寝たきり予防! 健康長寿を支える3つの秘訣

すべての人が「百歳まで長生きしたい」と望んでいるでしょうか、答えはノーです。なぜなら、健康ではない長生きの人生がどれほど辛いものなのかを容易に想像できるからです、人の寿命は自分で決められません。今は「人生100年」と言われている時代で、もし、あなたが今60歳未満で、健康状態が良好であれば、ハプニングなどが起きない限り、自分が思っている以上に長生きするかもしれませんし、百歳を超えてもおかしくありません。

病気も痛みもなく、人に頼らずに健康で自立した状態で長生きする方法は果たしてあるのでしょうか? 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターは百寿者を対象に追跡調査を行い、その秘訣を解き明かそうとしました。

研究では、認知機能に問題がなく自立できる百寿者を三つのグループに分けました。それは100~104歳の「百寿者」、百寿者より長寿の105~109歳の「超百寿者」、そして110歳以上の「スーパーセンチナリアン」でした。

ほとんどの百寿者は多少の介護が必要ですが、約2割の人は自立できています。この自立できている百寿者から110歳以上の「スーパーセンチナリアン」が生まれてくる確率が高いと見られています。つまり、健康長寿は百歳を超えても自立して暮らせることに左右されます。

体が弱くて、立ち上がって動くことができなければ、健康寿命は保てません。この百寿者を対象とする研究では、健康長寿を実現するため、3つの老化を遅らせることが大事だと分かってきました。

1、心臓をはじめ、腎臓、血管など循環器の老化を予防する。

2、認知症をもたらす脳や中枢神経の老化を予防する。

3、サルコペニアや骨粗しょう症によるフレイルなど筋肉・骨格系の老化を予防する。

その中でも、筋肉・骨格系の老化を防ぐことが健康寿命を保つのに最も重要だとされています。

慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通所長は『日経Gooday』に「研究によれば、百寿者は他の高齢者と比べて糖尿病、動脈硬化、認知症の発症率が低くて、体内の慢性炎症も少なかった」と説明しています。

百寿者、896人を調査し、さらに85~99歳までの高齢者に対して血液分析を行い、老化を遅らせるための2つの大事な生化学的指標も発見しました。

1つ目は「NT-proBNP(N端前脳性ナトリウム利尿ペプチド)」で、心臓に負荷をかかった際に分泌されます。加齢とともに心臓機能も低下していくと一般的に言われますが、研究の結果、110歳以上のスーパーセンテナリアンは他の長寿者と比べてNT-proBNPの濃度が明らかに低いことが分かりました。

NT-proBNPの濃度を抑えるためには、どうすれば良いのでしょうか。研究者は東京都に住む85~99歳の高齢者の血液数値と生活習慣を分析したところ、継続的かつ規則的な運動はNT-proBNPを抑制し、心臓機能を保つのにベストの方法だとわかりました。百歳を超えて運動を続ける人は少ないですが、百寿者の中には、85歳を過ぎても、水泳や散歩、ジョッキングを続けていた人が多くいます。

もう一つは「アルブミン(Albumin)」です、肝臓で作られた単純タンパク質の一種で、栄養状態の指標となります。血液中のタンパク質の内50%を占めています。血液中の水分を保持し、体内の薬や代謝産物の運搬、毒素の中和などで機能しています。

85歳以上の高齢者1427名を対象した研究では、血液の分析を行い、血液中のアルブミン濃度が低い人ほど死亡率が高いことがわかりました。そのため、血液中のアルブミンの濃度を維持することは健康寿命のカギだと見られています。

高齢者は歯の影響で嚥下機能が低下し、軟らかい食べ物に偏りやすいです。しかし、慶應義塾大学病院は百寿者34名を対象に3日間の食事調査を行ったところ、1日のカロリー摂取量は平均して体重1キロあたり約30カロリーであり、日本の中青年が一日あたり摂取するカロリーとほぼ変わらないことがわかりました。

日常の食事では、豆類、豆腐、豆乳などの大豆製品や魚、卵、海鮮類など、十分なタンパク質の摂取を気にかければアルブミンの低下を防ぐことができます。

老化を遅らせる万能薬は存在しません。老化を遅らせる3つのことを心掛けて予防し、継続的な運動習慣と正しい食生活をすることで、自分が思っている以上に健康をコントロールできます。
 

1日に一万歩はもう古い

「1日1万歩」の概念はすでに崩れています。長寿に最適な歩数が一万歩という話は単なるマーケティングの手段にすぎません、科学的証拠はありません。

1965年、日本の時計メーカーはオリンピック後の運動ブームを受け、歩数や距離を計測できる機械を開発して、「万歩計」と名付け世界中に発売しました。「万」という言葉から1万歩が望ましい歩数の目安だというイメージが瞬く間に世間に浸透しました。

しかし、現代科学は、健康長寿のために一日に歩く歩数は必ず一万歩に達する必要はないと証明しています。

一日に7500歩がベスト、健康効果が最大

『JAMA Internal Medicine』が発表した研究によると、ハーバード医科大学の教育病院・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH)に所属する研究チームは、約1万7千人の女性に歩数計を装着させ、1週間の歩数を追跡調査しました。この調査は4年以上続けられ、死亡率を観察しました。その結果、1日の歩数が増加するにつれ全死因死亡率が低下しました、しかし、7500歩に達した時点でその効果が平坦化することがわかりました。

WHOの運動ガイドラインでは、「一般的な成人は1週間で150分の中強度 の有酸素運動」を推奨しています。これを一日あたり歩く歩数に換算してみました。コロンビア大学の応用生理学教授キャロル・ユーイング・ガーバー博士は『プレベンション(Prevention)』誌で、絶対的な数値ではない、かつ個人差はあることを前提に、週150分の中等強度の有酸素運動は1日約7500歩に相当すると発表しました。この結果は「1日7500歩を歩けば十分」という説を裏付けました。
               

(翻訳編集 正道 勇)

黃惠如