スポーツドリンクは本当に安全で効果的か? (1)

アメリカン・カレッジ・オブ・スポーツ・メディシンが示した分補給のガイドラインに、商業的なプロモーションが影響を及ぼしている可能性があります。
 

この2世紀で最も偉大な医学的奇跡は、塩糖水?

過去2世紀で最も偉大な医学的奇跡は何かと問われたら、あなたはどう答えるでしょうか。英国医学雑誌に15の業績が掲載されていますが、いったいどれが優勝するのでしょうか?麻酔でしょうか。寝ている間に手術ができるようになったのですから。それとも抗生物質でしょうか?これも競争力のある選択肢の一つです。しかし、15個の中で功績を勝ち取ったのは、砂糖と塩を加えた水という医学的にも奇跡的なものだと知ったら、皆さんは驚くかもしれません。

砂糖も塩も小腸に吸収されるという発見は、『ランセット』誌で「今世紀で最も重要な医学的進歩であろう。なぜなら発展途上国の乳幼児死亡の主な原因である重症下痢症の経口補水療法を可能にしたからだ」と評されました。

水に砂糖と塩を適切な割合で加えるだけで、コレラなどの病気によって電解質のバランスが崩れ、ひどい下痢になった子どもたちの命を救うことができるのです。

病院では点滴で簡単に水分補給ができますが、世界では治療ができない人が多いのです。安価でシンプルな経口補水により、毎年何百万人もの子どもたちの命が救われており、ユニセフの報告書「新たな発見:肺炎と下痢による子供の死を終わらせる」の発表にもつながりました。経口補水療法は値段も数円です。商売人がシュガーソルトを1本2ドルという高値で売る方法を考えないかぎりは……。
 

スポーツドリンクにまつわる神話

スポーツドリンクについて一言。今お話ししているように、スポーツドリンクは安全で効果的なのでしょうか?スポーツドリンクはコカコーラやペプシコーラが牽引する数十億ドル規模の産業ですが、今や製薬会社までもがその対策に乗り出しています。『医師とスポーツ医学』誌に掲載された研究で、研究者はインターネット上で水分補給について調査しました。準備はいいですか?下記は正誤問題です。

運動中の水分消費は、喉が渇いているかどうかで判断する。
・運動中は通常、電解質の摂取は必要ない。
・運動による筋肉のけいれんは、水分の損失が原因ではない。
・運動による筋肉のけいれんは、電解質の損失とは関係がない。

上記はいずれも正解です。もし、あなたがどれか「×」を選んだのなら、あなたは間違った認識をしていることになります。しかしなんと、問題サイト上で、93%の人が1問目を、90%が2問目を、98%が3問目を、そしてすべての人が最終問を間違えていたのです。

さらに悪いことに、一般の人々が信頼できると見なしているWebサイト――例えば、医療機関や専門機関のWebサイトなどは――水分補給と脱水症に関する情報の正確さの点で他のWebサイトよりも必ずしも優れているとは言えません。なので、認識が間違っていても落ち込まないでください。だから、「アスリートが運動中の正しい水分補給の仕方を誤解してしまう」のはごく普通のことです。

(翻訳:香原咲)