アングル:米大統領選、ケネディ氏無所属出馬ならバイデン・トランプ氏痛手
Jeff Mason Heather Timmons
[ワシントン 3日 ロイター] – 2024年米大統領選の民主党候補指名争いに名乗りを上げているロバート・ケネディ・ジュニア氏が無所属に転じて大統領選に挑戦する見通しとなった。政治アナリストは、激戦州で民主党バイデン氏や共和党トランプ氏から票を奪い選挙戦の構図が複雑化する可能性を指摘する。
環境弁護士、反ワクチン活動家として知られるケネディ氏は、故ロバート・ケネディ元米司法長官の息子で、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領のおいに当たり、知名度が高い。9日にフィラデルフィアで無所属での出馬を発表するとみられる。
民主党と共和党の二大政党制は、1世紀以上にわたって大統領選を支配してきたが、過去には第3党の候補が結果を左右したこともある。
ペンシルベニア、ミシガン、ジョージア、アリゾナなど一部の激戦州においては、バイデン氏もしくはトランプ氏が勝利するかどうかは数千人の有権者にかかってくる可能性がある。アリゾナ州などでは、どちらの党にも登録していない無党派層が決め手になりそうだ。
バイデン氏やトランプ氏への支持が広がりを欠く中、ケネディ氏の富裕な後援者と知名度は両陣営から票を奪うのに役立つかもしれない。
左派系の政治戦略会社サード・ウェイの共同設立者マット・ベネット氏は「トランプ氏の支持率は50%に届いていないが安定している。トランプ氏との一騎打ちでバイデン氏を仕方なく選ぶような有権者は、ケネディ氏についてよく知らなくても同氏に投票するかもしれない」と述べた。
ケネディ氏の政治的立場には、バイデン氏の中道左派の支持層よりも、反ワクチンや陰謀論を受け入れるトランプ氏支持層と一致するものもある。ファイブサーティーエイトがまとめた世論調査によると、ケネディ氏は民主党支持者よりも共和党支持者へのアピールが強いという。
共和党のストラテジストたちは、ケネディ氏の参戦にはメリットとデメリットがあると話す。フォード・オコネル氏は「トランプ氏から票を吸い上げる可能性は確かにあるが、バイデン氏の方がより大きな痛手を被るだろう」と指摘し、トランプ氏の支持者の方がバイデン氏支持者よりも熱狂的であることを理由に挙げた。
<反ワクチン活動家としての横顔>
ケネディ氏が設立した非営利団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」は、COVID─19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンを接種した子どもの死亡率が高いといった情報を流布したとされる。
また、ケネディ氏を含む反ワクチン活動家たちが、19年に米領サモアでワクチンの安全性に関する誤った情報を広めた結果、数十人の幼児がはしかで死亡したという。
ケネディ氏は7月の議会証言で、ワクチンに反対したことはないし、国民にワクチンを避けるように言ったこともないなどと主張した。
<高い好感度、年齢も武器に>
ロイター/イプソスの9月の世論調査によると、ケネディ氏の好感度はトランプ氏やバイデン氏よりも高い。回答者の51%がケネディ氏に好意的な見方をしているのに対し、バイデン氏は45%、トランプ氏は40%だった。ただ、民主党の指名争いにおいては、バイデン氏がケネディ氏を50ポイントほどリードしている。
69歳のケネディ氏は、80歳のバイデン氏や77歳のトランプ氏よりも若い候補者を望む有権者にとって魅力的に映るかもしれない。ロイター/イプソスが昨年11月に実施した世論調査では、約86%が大統領の最高年齢を75歳に制限すべきと回答している。
ケネディ氏の選挙キャンペーンには、既に複数の政治活動委員会から数百万ドルの資金が集まっており、保守派の人気ポッドキャスターやハリウッドスターからも支持を得ている。ケネディ氏の妻は米女優のシェリル・ハインズさんだ。
<第3党候補は他にも>
24年大統領選には、進歩派(プログレッシブ)的な活動家として知られる哲学者のコーネル・ウェスト氏も、第3党から立候補すると表明している。ウェスト氏の選挙マネージャーであるピーター・ダオウ氏は、X(旧ツイッター)への投稿でケネディ氏の参戦を歓迎した。
ウェストバージニア州選出の民主党上院議員ジョー・マンチン氏も、第3党候補として大統領選に出馬する可能性をちらつかせている。2000年の大統領選で民主党の副大統領候補だったジョー・リーバーマン元上院議員は、24年大統領選の候補を擁立する可能性のある第3政党グループ「ノーレーベルズ」の創設会長を務める。