中距離ミサイル発射システムが4月8日、フィリピン・ルソン島に到着した(米インド太平洋軍)

米軍、「第一列島線」に中距離ミサイル配備 冷戦後のインド太平洋地域で初

米国は4月初旬、フィリピン・ルソン島に中距離ミサイル発射装置「タイフォン」の配備を完了させた。80年代後半の冷戦以降、米国にとって中距離ミサイル装置の配備はインド太平洋地域で初となる。

タイフォンは、射程約450キロの超音速ミサイル「SM-6」や最大射程2500キロの巡航ミサイル「トマホーク」など、様々なミサイルを搭載可能だ。ルソン島北部の「第一列島線」に配備されたこの装置は、台湾海峡やバシー海峡全域のみならず、中国東部沿岸の主要都市の大部分、南シナ海とその周辺の中国共産党の軍事基地をもカバーしている。

米太平洋軍は4月15日、フィリピンとの合同演習「シールド」の一環として、第1多領域任務部隊がルソン島北部に中距離ミサイルシステムの配備に成功したと発表。「歴史的な初の配備」であり、「新たな能力への重要な転換点」だと強調した。

マサチューセッツ工科大学国際研究センターのエリック・ヘギンボザム氏は「台湾侵攻の際、中国の強襲揚陸艦隊は近海に集結せざるを得なくなり、その位置は把握可能だ。そこに海上発射型トマホークミサイルを集中させれば大打撃を与えられる」と指摘する。

ヘリテージ財団国防予算政策顧問のウィルソン・ビーバー氏は「現時点では1基のみの配備で、それ自体で中国の戦略を変えることはないだろう。だが、将来的に戦域に多数の新システムが配備されれば、中国の軍事計画は複雑化を強いられる可能性がある」との見方を示した。

中国国防部の呉謙報道官は「地域諸国の安全を脅かす危険な動向だ」と反発している。

中国共産党海軍は過去10数年で急成長を遂げ、370隻以上の艦艇・潜水艦を有する世界最大の海軍力となった。だが専門家は、中距離ミサイルの配備により、中国の「数の優位」が相殺されると指摘。米国は近年、大量のミサイル調達を進めている。

中国はまた、2千発以上の通常弾頭弾道・巡航ミサイルを保有し、南シナ海のすべての米水上艦を攻撃できる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力を有する。米国のミサイル配備は、そうしたアジアでのミサイルバランスの是正に寄与するとの見方もある。

ただ、米国の課題は十分な数のミサイルを確保することだ。台湾政策の専門家、郭泓均氏は「米国や同盟国、ウクライナなどがこうした兵器を必要としているが、米国の国防産業基盤は疲弊している」と指摘している。

インド太平洋地域の抑止強化のため、4月11日発表の日米首脳共同声明では防衛産業の連携を盛り込んだ。防衛装備品の共同開発・生産を促進するため当局間の定期協議も開催する。ミサイル開発・生産や日本国内での米軍艦船についても議論するという。

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