廃棄物のリサイクルは、人類が直面している大きな問題のひとつです。混紡を分解することは非常に困難であるため、衣料品などの繊維製品のリサイクルはさらに難しいです。最近、デンマークの大学が、混合繊維製品から繊維を分離して再利用する新技術を開発しました。
現代の繊維製品のほとんどは、ポリウレタン、ナイロン、コットン、ウールなどの伸縮性のある混紡繊維で、異なる繊維に再分離することは、ほぼ不可能です。2020年に全世界の繊維製品は1億900万トンに達しましたが、実際にリサイクルされるのは1パーセント未満でした。世界の繊維需要は、2030年までに1億4000万トンに増加すると予想されています。
現在、デンマークの家庭で捨てられている衣類のうち、有効にリサイクルされているのはわずか6パーセントです。リサイクルできない繊維製品のほとんどが焼却または埋設されます。それによって、多くの有毒ガスが発生し、環境汚染を引き起こしているのです。
オーフス大学学際ナノ科学センターはナイロンからポリウレタンを完全に除去する方法を開発しました。この研究は同校のウェブサイトに掲載されています。
現在、PUコーティングを施した素材のリサイクル方法は、加水分解、アンモニア分解、酸分解、糖分解、機械分解しかありません。しかし、機械分解の場合、弾性材料を細断(細かく断ち切ること)し、解きほぐすのにかなりの力を必要とするため、弾性繊維を含む繊維廃棄物の回収は非常に限られています。
オーフス大学学際ナノ科学センターのステファン・クリステンセン助教授が率いるチームは、複数の繊維の融着によく使用されているエチレンジアミンを効果的に分解し、繊維へのダメージを軽減するための化学剤として、刺激の少ない第三級アミルアルコール(TAA)と水酸化カリウム(KOH)を使いました。
研究チームはまず、組成不明のエラスチン250ミリグラム、TAA5ミリリットル、KOH1.9ミリグラムを混合し、225度の圧力釜に入れて回転(800rpm)しながら4.5時間蒸煮しました。溶媒でエチレンジアミンを十分に分解させた後、残渣を調べたところ、試験後の回収率は86重量%%(wt%)でした。
また、綿、レーヨン素材、ポリエステルの混紡繊維とPUコーティングしたスパンデックス(ポリウレタン弾性繊維)に、5ミリリットルのTAAと適量のKOHを加え、225度の高圧ボイラーに入れて、4.5時間蒸煮・回転しました。回収率は73wt%から98wt%でした。
これらの実験結果は、この分離方法がPUを含む皮革やPUコーティング布地の分離に有効であることを示しています。ナイロン系繊維の分離は非常に簡単であり、分離されたナイロンは新しい製品に再テクスチャー(繊維として再使用)することができます。
この方法は、品質が低い弾性繊維製品の分離にも使用できます。これにより、織物の分解と再利用の可能性が大幅に増加します。しかし、報告書によると、エネルギー消費の評価と大規模な織物分解の実現など、この新しい技術はさらに最適化が必要です。
クリステンセン助教授は同行の新聞社に、このように語りました。
「私たちが開発した方法は、弾性繊維からナイロン繊維を除去するものですが、エチレンジアミンを除去する際に一部の綿繊維が分解されてしまうため、綿繊維に対しては完全に除去することはできません。 しかし、将来的にはこの問題が解決されるかもしれないのです。この新しい方法によって、将来的にはより多くの繊維を分解し、リサイクルすることができるようになるでしょう」
弾性繊維内の異なる繊維は、ジアミンと呼ばれる小分子によって結合されています。オーフス大学のチームが見つけた新しい方法では、衣服を225度まで加熱し、特定のアルコールと適量の水酸化カリウムを加えることで、弾性繊維内の化学結合を切断します。このアプローチにより、繊維を効果的に分離し、再利用することが可能になります。
研究チームは、KOHを加えると、アルコールが繊維を分離する速度が速くなることに気づいています。具体的な原因はわかりませんが、KOHが化学結合をわずかに破壊し、アルコールが繊維を完全に破壊しやすくしている可能性があります。
研究チームは、ラボの設備が十分な大きさではなく、実験用に、規模を拡大する必要があるため、この技術はまだ工業的規模で、実施する準備ができていないと認めています。
クリステンセン氏は、「デンマークの化学産業は非常に小規模ですが、ドイツには世界最大級の工場があります。 将来的には、これらの工場が私たちの新しく開発した方法で、衣料品の弾性繊維をリサイクルできるようになるでしょう。 しかし、これがうまくいくためには、大手の化学会社が関与し、リサイクル素材に商業的価値があることを確認する必要があります」と指摘しました。
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