末期がんの青年が貯金を寄付「つなぎたい命のバトン」
英国でのことです。なお、この主人公の青年は、2022年2月10日時点でまだ闘病中です。
末期がんで余命わずか数カ月と宣告された青年が、自身が貯めた1000ポンド(約15万6400円)を、一度も会ったことのない、がんと闘っている6歳の男の子のために寄付しました。
19歳のリース・ラングフォードさんは、2020年10月に骨肉腫の一種である骨がんと診断されました。この骨がんは骨細胞から始まり、徐々に体の他の部分にまで広がります。
ある日、リースさんはネット上で、6歳の少年が小児がんの一種である神経芽腫という珍しい難病に罹っていることを知りました。少年はジェイコブ・ジョーンズ君といい、リースさんと同じ町に住んでいたのです。
「息子は私を呼んで、パソコンに映るジェイコブ君を見せてくれました」と、リースさんの母親であるキャサリンさんは言います。自分の死が近い息子が、他人のことを考えていたことを知って、キャサリンさんは言葉を失いました。
「息子は、自分のことよりも、この6歳の男の子を心配していたのです。息子は今、死に直面していて、私たちは悲しくてたまりません。しかし同時に、私たちは息子を誇りに思っています」
そう話すキャサリンさんは、そこで愛する息子が示したある「意思」について、続けて語ります。
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「息子はジェイコブ君の病状を知ると、まだ会ったこともない彼のために、その治療費として自分の1000ポンドの貯金を寄付したい、と言うのです」
病気になる前、リースさんはハイレベルのスポーツ選手でした。16歳の時、彼はイギリスで最も若いクラヴ・マガ(格闘技の一種)の黒帯選手の一人になったのです。
リースさんが初めて体の異常を感じたのは、ある短距離走の試合でした。
コースを疾走中、彼はなぜか体のバランスを崩して転倒したのです。キャサリンさんと夫のポールさんは、彼が足のつけ根をケガしたと思いましたが、それが重大な病気の前兆であるとは全く考えませんでした。
その8ヶ月後、歩行が困難になったリースさんが病院で聞かされた検査結果は、「右臀部に18センチの腫瘍が発見された」という衝撃的なものでした。
医師はリースさんの両親に、「息子さんの救命率は50%でしょう」と告げました。
10週間にわたる化学療法の後、大手術をすることになり、リースさんの右膝関節から右臀部までの全ての骨が摘出されました。両親は、愛する息子が障害者になることを覚悟しましたが、それでもこの手術が彼の命を救うことを信じて、神に祈り続けました。
もともとラングフォード家は、宗教への信仰心をあまりもたない一家でした。苦しい闘病を続けるリースさんを慰めてくれたのは、ホスピスのロイ・ワトソン牧師の訪問でした。
父親のポールさんは、「はじめ息子は、カウンセリングには何の意味もないと思っていました。ところが、ワトソン牧師が我が家に来てくれてから、彼は信仰を見つけたようです」と言います。
ワトソン牧師は、リースさんのベッドのそばで、癒しと死後に関する『聖書』のくだりを読みます。リースさんは、それを夢中になって聞くそうです。
さらにポールさんは、「息子は、自分が病の苦しみを体験しながらも、依然として他人を心配し、ジェイコブ君を助けようとしています。私たちは、そんな息子を誇りに思っています」と付け加えました。
寄付を受けたジェイコブ君の父親であるアルヴァンさんは、こう言います。
「リースさんは、遠からずこの世を去る若者です。しかし彼は、ジェイコブの話を知ってお金を寄付してくれました。自分が助からなくても、私の息子を助けたいと言っています。なんて心の優しい人でしょうか。私たちは、彼と、彼のご家族のために祈ります」
(翻訳編集・鳥飼聡)