昔々、森の奥深くに仙人が暮らしていました。ある日、仙人が食事をしようと腰をおろしたときのことです。突然、空から鼠(ねずみ)が落ちてきました。どうもカラスが落としたようです。仙人は鼠を家に入れ、お米を食べさせてやりました。
ある日、猫があらわれ鼠を追いかけ回しました。仙人は自分の可愛がっている鼠が食べられてしまうのではないかと心配になりました。そこで神通力をつかって鼠を猫に変え、もう他の猫に襲われないようにしてやりました。
次の日、犬があらわれ猫を追いかけ吠え立てます。そこで仙人は猫を犬に変えました。
またある日、犬は虎を見ておびえました。すぐに仙人は神通力で犬を虎に変えてやりました。
姿が変わっても、仙人はいつも虎が小さい鼠のままであるかのように接していました。近くを通りかかる村人は「あれは虎なんかじゃねえ。神通力で見た目だけ変えられた、ただの鼠なんだってよ。襲ってくることもないし、怖くもなんともねえよな」といつも虎をバカにするのでした。
虎は村人にバカにされるたびに、はらわたが煮えくり返る思いでした。「仙人がいる限りは自分の本性を隠すことができないんだ。あいつにはいなくなってもらうしかない」と虎はとうとう仙人を殺す決心をしました。
しかし仙人は虎が頭の中で何を考えているのかをお見通しだったので、虎が自分のほうに近づいてくると「鼠に戻れ!」と命じました。その瞬間に虎は小さくなり、また元の鼠に戻っていました。
仙人は哀れみの眼差しを鼠に向け、「自分が何であろうと関係ないのじゃよ。強かろうが弱かろうが、謙虚でいることが大切じゃ」と語りかけました。
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