高智晟著『神とともに戦う』(69)「中央政府の承認」とはどんな基準なのか①

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7月12日から陝西省政府、その下の楡林市政府、さらにその下の靖辺県政府は、違法かつ野蛮にも、中国内外で名高い人権派弁護士の朱久虎氏および石油採掘経営に関わる11人を拘束した。これを受けて、私と許志勇博士、滕彪博士、李和平弁護士は、一緒に陝西省北部にある楡林市靖辺県に赴いた。

到着した日の午後、我々4人はすぐに靖辺県公安局(訳注、日本では警察に当たる)の留置所に足を運んだ。陝北(陝西省北部)の当局がどれほど凶暴かは以前から耳にしていたが、噂と実際に見るのとではやはり大きな違いがあった。その噂だけでも戦慄が走るほどだが、それでも直接目にした時のショックには及ばない。

正式な身なりで訪れた我々であったが、警察や武装警察によって容赦なく、犬か鶏でも追っぱらうかのように蹴散らされた。しかも我々が拘置所から数百メートル離れても、悪事をした後の興奮に浸っている警官らはまだ満足していないようで、我々の背後まで駆け寄ってくると、声を張り上げて怒鳴った。

四肢の異常に発達した武装警察の要員たちは、中隊長の指示のもと、野蛮にも我々の行く手を阻み、暴言を吐いた。フェンス内の2階にいた数人は、のさばる中隊長のけしかけに勇気を得たのか、「捕まえろ、捕まえろ、一人たりとも逃すな。とっ捕まえて始末しちまえ」と大声を上げていた。

優秀な官僚らが出迎えてくれるものと思っていたが、我々が目にしたのは横暴極まりない兵士たちの真実の一幕であった。激しく照らす太陽のもと、我々は舌を武器にしてこれに反撃するしかなかった。声がかれるほど力を使い果たし、30分近くしてようやく脱出に成功した。

脱出した後、私は同行した3人に向かって、「背広に革靴の我々さえこのような目に遭う。この地の庶民にとって、このような官僚たちが長年存在する環境で生きることが、どれほど苦しく危険であるか、想像に難くないでしょう」と語り、ため息をついた。

7月13日の午前、我々は靖辺県公安局の艾和平副局長と、2時間近くにわたる交渉を行った。副局長が上司に報告をした後、つまり同日の午後には、楡林市の政法委員会(訳注、政法委員会とは公安、検察、情報などを主管する機関である)や市・県公安局の関係のトップと、3時間の対話を行った。この後、20日近くにも及ぶ交渉と対話の幕は、こうして開けたのだった。

その間、市や県の政府責任者の中でも理性的な思考の持ち主が一度は優勢を占めたことで、まずは朱久虎弁護士を釈放する意義についての認識がほぼ一致した。我々に対して明確に送られたシグナル、それは、朱久虎弁護士の釈放はすでに決定的で、釈放の時期だけ話し合えばよいということだった。

7月21日、私が楡林市公安局の主要な責任者と面会した際、「13点xun_ネ内に朱弁護士を釈放するので、まず北京に戻って知らせを待ってほしい」と言われた。

7月28日、楡林市公安局からは「明日来るように」との通知がきた。私が再度楡林市を訪れた29日、時はすでに約束した13日の期限に達していたものの、朱弁護士はまだ釈放されていなかった。保守的で無知な、そして非道徳的な力が再度、またいつものように勢いを盛り返したのだった。無実の国民の違法な拘束を続けること、これが彼らの最終選択だった。

20日間近く、私は市政府および県政府のさまざまな役職の職員と接触した。私と接触した官僚は誰も皆、民間の油井の接収は合法的行為であり、弁護士および被害者代表を捕らえることも合法だとの認識を持っていた。この認識に同意することが、(彼らにとっての)対話の前提だった。

そこで私は彼らに、「あなたたちは、権力が割り振って決めさえすれば、そのまま『合法』になるとでも考えているのか。そうでなければ、合法という言い方は、無知な人間の恥じ知らずな物言いにすぎない」と述べて、次の8つのことを伝えた。

 

1、民間の投資者は、あなたたちの手から合法的に油井経営の資格を獲得した。

2、政府は、自分が作成した文書で自分に権利を与えたり、強制的に民間企業の財産を没収したりする権利を持つわけではない。これは中央政府も同じである。財産の所有権の取得は、法律や約束に基づくべきである点は、現代法治の基本原則である。

また同時に、それを得る上でモラルが求められるのは、我々中華民族が数千年にもわたり守り続けてきた最低限の道徳なのだ。政府のやり方はすでに現代法治の基本原則に違反したばかりか、誰もが認める最低限のモラルさえ逸脱してしまった。

3、法律上の基本的な手続きを踏まず、ましてや法律による基本的判断すら仰がず、政府は公安、検察、裁判所、武装警察部隊とぐるになり、暴力を振るい、縛り上げて拘束するなどの野蛮な手段で、民間投資の成果を強奪した。このことそのものがモラル社会に対する犯罪である。ましてや「合法」など笑い話にすぎない。

4、省政府、市政府、県政府はいずれも、「油井の回収」というでたらめを対外的に吹聴した。しかし実際の操作の過程において、油井の価値以外にも、民間経営者が10数年にも及ぶ経営で築き上げた、インフラや設備を含む70~80億元相当の財産が、政府によって強奪されたのだ。一体どんな法律が、これほどでたらめかつ野蛮な権力を、政府に与えたのか。

5、政府が民間企業の財産を回収するのは、法律に基づく行為なのか、それとも闇社会の組織による暴力行為なのか。この2種類の行為には、本質的な違いが存在する。政府に忠告しておくが、政府とそれに相対する人との間に生まれた関係は法律的な関係にすぎず、それ以外の何物でもない。(この政府が、自分が非合法な政府だと公に認めれば話は別だが)法的行為に属し、法的手続きに基づいて処理すること、それは合法的政府の最も一般的な常識である。

政府に相対する人たちの大規模で、巨額な財産の与奪問題について、政府はなぜ、調査、送検、告知、公聴、再審議、裁決、評価、訴訟など各種の行政手続きの価値を全て無視することができるのか。あなたたちの「合法」という言い方は、笑い話にすぎない。

6、100億元余りに相当する資産に対し、政府の補償はわずかに数億元。これだけでも、「合法」という言い方がナンセンスだということを証明している。

7、数千人の投資家の10数年にわたる投資と経営の成果を、力ずくで政府は奪った。これに対し、公安、検察、司法はいずれも被害者の訴えを受理しなかった。こうして今では、陳情したり弁護士を要請したりするだけでも逮捕され、拘束されるまでに「発展」したのだ。

その上、被害者が頼んだ弁護士すら一緒に逮捕される始末である。このような凶悪極まりない行為は、あからさまに人としてのルールを踏み外す横暴であり、法治を目指す中国人を大っぴらに挑発するものであり、中央政府の提唱する「和諧社会(調和社会)」の構築を公然と破壊する行為でもある。「合法」など、一体どこからその言葉が出てきたのか。

8、あなたたちは巨額の資金を使って、文明の共通の敵である中央宣伝部(訳注、国内メディアを統括する中国共産党の内部機関)を買収し、中国国内のメディアが客観的な報道をするのを締め付けた。もはや巨大なわいろ買収団体になり果てた省・市・県の各級政府は、5度にわたって北京を訪れ、中央政府の各部門に裏工作をして、正義感を持って直言した郭海燕教授および北京在住の専門家や学者を公然と脅した。

さらに公然と、弁護士が拘留者に面会したいとする要求も拒絶した。これは現代人類の法治史上において、空前の悪事としか言いようがない。その合法性など、何をか況やである。

 (続く)

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