12月16日、岸田文雄首相は反撃能力の保有方針を明記した新たな国家安全保障戦略などを決定したことを受けて会見し、「日本の安全保障政策を大きく転換するもの」と語った。防衛費の増額を裏付ける増税の開始時期は、来年決定すると表明した。代表撮影(2022年 ロイター》

安保政策を大きく転換、増税開始時期は来年決定=岸田首相

[東京 16日 ロイター] – 岸田文雄首相は16日、反撃能力の保有方針を明記した新たな国家安全保障戦略などを決定したことを受けて会見し、「日本の安全保障政策を大きく転換するもの」との認識を示した。防衛費の増額を裏付ける増税の開始時期は、来年決定すると表明した。

岸田首相は防衛力増強を決めた理由について「わが国周辺で急激な軍備増強や力による現状変更の試みが顕著になっている」と説明。自衛隊の能力は現状十分ではないとした上で、敵の基地を攻撃する反撃能力の保有、宇宙やサイバーなど新たな領域の対応強化、南西方面の防衛力増強を進めるとした。

岸田首相は「歴史の転換点で国民を守り抜く首相としての使命を果たす」と語った。同時に「非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは今後とも不変だ」とし、国民や関係国にしっかり説明し、理解してもらう努力を続けていくと述べた。

<防衛費の財源、「自問自答を重ねた」>

政府はこの日、今後5年間の防衛費を現行計画比1.6倍の約43兆円とすることを決めた。岸田首相は、歳出改革や剰余金で足りない分は増税で賄う方針を改めて強調した。防衛力の抜本強化は「端的に言えば戦闘機、ミサイル買うこと」とし、「借金で賄うのが本当に良いのか自問自答を重ねた。やはり安定的な財源を確保すべきと考えた」と述べた。

「将来、国民に負担をいただくのが明らかであるのにもかかわらず、それを今年示さないのは説明責任を果たしたことにならない」とした上で、「2027年度に向けて(増税を)複数に分けて段階的に実施する」と語った。「開始時期は来年決定する」と述べた。

防衛費の安定財源の一つとして法人税を用いる方針だが、経済界の一部から賃上げや設備投資に向けた企業マインドを冷やすのではないかとの懸念が出ている。これに対し、岸田首相は「防衛力強化は円滑な経済活動に直接資する課題でもあるということをしっかりご理解いただき、余力のある方々にはできるだけご協力をいただきたい」と語った。

増税方針の決定に対し、与党内外で唐突と批判があることについては、「決定プロセスに問題があったとは思わない」と反論。「防衛3文書改定については昨年末から議論している」と強調した。もっとも、国民から様々な意見や指摘があることは政府としても引き続きしっかり受け止めなければならないとし、引き続き丁寧な説明を続けていきたい、とした。

<中国の「戦略的な挑戦」、多岐にわたる>

新たな国家安全保障戦略では、中国の対外的な姿勢や軍事動向について「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けた。

岸田首相は「戦略的な挑戦」という記述にしたことについて、日本の平和と安全、国際社会の平和と安定の確保だけではなく、国際秩序を強化する上での挑戦が多岐にわたる分野において行われているからだと説明した。

同時に、日中両国が建設的で安定的な関係を構築していくことは国際社会の平和と安定にとっても不可欠だということ、経済や人的交流の分野で双方の利益となる形で協力は可能だということは明記しているとも語った。

(杉山健太郎、竹本能文)

*内容を追加しました。

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