姜、大根を入れ、酒・醤油・みりんを加えて弱火で10分煮る。
- 豚バラ肉を加え、さらに5分ほど煮て味を含ませる。
食材の効能
- 梅干し
酸味は肝に作用し、肝の気をやわらげ、肝火を鎮める働きがあります。あわせて肺の気を引き締め、気を下げるのを助け、潤いを与えながら消化も促進します。春の肝のバランスを整えたい時期にぴったりです。
- 大根
白色は五行で肺に対応し、大根は性質が涼やかで、肺を潤し痰を除きます。また胃の消化を助け、肺胃の気を自然に下へ導くことで、大腸の働きも整い、便秘の改善にもつながります。肺を潤し、気をスムーズに流す理想的な食材です。
- 豚バラ肉
脾と腎を補い、気血を養う働きがあります。さらに肝火を穏やかに鎮める作用もあり、生姜と組み合わせることで脾胃を温め、消化力を高めてくれます。
こんな方におすすめ
- 気分が塞ぎがち、イライラしやすい方
- 慢性的な便秘、胃の張り、口の乾燥が気になる方
- 食欲不振、脾胃が弱りやすい方
- 春から初夏への体調管理をしたい方
注意が必要な方
- 脾胃の冷えが強い方(大根が冷やすため注意)
- 胃潰瘍や胃酸過多の方(梅干しの酸味が刺激になる場合あり)
- 高脂血症や脂っこい食事を控えている方(豚バラは適量に)
まとめ
この薬膳は、酸味で肝を養い、白色の食材で肺を潤し、肉で脾胃を補う組み合わせになっています。
肝の気を整えてイライラをやわらげ、肝火を穏やかに鎮めるほか、肺を潤して熱を冷まし、咳や痰を抑えます。さらに、胃腸の働きを助け、気の巡りを促して便通を改善する効果も期待できます。
とくに春から夏へ季節が移り変わる時期に適しており、やさしく肝の陽気を調え、情緒を安定させ、内臓の気の流れをスムーズにすることで、気が巡り、胃が和らぎ、腸が整い、心身がすっきりとする養生効果をもたらします。
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