立春を過ぎると、二十四節気の「雨水」(2月18日)を迎えます。これは雨が増え、空気が湿りやすくなる時期を意味します。この時期は湿気が多く、まだ寒さも残っていますが、少しずつ春の暖かさも感じられるようになります。しかし、寒さと湿気の影響で胃腸の調子が乱れやすく、体のエネルギー(陽気)の巡りが滞ることがあります。その結果、さまざまな体調不良が起こりやすくなるため、胃腸を整え、体内の余分な湿気や冷えを取り除き、エネルギーの流れをスムーズにすることが大切です。
春の寒さと湿気が引き起こす健康トラブル
湿気が多いと、胃腸の働きが低下し、消化がスムーズにいかなくなります。よくある症状として、食欲不振、胃もたれ、お腹の張り、下痢や便秘などがあります。
また、東洋医学では、胃腸(消化を司る)と腎臓(水分代謝を司る)はバランスを取り合う関係にあるといいます。そのため、胃腸の働きが弱まると、腎臓の水分代謝も悪くなり、むくみや体重増加、貧血や冷えが起こりやすくなります。
さらに、肝臓と胃腸も密接に関係しており、肝臓のエネルギー(肝気)の流れが滞ると胃腸の働きにも悪影響が出ます。一方で、湿気や寒さによって胃腸が弱ると、肝のエネルギーの巡りも悪くなり、体の中に熱がこもる「のぼせ」のような状態になります。これが心臓や肺に影響すると、不眠、喉の痛み、口内炎、目の乾燥・かゆみ、肌のかぶれなどの症状が出ることがあります。さらに、体のエネルギーの流れが悪くなると、上半身がほてり、下半身が冷える「冷えのぼせ」のような状態になり、心肺の機能が低下することで風邪や花粉症にかかりやすくなります。
湿気は関節にも影響を与えやすく、関節の動きが悪くなったり、痛みが出やすくなります。特に寒く湿った天気の日には、関節の痛みや重だるさがひどくなることがあります。
また、湿気が体内にたまると、消化不良や血流の悪化が起こり、疲れやすい、体がだるい、頭がぼんやりする、眠くて仕方がないといった状態になります。こうした不調が続くと、気分が落ち込みやすくなり、やる気が出ないと感じることも増えてしまいます。
この時期の健康管理では、胃腸を整え、湿気を排出し、肝臓のエネルギーの流れをスムーズにすることが大切です。これにより、体のエネルギーが正常に巡り、春の変わりやすい気候にも適応します。
そこで役立つのが香味野菜(香りの強い野菜)です。香味野菜には、肝のエネルギーの流れを良くし、胃腸を元気にし、体内の余分な湿気を取り除く作用があります。また、キノコ類には胃腸を整えるだけでなく、免疫力を高め、呼吸器を強くする働きもあります。そのため、この時期には香味野菜やキノコを積極的に食べることで、肝・胃腸・肺のバランスを整え、不調を和らげることが期待できます。
雨水の時期におすすめの食材と健康効果
1. キノコ
特性と効果
キノコは湿った環境で育ち、その質感が肺に似ていることから、湿気を排出する力が強いとされています。これはまさに「雨水」の時期の体調管理に適した食材です。胃腸の働きを整え、湿気を取り除き、肺の機能を高めて免疫力を強化する効果があります。そのため、東洋医学ではキノコは胃や肺の働きを助ける食材で、消化器系や呼吸器系の健康維持に役立ちます。キノコを食べることで体質が改善され、花粉症やインフルエンザの予防にもつながります。
おすすめの食べ方
(キノコとピーマンのニラ炒め)
ピーマンには肝の働きを助ける作用があり、軽い辛味が肝の気の巡りを良くし、体の熱を取り除くとされています。ニラは体を温め、湿気を排出する効果があり、胃腸や腎臓の働きを助けます。この3つを組み合わせることで、湿気や寒さを取り除き、胃腸を活性化し、免疫力を高めることが期待できます。
(キノコとパクチーのスープ)
パクチーには体内の湿気を取り除き、肝の働きを助ける効果があります。キノコと一緒にスープにすると、体にこもった熱や湿気を取り除き、消化を促進し、春先に起こりやすい不調を和らげるのに役立ちます。
2. セロリ
特性と効果
セロリは体を冷やす性質があり、香りがあるため、体内の気の巡りを良くする働きがあります。熱を冷まし、解毒し、利尿を促してむくみを取る作用があり、体内に溜まった余分な湿気を排出するのに適しています。また、肝の働きを助けることで、ストレスによる体のほてりを抑え、心臓や肺を守り、イライラや不眠、便秘の改善にも役立ちます。さらに、肝臓の解毒機能を助け、有害物質の排出を促します。
おすすめの食べ方
(セロリとキノコのパクチー炒め)
セロリ、キノコ、パクチーはどれも湿気を取り除き、体内の熱を冷ます作用があるため、特に上半身がほてりやすく、下半身が冷えやすい人におすすめの組み合わせです。
(セロリとクコの実のスープ)
クコの実は肝と腎の働きを助け、目の健康を守る効果があります。セロリと組み合わせることで、肝の気の巡りを良くし、余分な湿気と熱を取り除き、肺を潤すことが期待できます。湿気が多く、疲れやすい人に向いています。
3. ニラ
特性と効果
ニラは体を温める性質があり、軽い辛味を持ち、肝と腎の働きを助けます。そのため、腎を温め、肝の気の巡りを良くし、冷えを取り除き、体を温める力を高める効果があります。東洋医学では「陽気を高める食材」とされ、特に冷えやすい体質の人、腎が弱い人に適しています。
おすすめの食べ方
(ニラと豚肉の炒め物、または餃子の具にする)
ニラは腎の陽気を補い、豚肉は腎の陰を養う働きがあります。この組み合わせは、陰と陽のバランスを整える理想的な食べ方で、胃腸や肝の働きを助け、体内の湿気と寒さを取り除き、病気になりにくい体を作るのに役立ちます。
(ニラと豆腐のスープ)
豆腐には体を潤し、肺の働きを助ける作用があり、ニラと組み合わせることで肝・腎・肺のバランスを整え、寒さや湿気による不調を改善します。
4. パクチー
特性と効果
パクチーは体を冷やす性質があり、軽い辛味があるため、湿気を排出し、体のデトックスを助け、肝の気の巡りを良くする効果があります。「雨水」の時期は湿気が多いため、パクチーの湿気を取り除く作用がとても効果的です。また、体にこもった熱を取り除き、気分をスッキリさせ、胃腸の調子を整えて食欲を増進する働きもあります。
おすすめの食べ方
(パクチーとキノコの炒め物「にんじん入り」)
キノコとパクチーはどちらも湿気を取り除き、胃腸や肺の働きを助ける食材です。にんじんを加えることで、気血を補い、体のバランスを整える効果が期待できます。
(パクチーときくらげの和え)
パクチーは肝の気の巡りを良くし、湿気を取り除く作用があり、きくらげは腎の働きを助け、肺を潤す効果があります。これを組み合わせることで、余分な熱と湿気を取り除き、心身をリラックスさせます。特に湿気が多く、食欲が落ちやすい時期におすすめです。
5. シソ
特性と効果
シソは体を温める性質があり、軽い辛味があり、冷えを取り除き、胃腸の調子を整える作用があります。特に寒さと湿気が原因の不調に効果的で、体の温める力を高め、湿気を取り除き、風邪の予防にも役立ちます。
おすすめの食べ方
(シソとキノコのスープ)
シソは寒さを取り除き、体を温める作用があり、キノコは湿気を排出し、胃腸を健やかにする働きがあります。この組み合わせは、胃腸や肝のバランスを整えるのに適しています。
(シソとエビの炒め物)
エビは腎の働きを助け、体を温める食材で、シソと一緒に食べることで、肝と腎のバランスを整え、体力を高め、寒さを取り除き、胃腸を温める効果があります。寒く湿った時期におすすめの一品です。
(翻訳編集 華山律)
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