(まっちぃ / PIXTA)

中国伝統文化と日本(七) 芭蕉と漢詩

「弥生も末の七日、あけぼのの空朧朧として、月は有明にて光をさまれるものから、富士の峰幽かに見えて、上野谷中の花の梢、またいつかはと心細し。むつまじき限りは宵よりつどひて、舟に乗りて送る。千住といふ所にて船を上がれば、前途三千里の思ひ胸にふさがりて、幻の巷(ちまた)に離別の涙をそそぐ」

元禄2年(1689)旧暦3月27日の明け方。松尾芭蕉『おくの細道』の旅立ちの場面である。

芭蕉と門人の曾良(そら)はこの日、江戸深川の芭蕉庵を出立する。

ただし、この時点では、まだ前夜から集っていた親しい友人らも一緒にいて、この先の千住までは見送りのため同じ船に乗って行く。

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