妊婦健診の中断が新生児の死亡率に寄与か

コロナ禍のソーシャルディスタンスが新生児の死亡率と早産に関連=新研究

コロナ禍におけるソーシャルディスタンスの確保が、早産や1〜2ヵ月以内の新生児死亡率の上昇に関連していることが、新たな研究で明らかになりました。

今月18日にJAMA Network Openに発表された研究で、アラバマ大学バーミンガム校(UAB)の研究者らは、2016年から2020年までのアラバマ州における1800万件以上の出生を評価し、パンデミック以前と当局が公衆衛生上の制限措置を講じた2020年3月以後の期間を比較しました。

関連性はすぐには明らかになりませんでしたが、ソーシャルディスタンスの確保が実施されてから2ヵ月後の新生児死亡率および早産率を調べたところ、双方の間に関連性があることがわかりました。新生児期とは、赤ちゃんの生後4週間を指します。

UAB新生児科の新生児科医で助教授のヴィヴェク・シュクラ博士は、「この研究は、ソーシャルディスタンスの確保が新生児の健康状態に及ぼす“予期せぬ影響”を評価したものです」と、エポックタイムズに電子メールで語りました。

「集団レベルでは保健介入の遅延効果があるかもしれないことを、この研究は示しています。対策が実施された1日目にはその影響が現れないこともあります」

臨床医で研究者でもあるシュクラ博士によると、これらの関連性についてより精緻な理解を得るには、さらなる研究が必要だといいます。

また、この研究は社会的行動が健康転帰にどう関係しているかを評価したに過ぎず、新型コロナへの感染が母子にどのような影響を与えるかは検証していないことを、シュクラ博士は捕捉しました。

出生前の受診の減少

今回の調査結果は、妊婦健診の中断や妊娠合併症に関連している可能性があると、論文著者らは述べています。

パンデミック期間中に観察された出産前の受診や妊娠中の検診の少なさが、ソーシャルディスタンスの確保と関連している可能性があります。

共著者であるUAB母体胎児医学部門のレイチェル・シンキー准教授は、「これらの診察は、母親と赤ちゃんの命に関わる合併症を発見し、対処する上で重要です」とプレスリリースで述べました。

アメリカ医師会によると、2020年7月と8月に実施された調査では、81%の医師がパンデミック前に比べて対面診療の回数が減ったと回答しています。対面診療の平均回数は週95回から57回に減少しました。

さらに、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、分娩誘発、新生児集中治療室(NICU)への転院・搬送などの疾病発生率は、パンデミック期間中に高まりました。

今回の研究では、新生児死亡率は2020年のパンデミック期間を通じて全般的に低かったものの、人々がソーシャルディスタンスを確保するようになってからは、早産と合わせてわずかに増加したことが明らかになっています。

「新型コロナは世界的な医療システムに影響を与え、多くの人命が失われました。この経験から学び、将来起こりうる医療危機に備えることが重要です」とシュクラ博士は語りました。

「健康に関わる行動の変化が転帰にどのような影響を及ぼすのか、ケアへのアクセスが制限されているか、健康に関する習慣が変化しているかを理解する必要があります」

さらなる研究が必要

この研究は観察に基づくものであり、因果関係を導き出すことはできません。

シュクラ博士は、「この結果は、パンデミックに関連した健康に関する行動の変化の意図せざる影響について、より詳細な研究が必要であることを示しています」と述べました。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。