2023年は癸卯(みずのとう)の年で、五行の「火」のエネルギーが不足します。「金」「水」が多すぎると「火」が抑制されるため、雨が多く降り湿度が高く、まるで梅雨に入ったかのように感じられる年とされています。脾臓と胃の機能に影響が出やすく、胃腸に変調をきたし、下痢などが例年に比べ多発します。
ここでは、脾臓を元気にして湿気を取り除き、熱を取り除いて解毒し、正気を失うことなく熱を冷まし、ニキビを取り除くことができる古代の食事処方を紹介したいと思います。
「三豆飲」の由来
「三豆飲」は、2000年以上前に中国の先秦の医師、扁鵲(へんじゃく)が考案した有名な処方で、主に緑豆、黒豆、小豆の3種類の豆で構成されていると言われています。痘疹(ニキビ)や妊婦の浮腫の治療に昔から使われていて、この食事処方は、余分な水分や湿気を排出するだけでなく、熱を取り除き、解毒する効果も高く、誰でも摂取することができます。
実はこのレシピは、「黄帝内径 湯液醪醴論篇」(とうえきろうれいろん)の「五穀湯液」に基づいており、病気を治療する効果があることが示されています。
「黄帝内経」には、古代の医師が良質の穀物を煮てスープを作り、人々を治療したと書かれており、穀物の中でも米は最も効果が高く、天地の気が最も揃っているとされています。このことは、数千年前の人々の薬に対する考え方が現代と異なっていたことを示しています。
穀物は薬として一般的に使われていましたが、米は入手しやすく、最も素朴で土の性質が強いともいわれており、胃を養い、五臓を養う性質を持っています。「黄帝内経」が示すように、古代では、穀物は食べ物であると同時に、薬としてもよく使われていました。
ではなぜ五穀という言葉があるのでしょうか? それは五行医学の具体化・応用です。煎じ薬を作るには「米、麦、豆、モロコシ、キビ」等、いずれの穀物も使用できますが、異なる色の穀物は、異なる内臓に入る必要があるため、扁鵲時代の医師は、5つの内臓を5つの色に応じて調和させることがよくありました。
緑は肝臓に入り、緑豆は肝臓の火を消すことができ、黒は腎臓に入ります。黒豆は腎臓に栄養を与え、利尿を促し、陰に栄養を与え、火を減らす効果があります。
また、多飲、めまい、目の充血、体力の低下、多汗症にも効果があるとされています。 陰虚の内熱によって引き起こされる腰痛、浮腫、食中毒、塞栓症、白髪にもこの食事療法は用いられます。したがって、夜更かしが多く、目の乾燥やかゆみがある現代人や、腎虚による早期の白髪や脱毛症などにも適しています。
そして、赤は心臓に入りますので、小豆は血液を養い、心臓に栄養を与え、同時に湿気を取り除く強い利尿効果があるとされています。
したがって、各臓器の必要に応じて、穀物の色を使用して処方を知ることができます。穀物の中で豆は最も色がわかりやすいので、扁鵲は小豆、黒豆、緑豆を使用して3つを調和させ、心、腎、肝を調整し、処方を構成しました。「三豆飲」は豆の色がはっきりしており、非常に直感的で、一目で薬理が理解できます。
脾胃が冷えやすい人は緑豆に注意が必要です
ほとんどの豆には、湿気を取り除き、利尿、解毒の機能がありますが、性質が異なるため、ここでは特に緑豆に注意する必要があります。黒豆や小豆は、寒性でもなく熱性でもなく、平性です。しかし、緑豆は「冷性」であり、肝臓の「火」を消すだけでなく、心、胃、肺の「火」も消すとされています。ですから夏の暑さを和らげ、解毒する薬としても使用されます。
喉の渇き、痛み、ニキビなどの症状の治療に、漢方薬としてもよく使われますが、脾臓や胃が虚弱な人は、過度な摂取は避けるべきです。また、単独で摂取すると、腹部の冷えによる腹痛や下痢を引き起こす可能性があるので、脾臓や胃の湿気を排出する能力がさらに低下します。
脾臓や胃が冷えやすい人や、下痢をよくする人は緑豆を食べるのは控えたほうがいいでしょう。身体が冷えている状態で、さらに身体の熱を冷ます緑豆を食べると体に悪影響があるかもしれません。お腹を下している場合も同様に、緑豆を食べるのは控えましょう。
一般の人は、黒豆、小豆、緑豆の3種類を同量100~150グラムで柔らかくなるまで煮て、最後に白砂糖や黒砂糖を加えて味を調えると、とても食欲をそそります。 もちろん、一握りの米を加えて炊くと滋養があり、脾臓や胃が弱っていても、冷えていても、米は精気を養ない、気を補充し、体力をすぐに回復させることができる薬となります。
ニキビに効く
中国語の「豆」と「痘瘡」は音も形も似ています。古来より漢字や薬は神が伝えたものと信じられており、ニキビに似た病気全般に「豆」という言葉が含まれていることから、豆がニキビに効くということがすで示されています。したがって、「三豆飲」は、肌に栄養を与えることができ、ニキビの治療にも使用できます。
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