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魯迅先生はかつて、中国には価値あるものを残していくのは困難だと言ったことがある。確かに中国当局は、価値の分からないものは徹底的に破壊し尽くすが、一旦その価値が分かれば、無理やり自分の懐に入れてしまう。
中国国内外の芸術界から、フランスの芸術家たちが集まる「モンマルトルの丘」に匹敵すると称えられる広東省広州市の小谷囲芸術村が、広州市および広東省政府の蛮行により破壊された。ただ、まだ完全には破壊され尽くしてはいない。
芸術品のように美しく、個性豊かなデザインの素晴らしい逸品の別荘165棟の内、163棟がすでに跡形もなく壊された。「建物の“死体”に覆われた芸術村」に、別荘が2棟だけぽつんと残されているのがとりわけ目を引く。
なぜ、この2棟だけが一時的に「殺戮」を逃れたのか。この2棟の別荘の主人も、他と同様に黄色い肌と黒い目の持ち主である。彼らは一体どのようにして、すでに人間性を失ってしまった悪徳官僚に、破天荒にも、理知を持たせ、罪悪を止めさせ得たのであろうか。
実は、この2棟の別荘の主人は、どちらもアメリカ合衆国の国籍を有していた。かつて私の文章でも触れたが、政府の悪徳官僚が蛮行を止めたことから分かるように、彼らはすでに人間性を喪失したとはいえ、そこにはまだ不完全性がある。この2人の米国籍華人の財産を前に、彼らは蛮行を控えた。
これは、悪徳官僚の野蛮さや狂気は、相手次第であることを証明している。これらの悪徳官僚さえも、民意で政権が決められる国家では公民に力があり、権力は公民(公民が法律的義務を実行する場合)を保護し、また公民に奉仕する権力しかなく、公民を決して傷つけはしない点を良く分かっているに違いない。あの悪徳官僚たちは権力に対し、監督と抑圧、略奪にしか価値を見出さないが、選挙で選ばれた米国政府は、公民の権利保護の面では、わずかな気の緩みすら許されないと私はいつも思っている。
もしこの2棟(163棟ではなく)つまり米国国民が中国の法律に基づき購入した合法的な別荘を、我が同胞に対するように廃墟にしてしまったら、選挙で選ばれた米国政府は、これを大事と見なし、中国政府と交渉するに違いない(決してパフォーマンスではなく)。
10月7日の夜、外国籍の依頼人2人は私に会い、こう告げた。中国国民に対するあくどい数々の手段がどれも彼ら2人には使えなかった時、広州市民から「一角を撤去しつくした広州一の悪」 という悪名で呼ばれ、その扁額は「魔にして道理なり」とされる「広州大学都市」(訳注、広州市の中心部から南東へ約30キロの番禺区に、大学を移転・集中させて作った学園都市)における強制立ち退きの最大の「功労者」である楊という男が、アレクサンダー・彭喝(訳注、外国籍の依頼人の1人の名前)を探し当てて責めた。
「おまえは、なぜ政府にたてつくのか(当局の違法な立ち退き行為に反旗を掲げる行為は皆、政府にたてつくと彼らはいう)」。彭喝は逆に、楊に向かって「あれが誰の政府か、きちんとわきまえたまえ」と忠告した。
その10月7日は一日中、以下のようだったという。強制立ち退き部隊1000人のうちの1人、朱嘉権が「この数カ月の間、政府は刑事や税務局を動員して、君を徹底調査した。これからどうなるかは皆、君次第だ(何と恥知らずで悪辣なのか)」と吐き捨てた。
彭は、「占い師は、私の寿命はわずか30歳だと言ったが、結果私は余計に10年も生きた。もし平等に、人への最低限の尊重がある上で話し合いをするのなら、私も協力しよう。中国人に対するように無理な撤去をするのなら、私は自分の骨をへし折られても恐れない」と答えた。
楊はかつて、「君とこうやって会話をするのは、君を立てているのだ。私は、すぐにでも君の不動産を違法なものにできるぞ」と彭を脅した。楊が、まさにこの方向で画策しているかどうか、状況はいまだ不明だが、あの別荘2棟は確かにまだ存在している。
165棟の別荘のうち163棟が野蛮に破壊され、ただ別荘の主人が中国の納税者ではないという理由だけで2棟が残された。ゆがんだ社会制度の下、まともに存在している2棟の別荘。故人は「虎を養って患いとなる(敵を助けて後の災いになる)」と警告を残したが、中国には元々「苛政は虎よりも猛し(悪い政治は虎よりも恐ろしい)」との言い方もある。
世の道が正された現代では、とっくに虎を恐れる必要もなくなったが、広州の官僚の残忍さときたら、虎の百倍千倍も恐ろしい。広東省の納税者の納税力は、他の省を大きく上回る。それゆえに、この納税力によって、虎の百倍千倍も恐ろしい悪徳官僚を育む条件が提供されたのだった(広東省で明らかにされた違法な資金の額は中国一で、金を手に外国へ逃亡した汚職官僚の数と金額も、広東省が全国一、ないし全人類で一番である。
これら「一番」の栄誉は、広東省が、公金横領や違法行為および外国への逃亡に「最適の環境」であることを浮き彫りにした過ぎない)。その一方、広東省の納税者は、このような文明社会の人類の尊厳、そして人間性を踏みにじった汚職官僚たちの勢いの前に、屈辱を甘んじて受け入れざるを得ない。小谷囲芸術村における破壊163棟、残存2棟、この事件は一体何を意味するのか。
それに先立つ9月初めのある日、広州市の人民政府は、「広州大学都市」の竣工記念式典を盛大に開催した。この種の式典は人類史上最も不名誉で、最も恥知らずであり、最も不道徳な祝賀会だと断言する者すらいた。芸術村の村民、数百名の号泣およびすすり泣きが響く中、太鼓の音がとどろいた。
人面獣心の連中、すなわち強制立ち退きの立役者たちが胸を張って、祝賀会の主席台へと歩を進めていく。これら立役者たちがこの主席台に至るまでの道のりを、世の善良な人々に理解してもらうため、彼らの足跡を再度振り返らなければならない。
(続く)
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