古来より、洋の東西を問わず愛飲されてきたお茶は、体内の解毒や抗炎症、消化促進、肥満解消にまで効能をもつ、実に健康にかなった飲み物です。
薬用として利用された初期のお茶
歴史的に、古人が一番最初に喫したお茶は緑茶でした。
喫茶の「喫」には歯でかむ意味もありますので、あるいは新鮮な茶葉を噛むことからお茶の歴史は始まったのかもしれません。いずれにしても、日常の飲み物というより、薬用のための植物でした。
緑茶は発酵しないお茶であるため、茶ポリフェノールなどの健康物質が多く含まれています。現代の研究によると、茶ポリフェノールの中のカテキンは抗酸化力が強く、心臓血管を保護して、体脂肪率を低下させます。さらにカテキンは解毒酵素を起動することができ、慢性炎症を緩和し、がん予防にも役立つとされています。
茶葉はまた、肝機能の改善と利尿作用があるため、有毒物質の排出を促して人体への損害を回避することに役立つのです。
中国の神話時代である、三皇五帝のころ。神農氏は、有益な植物であるか毒草であるかを確かめるため、自身でそれを噛んで試し、もしも毒草であったときはお茶で解毒したと言います。
数千年の飲茶の歴史の中で、お茶は解毒のほか、さまざまな病気の治療にも使われています。
漢方医学の古籍によると、茶は「頭目の清利、解毒、下痢止め」の効果があると言います。すなわち茶は、頭や目をはっきりさせ、元気を回復し、利尿作用と渋味によって小腸大腸の解熱や解毒に役立つというのです。
『本草綱目』には、赤痢の治療に茶と生姜を処方することが記されています。
お茶は、口腔を清潔にする効果もあるので、虫歯の予防にもなります。北宋を代表する詩人で、中国医学にも造詣の深かった蘇軾(そしょく)は、食事の後に、濃茶を淹れて口をゆすぐことを励行していました。これは現代人が認知している茶の抗菌作用に合致する養生法と言えます。古代中国では、傷口を濃茶で洗うこともしました。
中国茶を代表する6種の茶葉
異なる製茶技術によって、6種類の代表的な茶が開発されました。
緑茶、紅茶、ウーロン茶、プーアル茶、黄茶、白茶です。発酵の程度により、以下の区分があります。
茶葉の発酵の程度は、緑茶が発酵なし、白茶が5~10%発酵、黄茶が15~20%、ウーロン茶が20~30%、プーアル茶が80%以上の発酵、紅茶が95~100%発酵です。
緑茶と白茶は、加工が少ないため多くの栄養分を残しますが、お茶のなかでは最も「寒性」の茶であるため、空腹時に飲むと胃にダメージを与えます。多く飲み過ぎても良くないので、緑茶と白茶は日常の保養用のお茶には適しません。
ただし七年間置いた後の白茶は、温和な性質の「老茶」に変わりますので、体の弱い人にも適します。緑茶やウーロン茶も、長年保存しておくと老茶になります。
黄茶は長い茶葉の加工過程を経た軽い発酵茶で、比較的「寒性」のお茶です。ウーロン茶は半発酵茶で、鉄のように青褐色で、別名青茶とも呼ばれます。緑茶の香りと紅茶のまろやかさを兼ねています。
プーアル茶と紅茶もマイルドなお茶です。プーアル茶は唯一のプロバイオティクスを含むお茶で、胃腸の消化を助け、免疫システムを守ります。紅茶は完全に発酵した後、茶ポリフェノールは90%以上減少しますが、お茶の渋みも大幅に低下しています。
さて、こうした茶葉それぞれの特性を生かして、日常よく飲むお茶の健康効果を最大限に引き出していきましょう。
それぞれの特性を知って、楽しみましょう
元気を回復して、頭をリフレッシュするには、緑茶やウーロン茶がいいでしょう。
体内の熱を冷ます、あるいは抗炎症のためには、多くの抗酸化成分が含まれている白茶や緑茶が適しています。
日常の養生には、体にマイルドな老茶(緑茶や白茶などの茶葉を数年保存して寝かせた茶)やプーアル茶が向いています。これらのお茶は、体に優しいので多く飲むことができますが、他の種類のお茶は適量を飲むに止めてください。
消化不良を改善するには、プーアル茶がいいでしょう。この茶の気が腸のなかに落ちると、食べ過ぎ、げっぷ、お腹が張るなどの症状が改善されます。同じく、ダイエット中の方にも、プーアル茶がおすすめです。冷たい緑茶は、胃痛を起こすことがありますので、ゆっくり少しずつ飲むようにしてください。
体を温めたい時は、熱い紅茶に生姜片を入れたジンジャーティーが最適です。
冬に向かうこれからの季節。それぞれの茶葉の特性を知って、お茶をもっと健康的に、楽しく飲みましょう。
(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)
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