米国ノースウェスタン大学の研究チームが、空気の力でプラスチック廃棄物を分解できる新しい方法を開発しました。この新方法はシンプルでスピーディー、毒性もなく、環境にも優しいという特長があります。環境汚染問題の解決に大きく貢献することが期待されています。
同大学が今月発表したプレスリリースによると、新しいプラスチック分解方法では、まず安価な触媒を使用して、ポリエステル系プラスチックの中でも最も一般的なPET(ポリエチレンテレフタレート)の結合を分解します。
次に、プラスチックの破片を周囲の空気にさらし、空気中に含まれる微量の水分を利用することで、PETはテレフタル酸(TPA)というモノマー(プラスチックの重要な構成要素)に変換されます。これにより、モノマーを新しいPET製品や、より価値のある他の材料にリサイクルすることが可能になります。
食品包装や飲料ボトルに頻繁に使用されているPETは、世界で使用されるプラスチック全体の12%を占めています。PETは分解されにくいため、プラスチックによる環境汚染の主な原因の一つとなっています。使用後は最終的に埋め立てによって廃棄され、時間の経過とともに微細なマイクロプラスチックやナノプラスチックに分解され、廃水や水道に流れ込み、環境を汚染します。
PETをリサイクルする新しい方法を見つけることは、非常に重要な研究課題です。既存のプラスチック分解方法は、非常に高い温度や大量のエネルギーを必要としたり、有害な副産物を生成する溶媒を使用したりと、さまざまな課題があります。さらに、使用される触媒はプラチナやパラジウムなど高価で毒性のあるものが多く、有害な廃棄物も発生すると研究者は指摘しています。
一方、ノースウェスタン大学の研究チームが開発したプラスチック分解方法は、溶剤を使用せず、毒性のない安価な触媒を用いています。分解過程で唯一生成される副産物はアセトアルデヒドで、産業価値があり、除去も容易な化学物質です。
研究者たちは、この分解方法がスピーディーで効率的であると述べており、わずか4時間で94%のTPAが回収されました。また、触媒は耐久性が高く再利用可能で、繰り返し使用しても性能が劣化しないという利点があります。
研究チームは、プラスチックボトルや衣類、混合プラスチック廃棄物などの素材にもこの技術を試し、同様に高い効果が得られることを確認しました。有色プラスチックでさえも、シンプルで無色のTPAに分解できました。
研究の共同著者の一人であるノースウェスタン大学化学助教授ヨシ・クラティッシュ氏は、「アメリカは国民一人当たりのプラスチック汚染量が世界で最も多く、リサイクルされるプラスチックはわずか5%に過ぎません。我々は、より優れた技術が切実に求められています」と語りました。
また、研究の筆頭著者の一人で、元ノースウェスタン大学の博士研究員、現在はインドのSRM科学技術研究所の研究助教授であるナビーン・マリク氏は、「私たちの研究は、プラスチック廃棄物に対する持続可能で効率的な解決策を提供しました。プラスチック廃棄物は、世界で最も差し迫った環境問題の一つです」と語りました。
彼は「この技術は、プラスチック汚染を大幅に削減し、環境への影響を軽減する可能性を持っています。また、資源の使い捨てを防ぎ、再利用を促進し、経済面にも貢献できます。これは、よりクリーンで環境に優しい未来に向けた確かな一歩です。自然に沿った形で地球規模の課題に取り組む創造的な化学の力を示しています」と述べました。
今後、研究チームはこの技術を工業規模での応用に拡大することを目指しています。目標は、大量のプラスチック廃棄物の処理を可能にすることです。
研究内容は、科学誌『Green Chemistry(グリーン・ケミストリー)』に掲載されています。
(翻訳編集 正道勇)
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