塩分の多い食物は、容易に胃の炎症を招きます。それが胃がんへの誘因となることもあります。(Shutterstock)

胃がんの第一の元凶は何か?「炎症を招く食物」を多く食べないで

胃がんは、食事のなかから発生する」という言い方を、聞いたことがありませんか。

実際、塩分の多い食べ物は胃の炎症を起こしやすく、胃がんの原因にもなります。

「塩分の多い食事」は胃に炎症を起こす

胃がんは、胃の慢性炎症と関連しています。

奇林三医クリニックの院長・張適恒氏は、「慢性炎症は正常な細胞を絶えず破壊し、体に新しい細胞を成長させます。ところが、細胞が死んで新しい細胞ができる過程が加速すると、そこに間違いが起きる確率が高くなるのです。それが、がん細胞ができて腫瘍化するということです」と説明します。

慢性的な胃の炎症を引き起こすものとして、最終的には以下の2つの危険因子が胃がんの原因となります。

一つは非食物因子で、ヘリコバクター・ピロリ菌と喫煙です。

もう一つは食物因子で、塩分の多い食品およびナトリウムを含む加工食品です。

ヘリコバクター・ピロリ菌による感染は慢性胃炎を引き起こし、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃食道逆流症、さらには胃がんを引き起こします。喫煙は、言うまでもなく、がん全般の危険因子です。

塩辛い食品を好んでよく食べる人は、胃がんのリスクが高く、注意が必要です。

高濃度の塩分は胃の粘膜を傷つけ、慢性的な胃の炎症を引き起こします。漬物キムチ、塩辛、ソーセージインスタントラーメン、激辛鍋、ポテトチップス、燻製などには、「炎症性食品」といわれるほど多量の塩が入っています。

 

発酵食品として長い歴史をもつ韓国キムチは、体に良い乳酸菌やビタミンが豊富ですが、塩分の多い食品であることにも留意しましょう。(Shutterstock)

胃がんの予防は「食べるナトリウムを制限する」

食事からのカリウム摂取は、体内の余分なナトリウムを排出するのに役立ちます。

しかし、これは血圧をコントロールするだけで、胃がんの予防には役立ちません。

張適恒氏によると、例えばファストフード店のフライドポテトなどは、人が次々と食べ続けるので、「塩辛いものを食べることが病みつきになる」と言います。

また、ナトリウム成分が多いだけでなく、食欲をそそるような添加物を加えて、「もっと食べたくなるような料理」もファストフード店にはあります。

さらに、さほど塩辛くなくてもナトリウムの含有量が低くない加工食品があります。例えばケチャップやパンなどは、特に気をつけなければなりません。

パンを作る過程で重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加する場合がありますが、「ナトリウムが含まれていれば、胃粘膜を破壊する可能性があります」と張適恒氏は注意を促します。

「高塩分の食物」と「ピロリ菌」の相乗効果

塩辛いものが好きな人が、さらにヘリコバクター・ピロリ菌に感染すれば「相乗効果」で胃がんになりやすくなります。

米国のヴァンダービルト大学では、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染したマウスを2つのグループに分け、1つは普通食、もう1つは高塩食を与える実験を行いました。

その結果、高食塩食群のマウスはいずれも胃がんに罹患していましたが、普通食群のマウスの罹患率は58%に過ぎなかったのです。

本研究は2013年に、米国微生物学会発行の医学誌『Infection and Immunity(感染と免疫)』 に掲載されました。

研究によると、胃がん化の進展には、ピロリ菌が作り出した物質であるCagAという特殊なタンパク質が必要と考えられ、高塩分の環境でヘリコバクター・ピロリ菌を培養するとCagAの産生が促進されると言います。

塩辛いものを好む人がピロリ菌に感染すると、胃がんリスクが高まります。(Shutterstock)

張適恒氏は、「胃がんは50代から70代の中高年によく発生しますが、それは長年の食習慣によって、かなり胃を傷つける食物にさらされてきたため、萎縮性胃炎を招くことがあるからです」と言います。

萎縮性胃炎とは、慢性胃炎が進行して、すでに胃の粘膜が薄くなっている状態です。保護力も低下しているため、胃粘膜がヘリコバクター・ピロリ菌に侵されやすくなり、胃がんが発生しやすいのです。

「病は口から入る」は、こうして避ける

まずは「良い食習慣を身につける」ことと「濃い味の食品を多く食べない」ことを心がけましょう。

「病は口から入る」を避けることが、まさに胃がんの予防法です。同時に、胃を保護する食品を選んで食べることも有効な方法と言えます。

張適恒氏によると、胃を保護する食品には2種類あり、一つは「ピロリ菌を抑制する食品」。もう一つは「抗炎症の食品」です。

ヘリコバクター・ピロリ菌を抑制する食物として、アブラナ科の野菜が挙げられます。

アブラナ科の野菜にはピロリ菌を抑制するフィチンが含まれているからです。一般的なアブラナ科の野菜としては、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ケール、白菜などがあります。

抗炎症の食品としては、「濃い色の野菜」があります。

これらは抗酸化成分が豊富で、慢性的な胃の炎症を改善するのに役立ちます。例えば、濃い緑色の野菜であるホウレンソウ、オクラ、ナス、ブラックベリー、ウコン、長芋などです。

オクラはビタミンAとβカロチンが豊富で、胃粘膜を保護し、胃潰瘍の予防に役立ちます。ウコンは抗炎症、抗酸化、抗腫瘍などの効果があり、胃がんをはじめ様々ながんの予防に有効です。

長芋はフェノール類物質、フラボノイド類化合物、ポリフェノール、サポニンなどのファイトケミカルを大量に含みます。また、長芋の粘り成分は胃粘膜を保護することができます。

ウコンは抗炎症、抗酸化、抗腫瘍などの効能があり、胃がんの予防に役立ちます。(Shutterstock)

最後に、「頻繁に外食する方々」のために、外食で塩分摂取を減らす実行可能な方法を2つ、ご紹介します。

1、お弁当やお皿の片方を高くして、塩分を含んだ汁を低いほうに流します。

2、水やお湯を入れた小鉢を用意し、箸で取ったおかずを、食べる前に軽く洗って塩分を少しでも落とします。

あなたの胃と命を守るために、やってみてください。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)

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