京都発、「たけのこの木の芽和え」の養生物語

たけのこの木の芽和え」は京都発祥の春の伝統的な郷土料理です。食材は季節に応じており、京たけのこと木の芽(山椒)を組み合わせることで、胃腸を温め、血を補い、代謝を促進する働きを持ちます。また、気血を調和させ、人体の陰と陽をバランス良く保ち、免疫力を高める効果も期待できます。生命活動のエネルギー源となる「精」をつけながら、元気に新しい春を迎えましょう。

唐代から伝わる京たけのこ 愛する母のための妙薬

竹林の春の息吹(YASUHIRO SHIRATANI / PIXTA)

京たけのこは、「孟宗竹(もうそうちく)」という品種を用いて、独特の栽培法が行われています。孟宗竹は今から約1200年前の810〜823年に、長岡郡海印字寂照院の開祖・道雄上人が唐から日本に持ち帰ったとされています。身が白くて柔らかく、えぐみが少ない京たけのこですが、その背後にある物語が非常に感動深く、「孟宗竹」の名前もこの物語に由来しています。

三国時代、幼くして父を亡くした孟宗は、母親と二人で暮らしていました。母親は苦労しながら孟宗を育て上げましたが、徐々に疲労がたまり病に倒れました。ある冬、重病にかかって倒れてしまい、たけのこ汁を飲みたいと言いました。

たけのこは春の野菜で、春にならないと地面から出てこないため、寒い冬にどうやってたけのこを見つけることができるのかと孟宗は大いに悩みました。また、年老いており、病状が快方に向かう様子がない母親が果たして来春まで生き延びることができるのかも分りません。

孟宗は不安のあまりあちこちを駆け回りましたが、たけのこを見つけることができず、母親の病気を治すこともできず、悲しみのあまり竹林で大泣きしました。孟宗の親孝行の心が天地の神々を感動させたのか、彼の足元の大地が突然割れて、新鮮なたけのこが数本生えてきたのです。 

孟宗は大変ありがたく思い、急いでたけのこを掘り出して、家に戻り母が食べたがっていたたけのこ汁を作りました。不思議なことに、母親はそれを食べた後、まもなくして病が治ったのです。

それ以来、この竹は「孟宗竹」と名付けられました。孟宗竹は春筍だけでなく、冬にも人々に冬筍を提供しています。人々は孝心が深い子供の精神に感動し、このたけのこが天からの贈り物であり、肺を潤して腎を補う効果があるとし、さらに体の余分な熱を取り除いて痰を解消し、気持ちを整えてくれると信じています。

「たけのこの木の芽和え」の五行との対応

京たけのこ(Taisuke / PIXTA)

京たけのこには五行のうち土・木・金・水の4つのエネルギーを含んでいます。土の下から出てくるものなので、土のエネルギーが豊富で脾、つまり、消化吸収を促してくれます。同時にたけのこは水分をたっぷり含んでいるため、腎をサポートし、「精」を作り出してくれます。また、たけのこは本来木の類に属しているので、肝に対応し、血を作り出してくれます。京たけのこの身は白く、白は金と肺に対応しており、水分とともに肺を潤してくれます。

しかし、たけのこには火のエネルギーが不足しています。

山椒の実(D&M.CLIPs / PIXTA)

 

一方、山椒は、性質は熱く、味は辛く、火のエネルギーを含んでいます。木の芽(山椒の若葉)の効能は種子と似ており、若芽には春の陽気が豊富で、湿気や生臭さを取り除き、食欲をそそります。

このように、たけのこに欠けていた火のエネルギーが補われます。5つのエネルギーが揃い、五行の要素が正常に機能することで、人体の陰陽が働き、内側から免疫力を高めてくれるでしょう。

 

「たけのこの木の芽和え」の作り方

郷土料理「たけのこの木の芽和え」(「うちの郷土料理」(農林水産省)
 

・材料(4人分)

 ゆでたけのこ 150g

 木の芽 50枚程

 ほうれん草の先 少々

【A】 白味噌 50g

【A】 砂糖 小さじ2

【A】 卵黄 半分

1、木の芽はすり鉢で形がなくなるまでする。

2、ほうれん草を色よくゆでて、先の柔らかいところを細かく刻み、1と一緒に形がなくなるまでする。

3、1と2の中にAを入れて、すりながらよく混ぜる。

4、たけのこをサイコロ状に切って、3の中で混ぜ合わせる。

レシピ提供元名 : 「京ごちそうさまお母さんの味」(京都府生活研究グループ連絡協議会)

出典:農林水産省「うちの郷土料理」(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/takenokonokinomeae_kyoto.html)

レシピムービーはこちらです。

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。