重症患者はウイルス量が多いとする以前の研究とは異なる見解

コロナ重症度はウイルス量と関係ない 初感染時において=研究結果

医学雑誌JAMA Network Openに掲載された最近の研究で、鼻腔内のSARS-CoV-2(COVID-19を引き起こすウイルス)の量で、疾病の重症度を予測できないことが示された。

論文著者らは「診断時のウイルス量には大きなばらつきがあった」と記述している。「興味深いことに、主に外来患者を対象とする診断時のウイルス量とCOVID-19の重症化との間に関連性は見られなかった」

この研究結果は、COVID-19の重症患者はウイルス量が多いとする以前の研究とは異なる。

「この研究結果は、特に既存の免疫が多様化していることを考慮すると、個人のウイルス量をCOVID-19の重症度の指標とすることには注意が必要であることを示唆している」

研究者らは、COVID-19ワクチンの治験においてプラセボ群に属していた未感染・未接種者を追跡し、説明しがたいウイルス量の大きなばらつきを発見した。

疾病の重症度は免疫力で決まる

ヴァンダービルト大学医療センターの予防医学教授であるウィリアム・シャフナー博士(研究には関わっていない)は、この結果には驚かなかったという。

「COVID-19重症化の合併症である肺炎は、体の免疫反応によって決まることが知られており、ウイルス量によって決まることはあまりない」とシャフナー博士は指摘した。

「私たちの免疫応答が病気の重症度を決定する。免疫応答の強さが肺炎の発生と密接に関連している」

SARS-CoV-2の感染には二つの段階がある。初期段階でウイルスは鼻腔と上気道の細胞に付着し、症状は通常軽度だ。第二段階ではウイルスが下気道に到達し、体内に広がり始める。

免疫力によって、ウイルスに対して非常に強い炎症反応を起こして重症化する人もいれば、軽症または無症状で済む人もいる。

COVID-19の重症化については、研究によってさまざまな説明がなされている。高齢者や代謝性疾患のある人がCOVID-19の重症化を経験するリスクが最も高い傾向にある。しかし、そういった症状のばらつきは遺伝的な原因によるものである可能性を示す研究もある。

また、感染歴がある人やワクチン接種者は、将来的な感染や発症を免れる傾向にある。

粘膜ワクチンの再評価

研究では、ウイルスに大量にばく露したからといって必ずしも重症化しないことが示されたが、感染しないわけではない。

アイオワ大学微生物学・免疫学教授のスタンリー・パールマン博士はエポックタイムズに対し、「混雑した場所や感染者の近くにいれば、感染する可能性は高まる」と述べた。

研究者らは、今回の研究結果がCOVID-19の粘膜ワクチンの開発において特に重要であることを指摘している。

パールマン博士も、ウイルス量が必ずしも疾患への影響を反映しないので、この研究結果は粘膜ワクチンの有効性の評価に影響すると述べた。

シャフナー博士は、「COVID-19の粘膜ワクチンが依然として重要になりうる」と述べた。

「粘膜ワクチンは理論上、初期感染を防ぐために設計されている。感染の開始を防ぐか、または感染してもウイルスが体内で定着せず、重症化リスクを低減できる可能性がある」

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。