60歳の台湾人女性は、高血圧・高血糖・高脂血症に加え、腎臓病を抱えていました。彼女は普段から、排便を助ける目的で毎日バナナを1本食べる習慣がありましたが、ある日突然意識を失って病院へ搬送されました。検査の結果、血中カリウム値は7.2mEq/Lと異常に高く、高カリウム血症による重度の不整脈を起こしていたことが判明しました。幸い治療が間に合い、一命を取り留めることができました。
また別の例では、若い女性が安売りのバナナを購入し、1日3食で合計21本も食べてしまいました。その夜、体調不良を感じてベッドから起き上がった際に意識を失い、目が覚めると頭を強く打って大きなこぶができていました。この女性も検査の結果、高カリウム血症と診断されています。
バナナは栄養価が高く、血圧の調整、血糖の安定、睡眠の質向上や便通改善に役立つ果物です。しかし、摂りすぎたり、体内のカリウムをうまく排出できない状態では、本来は健康によい食品が、命に関わるリスクをもたらすこともあります。
適量のバナナで血圧を下げる
バナナに豊富に含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウムを排出し、心臓への負担を軽減して血圧を安定させる働きがあります。
研究でも、適量のカリウム摂取は、高血圧のある人や塩分摂取量が多い人の血圧を下げるのに役立つとされていますが、過剰に摂取すると、かえって血圧管理に悪影響を及ぼし、リスクを高める可能性があります。
バナナを食べる際の3つの注意点
バナナは体によい食品ですが、次のような体の状態にある人は、摂取量を控えたほうが安心です。
1.腎機能が低下している人、カリウム保持型の薬を服用している人
中くらいのサイズのバナナ1本には、約450mgのカリウムが含まれています。腎機能が低下している人では、カリウムが血液中に蓄積しやすくなります。血中カリウムが過剰になると不整脈を引き起こし、重症の場合は心停止に至ることもあります。また、「カリウム保持型の降圧薬」を服用している人も、1日に半分以上のバナナを食べないよう注意が必要です。
2.下痢をしやすい人
頻繁に下痢をする人は、中医学でいう「脾胃虚寒(ひいきょかん)」の体質にあたります。これは簡単に言うと胃腸が弱く、冷えやすい状態で、胃痛や腹部の張り、冷たいものを食べると不調が出る、冬に手足が冷えやすく顔色が白いといった症状が見られます。バナナは体を冷やす性質を持つ果物のため、この体質の人が食べ過ぎると腸の動きが乱れ、下痢や胃の不快感を悪化させる可能性があります。
また、関節があまり柔軟でなく、むくみやすい人も、同様に「脾胃虚寒」の傾向があるため、バナナの食べ過ぎには注意しましょう。
3.咳が出ているとき
咳をしているときは、バナナは控えたほうがよいとされています。バナナは「痰を生じやすい」とされ、気道の分泌物が増えて粘り気が強くなり、咳が長引く原因になることがあります。
糖尿病の人がバナナを食べるコツ
バナナは甘い果物ですが、血糖値が高い人でも食べることは可能です。食物繊維が豊富で、糖の吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を穏やかにしてくれるからです。
糖尿病の人には、やや青みが残った、完熟前のバナナがおすすめです。熟しきっていないバナナは血糖指数(GI値)が低く、1回の量は半分程度にとどめましょう。
2型糖尿病患者を対象とした初期の研究では、未熟なバナナは血糖値やインスリンへの影響が比較的少ないことが示されています。これは、バナナが熟すにつれて、でんぷんが吸収されやすい単糖や二糖に変わり、血糖値の変動が大きくなるためです。
バナナの注意点を理解することで、その特性をより上手に活かすことができます。ここからは、中医学の食養生としてのバナナの使い方をご紹介します。
腸を温めて便通を促す中医学的な食べ方
多くの人は便秘改善のためにバナナを食べますが、腸が冷えやすく、蠕動力が弱いタイプの人では、冷たい性質のバナナを生で食べることで、かえって便秘が悪化することがあります。これは食物繊維不足ではなく、腸が十分に温まり、力強く動いていないことが原因です。
生のバナナで効果を感じにくい場合は、「バナナ陳皮湯」を試してみましょう。
◎バナナ陳皮湯
材料:青皮のバナナ1本、陳皮3枚、氷砂糖適量
作り方:バナナは皮をむいて切り、陳皮は洗います。すべての材料を水に入れて10分ほど煮て、温かいうちに飲みます。
加熱した青皮のバナナは、体を冷やす性質が和らぎ、腸や胃を温め、腸内の水分量を増やして排便を助けてくれます。陳皮は、一定期間保存した乾燥みかんの皮のことで、中医薬局やアジア系スーパーなどで購入できます。陳皮には気(エネルギー)の巡りを良くし、腸の動きを促す働きがあります。さらに、氷砂糖には喉や肺を潤す作用があります。中医学では、肺と大腸はエネルギー的につながっていると考えられており、肺を潤すことが、間接的に腸を潤すことにもつながるとされています。
バナナの皮も立派な栄養源
「失恋したらバナナの皮を食べるといい」などと冗談交じりに言われることがありますが、実はバナナの皮は本当に食べられますし、ポリフェノールや食物繊維などの栄養は、果肉よりも豊富だとされています。
古い書物には、バナナの皮を炒めてから煮出して飲むと、胃腸炎による腹痛を和らげると記されています。また、バナナの皮を煮出した汁を外用として使えば、かゆみを抑え、皮膚の赤い発疹を和らげる効果もあるとされています。
次にバナナを食べたときは、皮をすぐに捨ててしまうのは本当にもったいないことです。よく洗ったバナナの皮を揚げてカリッとしたチップスにすればおやつになりますし、牛乳と一緒にミキサーにかけてバナナミルクにしてもおいしくいただけます。さらに、バナナの皮を粉末にしてクッキーに加えると、抗酸化作用が高まるだけでなく、食感も良くなるという研究結果もあります。
バナナの皮だけでなく、昔からバナナは「全身が宝」と考えられてきました。バナナの葉を粉末にして生姜汁と混ぜ、腫れや膿のある部分に塗ると、腫れを引かせ痛みを和らげるとされ、またバナナの根にはニキビを改善する効果があるともいわれています。
バナナを食べるのに適したタイミング
「食べられるかどうか」だけでなく、「いつ食べるか」もとても大切です。タイミングを選ぶことで、バナナの良さをより効果的に活かすことができます。
1.午後3〜4時ごろ
仕事をしている人にとって、午後3〜4時の小腹が空く時間帯に、クッキーの代わりにバナナを食べるのはおすすめです。手が汚れにくく手軽なうえ、夜の睡眠の質向上にもつながります。
バナナに含まれるトリプトファンは、脳内でセロトニン(幸福感に関わる物質)に変わり、さらにメラトニン(睡眠ホルモン)へと変換され、入眠を助け、深い睡眠時間を延ばします。バナナはトリプトファン含有量が特別多いわけではありませんが、含まれる糖分がトリプトファンの脳内への取り込みを助け、セロトニンの生成を促します。
2.運動の前後
もうひとつバナナに適したタイミングは、運動の前後です。バナナは天然の糖分に加え、カリウムやマグネシウムなどの電解質を補給できます。
運動の30分〜1時間前に食べると、筋肉のけいれん予防に役立ちますが、強度の高い運動前は半分程度にとどめないと、胃の不快感につながることがあります。また、運動後1時間以内に食べることで、筋肉のグリコーゲン補充を助け、運動後の筋肉痛軽減にも一定の効果が期待できます。
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